【症状が出た中学1年生】「熱いのと体が重いので起きて、気持ち悪くてトイレ行って。連続で何回も吐いて」

3月中旬、下痢やおう吐の症状を訴えた小中学生たち。大阪府熊取町の小中学校8校で、300人以上の児童や生徒らが集団食中毒になりました。

関西テレビは今回、保健所に原因と断定された給食パン業者の内情を知る関係者を独自取材。語られたのは「疑義」でした。

【業者の内情を知る関係者】「パンを直接触っている人が陰性の方で、陽性の人が配送の方だけ。パンが原因かどうか、我々としては疑義がある」

なぜ感染はここまで広がったのか。専門家を取材すると見えてきたのは、ノロウイルスの驚くほどの「感染力の強さ」です。

【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「1人の調理人さんが汚染されているだけで、過去に2000人とか、食中毒患者が出たという報告がある」

“集団食中毒の真相”を徹底取材しました。

■症状が出た人は647人・うち302人が食中毒患者と断定

今月19日、大阪府熊取町の教育委員会に町立中学校の校長から入った一本の連絡。

【町立熊取中学校の校長の連絡内容より】「60人を超える生徒や教職員が、腹痛や下痢などの症状を訴えている」

町立の小・中学校8校で、腹痛などの体調不良を訴える児童や生徒、教職員がきのう(3月29日)までで、647人に上り、そのうち302人が食中毒患者と断定されました。

熊取町に住む中学1年生の兄と小学5年生の妹は、その症状のつらさを語りました。

【小学5年生の妹】「しんどくて寝ようとしても寝られなくて」

【中学1年生の兄】「とにかく吐く量が多かった」

【小学5年生の妹】「早退で。ほぼ女子が10人中9人くらい全員同じ感じで。熱とか」

■パン製造業者の従業員の便からノロウイルス検出

保健所が断定した原因は、「給食パンによる集団食中毒」。

今月17日の給食の献立表には、パンが提供されていたことが書かれていました。

高温で焼き上げるパンが原因とされたことに、熊取町長も驚きをあらわにします。

【熊取町 藤原敏司町長】「熱をかけて焼いているパンですので、そんなところからノロウイルスが出るとは夢にも思いませんでした」

このパンを製造したのは、泉佐野市の「サガン製パン」で、従業員の便からノロウイルスが検出されたということです。

サガン製パンの営業停止命令は、きょう(30日)付けで解かれていますが、会社には人の姿は見当たらず、30日は営業していないということです。

■調理後の作業で汚染されたか 関係者「ノロ陽性の従業員2人は配送担当」

なぜパンから食中毒が起きたのか。一般的な給食パンを製造・提供する工程を紹介した宮城県学校給食会の動画を見ると、次のような手順が確認できます。

・オーブンで加熱。
・異物などが混入していないかチェック。
・パンは車で学校まで配送。

ノロウイルスは加熱すると死滅するため、大阪府は、調理後の作業で汚染されたとみています。

取材班はサガン製パンの内情を知る関係者から独自に話を聞くことができました。

【サガン製パンの内情を知る関係者】「保健所の話によると、従業員の方2名がPCR検査で陽性だった」

(Q.その2人はどんな業務をしていた?)
【サガン製パンの内情を知る関係者】「主に配送ですね。配送の方が直接パンを触るということはないですね」

■陰性だった担当者が配送した残りの4校でも食中毒が発生

関係者によると、ノロウイルスが検出されたのは、学校にパンを届ける「配送」担当者の2人だけで、パンが入れられた容器には触れるものの、パンに直接手を触れることはないといいます。

【サガン製パンの内情を知る関係者】「検品や箱詰め。その人たちはすべて陰性なんです。パンを直接触っている人が陰性で、陽性が配送の方だけ。本当にパンが原因かどうかは我々としては疑義がある。

(配送に関わった)3人のうち2人が陽性で4校を回っている。1人は陰性で4校を回っている。(そこでも被害が)発生しているのが疑義のあるところです」

陰性だった担当者が配送した残りの4校でも食中毒が発生したため、関係者は、「短期間の調査でパンが食中毒の原因と断定されたことに疑問を感じている」と話します。

【サガン製パンの内情を知る関係者】「工場に入る時の風圧で雑菌を飛ばす、きちんとした手洗いをする、トイレは別の所でする、工場と更衣室を離す。

泉佐野保健所の検査を毎年受けていますけども、(去年は)100点満点中の97点で、衛生に関しては優等生と感じています。

(サガン製パンは)ええかげんなことはしていないと思います。場合によっては廃業も選択肢のひとつになるのかなと」

■専門家「明らかに保菌していた人が容器を触っていれば…」容器から感染拡大か

パンに直接手を触れていない配送担当者2人のノロウイルスから、数百人規模の集団食中毒まで拡大するのでしょうか。

食中毒に詳しい帝塚山学院大学の西川禎一教授は、指先のわずかな洗い残しにも、数十万から数十億個のノロウイルスが潜んでいて、10個ほどが体に入るだけでも感染すると指摘します。

【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「1人の調理人さんが汚染されているだけで、過去に2000人とか、食中毒患者が出たという報告がある」

そして、今回の食中毒については直接手がふれていない配送担当者からでも汚染が広がった可能性があると指摘します。

【帝塚山学院大学 西川禎一教授】「その人がパンに直接さわっていなくても、学校側に渡しますよね。その時に、パンの容器をさわらずにそっとパンだけをつまみだす作業になっているかというと、あまり考えにくい。

明らかに保菌していた人が(パンを入れる)容器を触っていたのであれば、パンそのものに触っていなくても(感染が広がったことは)驚くようなことではない」

パンを入れる容器に感染していた人が触れたことで、容器が汚染され、そこから感染が広がった可能性があるということです。

■「求められる厳格な安全基準に対し単価が低い」厳しい経営環境の給食業者

再発防止のため、給食の安全対策はどうあるべきなのでしょうか。

近畿地方のある業者は、求められる厳格な安全基準に対し、単価が低く、厳しい経営状態に追い込まれていると話します。

【近畿地方の給食パン業者】「異物対策、クレーム対策で疲弊したり、採算面が合わないから撤退しますということで(業者が)減少しているわけですね」

(Q.パン1個につき利益はどれくらい?)
【近畿地方の給食パン業者】「1円あったら良い方じゃないですか。子供たちのために半ば公共的な仕事をしているという思いがあるんですけど、あまりに低い加工賃では苦しい面があるというのが正直なところ」

厳しい経営環境の中で求められる給食の安全対策。業者の責任だけでなく、社会全体で考える必要がありそうです。

(関西テレビ「newsランナー」2026年3月30日放送)

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