長野県上田市の別所温泉で、2025年に惜しまれつつ閉店した人気食堂が復活しました。移住した夫婦が名物「馬肉うどん」の味も引き継ぎ、営業をスタートさせました。

■名物「馬肉うどん」が復活

客:
「肉うどん二つ」
「馬肉うどんとかつ丼」

大勢の客でにぎわう店内。そのお目当ては、名物の「馬肉うどん」です。

客:
「最高においしい、肉もやわらかくて」

この店は5月1日プレオープンした上田市別所温泉の「日野出食堂」。

2025年、惜しまれつつ一度閉店しましたが、上田市に移住してきた松尾さん夫婦が引き継ぎ、食堂を再生させました。

松尾健太さん:
「地元の皆さんに愛されるようなお店をつくっていきたい」

■高齢のため、94年の歴史に幕

2026年3月。松尾健太さん、沙知さんの家族が改装する前の食堂を訪れました。

松尾健太さん:
「お客さんの入るところは基本的にはこのままの状態で、もっときれいに。前の日野出と新しい日野出っていうところを表現していきたい」

日野出食堂は1933年に開業。

「馬肉うどん」をはじめとした信州の味は地元の人に愛され、県外からも観光客が訪れる人気店でした。

しかし、店主が高齢となり、2025年8月、惜しまれつつ94年の歴史に幕をおろしました。

■「ここしかない」移住を決意

松尾健太さん:
「地元の人に愛されてきたっていう歴史って、一から始めるとつくれないものなので、それを初めから持たせてもらうのはすごく感謝すべきところ。そこをしっかり守れば、同じように愛されるお店を作っていくことができると思うので、不安とかはないです」

ご主人の健太さんは板前であり、柔道整復師の資格も持っています。

妻の沙知さんはピラティストレーナーで、夫婦は3人の子供と一緒に海外で暮らしていました。

しかし、最近の不安定な世界情勢もあり、家族が安心して暮らせる場所を探して帰国を決意。

移住先を探す中で、出会ったのが「日野出食堂」でした。

食堂の閉店を惜しんだ地元の旅館経営者らが店舗を買い取り、インターネットで経営者を募集しているのを夫婦が見つけました。

松尾健太さん:
「この募集を見つけて今までのやってきたことと、この別所という土地がずっと守ってきたものが1本の線につながったような感覚があって、2人ですごくこれだって思って」

松尾沙知さん:
「すぐ決まったよね。ここしかないよね、みたいな。日本に帰ってきてどこに住むかの迷いみたいなのが一瞬でなくなったみたいなのがあった」

■再開の壁「改修費用」 CF募る

ただ再開に向けて大きな壁となったのが「改修費用」です。

昭和初期に建てられた店舗は老朽化が進み、特に厨房は改修が必要な部分がいくつも見つかりました。

そこでクラウドファンディングで支援を呼びかけ、改修費用を集めました。

松尾健太さん:
「古い建物を再生するってトラブルが多くて、水道管破裂していたりとか、トイレから水漏れしたりとか。そういったものの苦労はあったんですけど、本当に皆さんのおかげでここまでこられた」

■当時の味を追い求め 緊張の試食会

プレオープンを間近に控えた4月29日。

この日、松尾さんは店に旅館経営者や近隣住民などを招いて試食会を開きました。

松尾健太さん:
「今までの味を知っている方なので緊張はするけど、皆さん、自分の味を出せばいいんだよと優しい言葉をくれるので、皆さんの意見を聞きながら、どんどん改善していきたい。ダメ出しばっかりになったら申し訳ないですけど(笑)」

試食会のメニューは、地元住民から人気だった「馬肉うどん」と「かつ丼」。

「馬肉うどん」は、砂糖としょうゆをベースにした甘辛く濃いめの味が特徴で、スープで煮込んだ馬肉がたっぷりとのっています。

どちらも当時のレシピをもとにしつつ、住民たちの意見も聞き、試行錯誤しながら当時の味に近づけました。

手伝いで駆けつけてくれた元従業員の女性に味見をしてもらうと―

元従業員:
「大丈夫だと思います、私はね」

松尾健太さん:
「皆さんの意見を聞いて、そのためなので今日は」

■94歳先代店主の評価は

料理の準備が整い、店の外に先代から受け継いだのれんを掛けます。

松尾健太さん:
「始まるんだなって感じがする。これが掛かるとやっぱり日野出食堂って感じがするので、皆さんにとっても戻ってきたってなるんじゃないか」

試食会には約15人が参加しました。

そして、あの人の姿も―

94歳、前の店主の斉藤小夜子さんです。

試食会に参加した女性:
「(斉藤さんに)ここで何年やった?」

前の店主・斉藤小夜子さん:
「70年」

新たな日野出食堂の味はどうでしょうか?

かつ丼を食べて―

前の店主・斉藤小夜子さん:
「お味は薄味です」

馬肉うどんを食べて―

前の店主・斉藤小夜子さん:
「薄味だ」

試食会に参加した女性:
「この方はしょっぱいのが好きだから」

昔の味を守りつつ、少し薄味にしているのが、新たな日野出食堂の味です。

■「店があることがありがたい」

別所温泉旅館組合・倉沢晴之介組合長:
「とってもおいしいですよ。甘くてしょっぱいのがうまく表現されていると思う。新しい日野出の味っていうのがまた定着してくると思うので、今の時代にあわせて変えていけばいいかなというのはありますし、懐かしさみたいのは受け継いでほしい」

元従業員:
「(引き継ぐのは)大変だと思うよ。頑張ってやろうって気持ちだけでありがたい。ここを守ってくれるだけでありがたい」

近隣住民:
「おいしいです。(食堂の復活は)めちゃくちゃうれしい。ずっと通っていたので、あることがありがたい」

松尾健太さん:
「おいしかったよとかは聞こえてきたので、それだけはホッとしました。引き継ぐことの難しさも味わいながら、新しいことに挑戦していく姿を見せていけたら」

関係者も納得の味に仕上がりました。

■にぎわったプレオープンに手応え 

そして迎えた5月1日のプレオープン。

あいにくの天気にもかかわらず、大勢の客が訪れ、にぎわいました。

松尾沙知さん:
「伝説的なお店なのでけっこうプレッシャーというか、大丈夫かなと思いつつ、いろいろ皆さんから(当時の)味とか思い出を聞かせていただいて、頑張って続けていきます」

客:
「昔ながらの味で大変よかった」
「昔の味を引き継いでくれてありがたい。おいしい」

客の反応をみて、松尾さん夫婦もひと安心です。

松尾健太さん:
「お客さんがいっぱい来てくれてほっとしています」

松尾沙知さん:
「(オープンまで)目まぐるしいと言いますか、走り抜けた感じで今も走ってる最中なんですけど、やっとここまでこられた。頑張って皆さんに愛される食堂になれば」


■地元の人がホッとできる場所に

地元住民に愛された味を引き継ぎ、新たなスタートを切った日野出食堂。

松尾健太さん:
「別所温泉がもつ魅力をもっともっと引き出したいと思っている。地元の人がホッとできる場所をつくっていけたらと思っていますので、その雰囲気は残したままやっていこうと思っています」

今後、提供メニューを増やし、早ければ5月末ごろのグランドオープンを目指しています。

長野放送
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