ほっとひと息つきたいとき、どんなランチを思い浮かべるだろうか。情報誌『Takt』の特集「気持ちほぐれるランチタイム」では、旬の味覚やこだわりグルメが勢ぞろいしているが、中でも目を引くのが「ちょっと意外な場所」で楽しめるランチだ。一つは富山県氷見市の病院に併設されたカフェ、もう一つは能登半島地震の被災を乗り越えた高岡市の昆布専門店。どちらも「身体が喜ぶ食事」という思いを軸に、丁寧に作られた一皿が訪れる人を迎えている。

氷見市の中村記念病院に併設された『NCafe』

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富山県氷見市島尾にある中村記念病院の2階。そこには、一般の人も気軽に利用できるカフェ『NCafe』がある。病院でランチ、と聞くと少し意外に感じるかもしれないが、ここで提供されるメニューはどれも、日々の食と健康を真剣に考えるスタッフたちの知恵と情熱が詰まったものだ。

中でも人気を集めているのが、「野菜たっぷり酵素玄米ランチ」である。テーブルに運ばれてくるのは、とてもカラフルでボリュームのある一皿。メインの鶏団子のトマトソースかけは、トマトの酸味と玉ねぎのほのかな甘みが絶妙に絡み合い、箸が止まらない味わいだという。

その味付けを支えているのが、すべて自家製の発酵調味料だ。今回使用されている5種類の中には、玉ねぎ麹を使ったものも含まれている。管理栄養士の田中美穂さんは語る。「今回はタマネギ麹を使った調味料を使っています」。市販品に頼らず、手間をかけて作られた調味料が、やさしく奥行きのある味を生み出している。

主食となる玄米にも、ひと工夫がある。「玄米にも酵素玄米を取り入れていて、もちもちとしたお赤飯のような食感の酵素玄米となっています」と田中さん。白米とも普通の玄米とも違う、独特の食感が楽しめる。

そして特筆すべきは、その野菜の量だ。彩り豊かに盛り付けられた野菜はなんと30種類以上。1日に必要とされる野菜摂取量の目安、およそ350グラムを一食で取り入れられるよう工夫されている。「食物繊維たっぷりです。管理栄養士、調理スタッフ、薬剤師とチームを組んで考案してできたランチになります」と田中さんは説明する。

このメニューが生まれた背景には、病院としての切実な思いがある。病院のスタッフに健康でいてほしい、日々の食事が大切だという想いから誕生したメニューだという。医療の現場だからこそ生まれた、真摯な一皿といえるだろう。

最近では、さまざまな料理を少しずつ楽しめる「まめ皿ランチ」も新たに登場した。いろいろな味わいを一度に楽しめるこのスタイルは、幅広い層に喜ばれそうだ。田中さんはこう話す。「野菜ってすごく大切で、食物繊維ってすごく大切なので、こちらのランチをきっかけに皆さん意識して少しでも日々の生活に取り入れていただけると嬉しいです」。病院のカフェで出会える、やさしく、誠実な一皿だ。

震災を乗り越えた三代目が守る昆布の味——高岡市『ひらき昆布店』

高岡市明野町に、グリーンのシャッターが目を引く店がある。昭和30年から続く昆布専門店、『ひらき昆布店』だ。店を切り盛りしているのは、三代目の松野聡子さん。その歴史は、ただの老舗というだけでは語れない重みを持っている。

「もともとは伏木で(お店を)やってました。昆布だけの販売で、普通の昆布店でした」と松野さんは振り返る。昆布の魅力を気軽に味わってもらおうと、5年ほど前にカフェをオープン。しかし、伏木の店舗は2年前の能登半島地震で被災し、去年9月からここ高岡市明野町に移転して営業を再開した。震災に遭いながらも昆布の味を届け続けている松野さんの姿勢が、この店の食事に滲み出ている。

ここで味わえるランチは、昆布の香りがふんわりと漂う、品数豊かなものだ。鮭の昆布巻きは、噛むたびに鮭と昆布のうまみが口いっぱいに広がる。「出汁の旨味で薄めの味付けでも美味しくいただけるようにしています。昆布屋ならではの味付けになっています」と松野さん。出汁をきかせることで、素材本来の味を引き立てる。塩分を抑えながらも満足感のある味わいは、身体へのやさしさとも重なる。

出汁としての昆布だけでなく、つくだ煮など食感を活かした品々も並び、一つのランチでさまざまな昆布の楽しみ方が体験できるのも魅力だ。さらに、曜日によってメニューの内容が変わるため、何度訪れても新しい発見がある。

今回いただいたのは、「こぶ締め鯛茶漬け」。塩こうじでこぶ締めされた鯛は、まったりとした味わいで旨みが凝縮されている。松野さんは「塩こうじしてこぶ締めしてあるんですけど、鯛がすごいまったりして、味が凝縮するように感じます」と説明する。お出汁が口いっぱいに広がり、噛むほどに魚の甘みがにじみ出てくる―。昆布専門店ならではの技が光る一品だ。

「若い方から年配の人まで、身体が喜ぶような食事を提供出来たらいいなと思っています」―三代にわたって昆布と向き合ってきた専門店の矜持と、震災を経て新たな地で再出発した思いが、一杯のだし茶漬けに込められている。

「身体が喜ぶ食事」という共通の軸

病院のカフェと昆布専門店、一見まったく異なる場所に見えるが、両者には共通する姿勢がある。それは、食べる人の身体と日々の暮らしを真剣に思いやる、という点だ。発酵調味料と30種類以上の野菜で作られる「野菜たっぷり酵素玄米ランチ」も、出汁の旨みを活かした「こぶ締め鯛茶漬け」も、ただ美味しいだけでなく、食べた後に「よかった」と思えるような一皿だった。

地域に根ざした、ちょっと意外なランチ。日常の中でほっとひと息つきたいとき、足を運んでみてはどうだろうか。

(富山テレビ放送)

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