1日の売り上げ7兆円!2020年の“国民的セール”は?

地下鉄の車内、スマホで懸命に通販サイトを操作している人が増えてくると、2020年も再びこの季節がやってきたと感じる。街中にあふれる広告の「11・11」「双11(=ダブルイレブン)」の文字と、あちこちで交わされる「今年は何買う?」という会話。11月11日―中国「独身の日」にちなんだ安売りイベントだ。

2019年11月11日、アリババは2684億元=約4兆円を売り上げた ※ウェイボより
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中国のネット通販最大手「アリババ」が2009年に始めたこのセール、ネット通販自体の浸透・定着と相まって、年を経るごとにその規模は拡大。毎回11月11日午前0時に開催される大々的なカウントダウンイベントと共に、いまや国民的行事となっている。2019年は11月11日の1日だけでアリババが4兆円、業界2位の京東集団(JD.COM)も3兆円以上を売り上げた。

当日あまりに注文が集中することもあって、アリババは今回11月1日から3日までの「プレセール」を始めた。期間限定の特別価格に加え、300元(約4500円)の注文ごとに40元(600円)引きするといった、“ついで買い”を誘う割引手法が一般的だ。私もさっそく生活に欠かせないマスクを大量注文し、普段のおよそ半額で手に入れることができた。

10月の大型連休に買い物を楽しむ人たち(中国・海南省)

年々巨大化する「独身の日」を巡っては、極端な値引きで需要の先食いをしているだけと指摘する声もあるが、今回に限っては、やはり全体の売り上げ額に注目が集まる。新型コロナウイルスによるダメージから回復途上にある中国経済のなかで、工業生産に比べると戻りが遅いとされる消費・小売り部門の復活のバロメーターになるからだ。

中国の調査会社iReserchのアンケートによると、今回のセールで、「前回より多くお金を使うつもり」と答えた人が40.9%、「変わらない」が31.0%、「減る見込み」が15.1%だった。やはり、長い自粛生活の反動「リベンジ消費」を楽しむ人は多そうだ。

海外高級ブランドが続々通販に…でもアメリカ製品はイヤ?

約630万円の腕時計はセール最高額として注目された ※ウェイボより

リベンジ消費を狙う今回の「独身の日」の特徴の一つが、海外高級ブランドの参戦だ。スイスの高級時計ブランド「ジャガー・ルクルト」は42万元(約630万円)の腕時計をアリババのサイトで売り出し、掲載3日で成約して注目を集めた。フランス・パリに本店のある「バレンシアガ」は人気のハンドバッグとスニーカーの新色を、アリババのモール上で世界に先駆けて発売。アメリカの「コーチ」や「ケイトスペード」(いずれもアウトレット)もセールに初登場している。

背景にあるのは新型コロナウイルスによる移動制限。中国人観光客の“爆買い”の恩恵を受けられなくなった海外の各ブランドと、海外に行けない中でもブランド品を求める中国の消費者、それぞれのニーズがネット通販で合致したと言える。ただここにも、中国と諸外国の関係、とりわけアメリカとの対立が影を落としている。

米コンサル会社アリックスパートナーズの調査では、今回のセールで、中国人消費者の66%が自国のブランドを優先して購入し、57%がアメリカ製品の購入を減らすつもりと回答した。「愛国心」がその主な理由で、同調査は海外ブランドに対し「中国のためのデザイン」や「中国製」を売りにしたほうがよいと指南している。奇しくも「独身の日」はアメリカの大統領選直後。中国の消費者のアメリカブランド離れが進むかも注目だ。

「ライブ配信」がコロナ後の新しい買い物様式に?

もう一つ新たなトレンドとなっているのが「ライブコマース」、つまり「生配信通販」だ。コロナ禍でいつも通りの営業ができないなか、多くの企業・商店が、アリババのサイトやドウイン(中国版TikTok)などの配信機能を使った通販に乗り出した。感染がほぼ抑え込まれ、商業施設の賑わいが戻った今でも、このライブコマースはすっかり定着した感がある。

ライブコマースに乗り出した北京の老舗靴店

「独身の日」向けの生配信通販では既に、女性向け化粧品を紹介する「口紅王子」として知られる李佳琦さんら2人のトップインフルエンサーが、1日の配信だけで10億元(約150億円)の予約注文を集めたとも報じられている。日付が変わった瞬間に目玉商品の注文を受け付けるこのイベントはライブ配信との相性がよいのだろう。コロナ後の「新しい買い物様式」は、この機会に一層の広がりを見せそうだ。

【執筆:FNN北京支局 岩佐雄人】