2025年11月、横断歩道を青信号で渡っている最中、左折してきた車にはねられ亡くなった3歳の女の子。
母親は違うタイプの信号だったら娘が亡くなることはなかったと訴えています。

事故のリスクが大きく減少する信号の重要性を訴える親たちの思いを取材しました。

事故で娘を亡くした原田さん:
こちらが事故現場です。子供はここまで歩いてきて、ここで一時停止をして、そこから少し駆け出していって、左折してきた車にひかれてしまった。(連絡を受けて)え?って…、信じられない気持ちになって、血の気が引いていく思いでした。

こう話すのは、当時3歳の娘・恵理香ちゃんを事故で亡くした原田さんです。

事故が起きたのは2025年11月、茨城・水戸市の交差点で恵理香ちゃんが青信号の横断歩道を渡っていると、同じく青信号で左折してきた乗用車にはねられ死亡しました。

事故で娘を亡くした原田さん:
たった3年しか生きられなかったのは本当に残念だし、もっともっと長い人生があったはずなのにと思っています。

元気いっぱいで好奇心が旺盛だったという恵理香ちゃん。

事故で娘を亡くした原田さん:
とても明るくて元気で、もうどんなことにも興味を持って取り組む子でした。これは上の子、お兄ちゃんと一緒に遊んでいるところ。お兄ちゃんのことが大好きで“にぃに”と呼んでいたんですけれども…。

4歳年上のお兄ちゃんと仲良しで、兄妹はいつも一緒にいたといいます。

事故で娘を亡くした原田さん:
2歳になったばかりの頃に、私がコンタクトレンズを入れようとしたら手鏡を持ってきて、「はい、どうじょ」と渡してくれたんですね。

2025年秋、幼稚園に入園すると、持ち前の優しい性格ですぐに友達ができました。

事故で娘を亡くした原田さん:
本当にすぐみんなと打ち解けて、皆さんとお友達になって楽しく過ごしていたと思います。

しかし、楽しい日々は突然、終わりを迎えます。

悲劇は幼稚園の帰り道で起きました。
その日、迎えに来た祖母と歩いていた恵理香ちゃん。
青信号の交差点を渡る途中、左折してきた車の左前輪に巻き込まれたのです。

本来、車は交差点を左折する時、横断歩道に歩行者がいる場合は一時停止しなければなりません。

事故で娘を亡くした原田さん:
(交差点の)歩車分離化をもっと進めるべきだと考えています。「歩車分離式」の信号であれば今回の事故は100%起きなかったので。

愛する娘の死から約4カ月。
原田さんが普及を訴える「歩車分離式信号」とは。

一般的な信号機は、歩行者側の信号が青に変わると、同じ方向を走る車側の信号も青に変わりますが、歩車分離式信号にはいくつか種類があります。

その1つは、まず左右方向を走る車だけが青信号となります。
次に上下方向の車だけが青信号に。
そのあと、歩行者が上下左右ともに青信号となり、その間、車は走行できません。

横断する時間をずらすことで車と歩行者が同時に通行しないようになります。
東京・渋谷のスクランブル交差点もその1つです。

警察庁によりますと、2002年に全国100カ所の交差点で実証実験をした結果、事故の発生件数が約4割減少。
そのうち人と車の事故は約7割も減るなど大きな効果が認められたのです。しかし…。

事故で娘を亡くした原田さん:
(設置率は)全体の5%なので、もっと比率が高まればいいと思っています。

現在、全国に約21万基ある信号機のうち、歩車分離式信号の数は約1万基と全体のわずか5%ほどだというのです。

普及が進まない理由を警察庁に聞くと、「待ち時間の増加による渋滞への影響」「歩行者などの信号無視を誘発する恐れも考慮する必要がある」としています。

2025年1月、警察庁は歩車分離式信号について23年ぶりに設置基準を緩和し、整備を働きかけています。

原田さんのように交差点での事故で愛する子供を亡くし歩車分離式信号の設置を訴え続けた母親がいます。

事故で息子を亡くした黒崎さん:
ここが大八木町交差点といって、2015年7月19日の朝に息子が渡ろうとして事故にあった交差点。

約11年前、群馬・高崎市で中学生の息子を事故で亡くした黒崎さん。
当時、自転車に乗り部活の練習へと向かうため自転車横断帯を通行中、左折してきた大型トラックにはねられたといいます。

事故で息子を亡くした黒崎さん:
私は息子に何にもしてあげられないんです。皆さんだったら何をされますか?私には歩車分離信号(の設置)だった。

事故以降、歩車分離式信号の設置に向け地道な活動を続けてきた黒崎さん。
しかし、その道のりは長く険しいものでした。

事故で息子を亡くした黒崎さん:
(歩車分離式信号が)分からないから学びからスタートする。「分離信号ってどんな信号なの?」という学習会とか学んでいって。

「歩車分離式信号」について知ってもらうため、パネルを自作して公民館などに展示しているといいます。

そうした努力の積み重ねが10年後に実を結びます。

2025年9月、息子を亡くした交差点に歩車分離式信号が導入されたのです。

事故で息子を亡くした黒崎さん:
県警の方が「黒崎さん、歩車分離信号に改良できる」と。(Q.聞いた時はどうでした?)言葉にならない…やっと…。今よりも命を守れる信号に変わるなと思いました。もうこれ以上、私どものような悲惨な家族を出さないでほしいという思いで活動を続けています。

2025年、3歳の娘を失った原田さん。
事故から約1カ月後、事故を起こしたドライバーから1通の手紙が届いたといいます。

事故で娘を亡くした原田さん:
おわびをする言葉と今後どのように再発防止に取り組んでいくのかといったことが。

原田さんは現在、歩車分離式信号の普及のためSNSなどで発信し、声を上げ続けています。

事故で娘を亡くした原田さん:
“歩車分離化”をもっと進めるべきだと考えています。人の判断に依存する仕組みではなくて、機械によって人の行動を制御する仕組みに変えていかなければいけない。

山崎夕貴キャスター:
2025年、歩車分離式信号の設置基準が緩和されました。
新しい基準は、歩車分離式信号があれば防げた事故が過去5年間で2件以上、または死亡事故が1件でも発生した場合などとなっています。ただ、まだまだ課題は多そうですね。

三宅正治キャスター:
お子さんが犠牲になるケースがすごく多い気がしていて、もちろん渋滞とかの課題もあるとは思うけれども、ならば、例えば通学路などに限定して、まずは優先して設置していったらどうでしょうね。実際結果は出ているわけですから事故が減っているというね。

榎並大二郎キャスター:
まずできることからという設備面の環境整備と、何よりもハンドルを握る側のドライバーの皆さんの自覚というのが一番大事ですね。