映像に写っている女性の手元。
実は指の一部を事故で失っているんですが、人工の指・エピテーゼを装着しているんです。
本物そっくりに再現する技術のおかげで自信を取り戻したという女性と、一人一人に合わせた人工ボディーを作る人の思いを、イット!の山崎夕貴キャスターが聞きました。
山崎キャスターが訪れたのは、本物の指そっくりの人工の指を作る体験教室。
指の型を取ってシリコンを流し込み、完成しました。
教えているのは田村雅美さん(44)。エピテーゼの製作を行う専門サロン「エピテみやび」の代表です。
エピテーゼ専門サロン代表・田村雅美さん:
お客さまのコンプレックスをなるべく自然に隠すものがエピテーゼ。
『エピテーゼ』とは、事故や病気、先天性の疾患などで失ってしまった体の一部を再現する人工ボディー。
義手や義足など身体機能の回復が目的ではなく、“見た目の回復”のための人工装具です。
手の指だけではありません。
足の親指につけたエピテーゼは、サンダルを履いても違和感はなし。
「小耳症」と呼ばれる耳の先天性の疾患を持つ人も、エピテーゼの耳をつけることでマスクや眼鏡もかけられるようになります。
山崎夕貴キャスター:
マスクがつけられない、眼鏡がかけられないなど、本当に当事者にならないとわからない悩みですね。
価格は部位によりますが、10万円から20万円ほど。
自治体によっては補助金が出るケースもあります。
田村さんが製作にかける期間は約3カ月。
その人の肌に合った色、関節のしわまで全てオーダーメードで仕上げるため、全く違和感がない仕上がりとなるのです。
エピテーゼ専門サロン代表・田村雅美さん:
エピテーゼは答えがないんですよ。一人一人部位も違えば悩みも違う。
山崎夕貴キャスター:
ヒアリングしながらお客さんの満足する顔が答えなんだと。
田村さんのエピテーゼによって笑顔を取り戻した女性がいます。
5年前から左手人さし指にエピテーゼをつけている佐藤さん(38)です。
幼いころ、事故で指の第一関節から先を失いました。
指のエピテーゼを着用・佐藤さん:
脚立の留め具の部分の穴に指が入ってしまい切断した。3~4歳から指がない生活をしています。
日常生活には不自由はなかったものの、指を隠すことが多くなり、からかわれることもあったといいます。
指のエピテーゼを着用・佐藤さん:
小学生の時に“指なしライダー”って言われて…。親に言った時、すごく傷ついた顔をしていたのを覚えている。
そんな佐藤さんがエピテーゼを知ったのは、31歳の時でした。
指のエピテーゼを着用・佐藤さん:
兄の結婚式に出席した時、「指輪しました!」と左手を見せているお嫁さんを見て、すごく幸せな顔だった。「私こんな顔できるかな」と…。
「結婚式に笑顔で指輪を見せたい」。
佐藤さんはエピテーゼを田村さんに依頼。
出来上がったのは、ネイル付きのエピテーゼです。
そして、ウェディングドレスを着る日。
エピテーゼをつけて、憧れていた結婚指輪を披露する写真を撮影することができたのです。
指のエピテーゼを着用・佐藤さん:
みんなが笑っててよかったなと。両親の喜ぶ顔が見られてホッとした。
現在、職場でもエピテーゼをつけているという佐藤さん。
気持ちにも大きな変化があったそうです。
指のエピテーゼを着用・佐藤さん:
自信を持って左手を出して、お茶とか話ができるようになった。あの時(エピテーゼに)出会って、使い始めて良かった。
多くの人の自信を取り戻したエピテーゼ。
これまで約1000点を製作してきた田村さんには、エピテーゼに携わるようになったきっかけがあります。
20代のころ、歯科技工士としてアメリカで働いていた田村さんは、負傷した兵士の顔の修復に立ち会い、エピテーゼの技術に出会ったのです。
さらに、背中を押したのは…。
エピテーゼ専門サロン代表・田村雅美さん:
友人が乳がんになり再会した時に、「今胸がないんだよ」と話してくれた。「エピテーゼ作らないの?」と伝えたら、友人はエピテーゼを知らなかった。友人が困っているのに、まだまだ知られていない。
「困っている友人を助けたい」という一心でエピテーゼの技術を習得し、9年前にエピテーゼの会社を立ち上げました。
胸のエピテーゼを見た山崎キャスターは「かなりリアルですね。結構重いですね。これだけ重いと、胸にどうやってくっつけるんだろうって不安がちょっとあるんですけど」と話していましたが、実際に触ってみると「結構吸い付きますね」という感想。
田村さんは「温泉で使うとかであれば、全然これでもちます」と話します。
手術で失った胸の膨らみを取り戻すには、再建手術という選択肢もありますが、エピテーゼは体に傷をつけることがないため、体の負担が最小限で済むというのも特徴だといいます。
エピテーゼ専門サロン代表・田村雅美さん:
皆さんやっぱり長年悩みを抱えていらっしゃるので、「ようやく元の自分に戻れた」「みんなと同じになれた」という声をもらう。
より多くの人にエピテーゼを知ってほしいと、田村さんは写真展を開いたり、自身のアトリエでスクールを開くなど活動を広げています。
エピテーゼが広がることでどんな世界になってほしいか尋ねられた田村さんは、「誰にも言えない悩み、コンプレックスを前向きに変えていける。自分らしく生きられる新しい選択肢の一つになってほしい」と話していました。