「トイレの男女格差」について考えます。女性は外出先で長い列に並ぶことも多いと思いますが、この不便さに疑問を持った長野県松本市出身の女性が、全国1300カ所以上を実態調査しました。「格差を解消しよう」と声をあげています。
■「もれそう」女性トイレの行列
4月初旬の週末。上田城跡公園(長野県上田市)は満開の桜のもと、花見客でにぎわいました。
そんな中、公衆トイレには行列が―
並んでいるのは女性だけでした。
トイレの行列に並んだ経験、ありますか?
女性(松本市):
「ありますね。子連れだとトイレ探すのも大変」
女性(小学6年生):
「もれそうなとき、めっちゃ我慢する(笑)」
女性:
「相撲が好きで国技館に行くんですけど、女性のトイレはすごく混んでて男女差が激しい」
女性(長野市):
「それは永遠のテーマだと思います。順番待ちがない時はないです」
マイクを向けた全ての女性が、トイレの混雑に困った経験がありました。
一方、男性は。
男性(松本市):
「旅先行くとだいたい女性が混んでいる印象ある。(妻や娘が終わるのを待つ?)そうです」
男性(長野市):
「男性はさっと終わるので(女性を)待つ時間が長いときはあります」
■「推し」のライブで怒りが…
百瀬まなみさん:
「皆さんもっと怒っていいですよ。それは自分の責任ではなくて、トイレが少ないからいけないんです」
松本市出身、東京在住の行政書士・百瀬まなみさん(61)。
「トイレの男女格差」に疑問を持ち行動を起こしました。
きっかけは4年前の夏。
”推し”のコーラスグループ「純烈」のコンサートです。
移動中、岡山県のとある駅で。
百瀬まなみさん:
「(電車を)降りてからゆっくり行こうと思ったら、すでに満室、4~5人並んで進まないんです。やっとの思いで用を足しました」
案内板を見ると女性の個室は4つ。対する男性は個室と小便器合わせて7つありました。
百瀬まなみさん:
「(女性)4と(男性)7、こんなに違っていいのかと思いました。そういうことで怒りが頭にのぼって」
■男性用が女性用の1.68倍
換気や衛生などの専門家が示す基準では、トイレの個室や小便器の占有時間の目安は、男性が30秒、女性はその3倍の90秒。
女性は衣服の上げ下げなど、より長い時間がかかります。
それなのに「なぜ男性用の方が多いのか?」。
百瀬さんは疑問と怒りで行く先々でトイレを調査。夫や通りすがりの利用者、清掃員にも声をかけ協力を得ました。
調査は3月末までの3年半余りで全国1310カ所に到達しました。
その結果、個室と小便器の男女比の平均は、男性用が女性用の1.68倍でした。
女性用が多かったのは、全体の6.9%。91カ所だけでした。
特に差が大きかったのは駅。600カ所以上を調査し女性用が多かったのはわずか6カ所でした。
JR長野駅では男性用6、女性用4で1.5倍。JR松本駅では男性用8、女性用5で1.6倍でした。
こうした格差の背景には、男性の利用が多いとされるデータや、男女同じ面積の設計などがあると考えられます。
■行列は「時間の浪費」「外出不安」
百瀬さんは調査結果をSNSで発信し「利用時間の男女差が考慮されていない」と声をあげました。
百瀬まなみさん:
「まずは時間の浪費。何も生み出さない苦痛なだけの時間なんですよ、行列してる間って。年配の方はトイレがちゃんとできるだろうかと思うと、外出を控えるそうです」
時間の無駄や外出不安にもつながるトイレの行列。地道な調査と発信に共感が寄せられています。
女性(松本市):
「(行列は)諦めていたので、声を上げて地道に調べて、提言してくれた方が地元出身ですごい」
百瀬まなみさん:
「(座右の銘は)『文句は聞こえるように言え』これです。言わなきゃ通じませんから。相手は苦労していないので、こっちの気持ちを伝えない限りは永久に気づいてくれません。家族や連れと一緒に行って、片方だけが延々と待っているのはおかしい。男性にとっても損害です」
■国も対策へ「待ち時間平等に」
こうした中、国も対策に動き出しました。
3月、国土交通省が示したのは「トイレ設置に関するガイドライン」の案。
「公共トイレは待ち時間が男女平等になるよう」「男女等しく使う施設は、女性用を多くする」などの内容を盛り込んでいます。
百瀬まなみさん:
「できれば待ち時間の平等を、というのが私の願いだったんです。ガイドラインに『待ち時間が等しくなるように』と明記されました。画期的なこと」
■「可動式の壁」驚きの解決策
長野県内でも「待ち時間」に配慮する施設が増えています。
1990年代までに開館した県立のホールは、便器の数が男女ほぼ同数ですが、「まつもと市民芸術館」の主ホールは、男性用29に対し、女性用54と圧倒的多数。
「長野市芸術館」のメインホールも、男性用18、女性用29となっています。
さらに、2005年に開館した茅野市民館。最大780席収容のホールのトイレは―。
茅野市民館テクニカルディレクター・久保祥剛さん:
「見てのとおり開けた空間の中にトイレがあります」
茅野市民館テクニカルディレクター・久保祥剛さん:
「『壁』が出てきます。こんな感じで」
出てきたのは可動式の壁。これで個室の数を変えることができます。壁がなければ男女関係なく全てのトイレを使えます。
壁を動かすと男女の個室が同数に。女性用を多くしたい場合は、男性5、女性13になります。
こうした工夫は、設計段階から市民の声を取り入れたからこそ。
「ガイドライン以上に大切なことがある」といいます。
茅野市民館テクニカルディレクター・久保祥剛さん:
「どう使われるかということを想像して配慮してつくられる中で形が決まってくる。ガイドラインを決めるとそれに沿わなければいけなくなるということもあると思う。つくるときにどこまで実際の使用を考慮できたのかということの方が本当は重要なんだと思う」
■次の課題は「学校のトイレ」
一方、独自に調査を進める百瀬さん。今、気になるのは「学校のトイレ」です。
長野市教委によりますと、公立学校のトイレの男女比は6対4。百瀬さんの調べでも多くの地域で男性用が約1.5倍でした。
百瀬まなみさん:
「日々、女子の不利益が積み重なっているんです。女子は待つものだと刷り込まれちゃう。そんな気持ちのまま社会人になるのはかわいそう」
街でも―
高校1年生:
「受験のときも、すごい並んでて時間ギリギリまで並んでたりとか」
「もうちょっと個室増やすとかできないのかなと思います」
学校は災害時は避難所になるため、トイレは重要です。
「我慢」や「諦め」で長年、見過ごされてきた「トイレの行列」。
使う人への思いやりが形になることで、過ごしやすい社会につながるかもしれません。