近年、人気が高まっている蒸留酒の「ジン」。長野県野沢温泉村の男性が2025年11月、自らの手で新たな蒸留所を建設しました。「自分にしかできない味」を目指し、オリジナルの「クラフトジン」造りに励んでいます。
■「村のジン」お目当ての客も
蒸留酒の「ジン」をソーダで割った「ジンソーダ」。
客(京都から):
「おいしいです、格別ですね。ここに来ると、皆さん飲まれているイメージあります」
野沢温泉村のバー、「GURUGURU」。
ビールやワインを中心に、「村で造られたジン」も7種類ほどそろえています。
GURUGURU・松村和希さん:
「野沢に来た方は、ジンが目当てという人も少なくなくて、蒸留所で試飲とかされてからここで飲んでいくという人も多い」
村で造られたジン。その一部を造っているのが―。
■長年、夢だった蒸留所を開設
2025年11月、野沢温泉村にできた「富井蒸留所」です。村としては2カ所目の蒸留所で、立ち上げたのは、地元出身の富井亮太さん(42)です。
富井蒸留所・富井亮太さん:
「これが蒸留器本体でポットスチルとか呼ばれたりしている」
「ジン」は、「ボタニカル」と呼ばれる植物の皮や根などを「香り付け」に使った蒸留酒の一種です。
近年、人気が高まっていて、国内出荷量は2015年から伸びはじめ、2024年は5倍を超えました。
熟成期間がいらず小規模でも生産しやすいこと、香り付け次第でさまざまなクラフトジンが造れること、また糖質がほぼゼロで、健康志向にもマッチしたことなどが、理由として挙げられます。
富井亮太さん:
「長年、夢だった自分の蒸留所で、自分のお酒をつくれるので、毎日楽しく過ごしている」
■元ジャンプ選手の新たな挑戦
富井さんは幼少期からスキーのジャンプに打ち込み、高校のインターハイでは3位に入ったことも。
大学でも全国大会優勝を経験しましたが、選手の道には進まず、東京のアルコールメーカーに就職しました。
富井亮太さん:
「アルコールメーカーにいた時に、九州とかのお酒文化、角打ち文化とか、すごく面白くてのめり込んでいました。今、考えればそこからお酒人生がスタートしてたのかも」
2011年、子どもが生まれたことなどがきっかけで村に帰り、住宅設備などの会社で働きました。
しかし、酒造りの夢があきらめきれず―。
2021年に設立した「野沢温泉蒸留所」の立ち上げから携わり、「蒸留士」として酒造りを担いました。
富井亮太さん:
「野沢温泉蒸留所で機会をもらって、そこで3、4年ぐらい立ち上げから、世界のコンペティションで金賞取るまで経験させていただいて、元々やりたかった『自分の蒸留所』も立ち上げようと」
■エナジードリンクでジン!?
基礎造りや組み立てなど蒸留所造りは、すべて自分の手で行いました。
そして、2025年11月、「富井蒸留所」を完成させました。
富井亮太さん:
「なかなか蒸留所を自分の手で造る蒸留士はいないだろということで、自分でメインにやってきました」
富井さんが最初に手掛けたクラフトジンは、エナジードリンクを使う独特のものでした。
富井亮太さん:
「僕しかできない、自分なら何をするかなっていうところで、今回はエナジードリンクを蒸留してみたり、他の人がやっていなさそうなところで、おいしいものをつくってみたい」
「クレイジーポーション ジン」ソーダ割りをいただきました。
(記者リポート)
「爽やかで軽やかな口当たりなんですが、どこか薬品のような香りもあって癖になります」
客(埼玉から):
「おいしいです、すっきりしていて。そんなに癖がなくて、すっきりした感じ」
富井亮太さん:
「ちょっと薬っぽさとかを出したくて、それにはセージっていう葉っぱを入れることでちょっと薬っぽさを出して、目玉はエナジードリンクを入れて、今までにないボタニカル。ジンの自由度をまたちょっと自分の中で広げられた」
■次の新作は「七味」ジン
この日、富井さんは「新商品」の試作品を造っていました。
富井亮太さん:
「今は新商品の開発レシピを実験しています。ボタニカルの量を調整してアルコールに漬け込んでいる、計測です」
香り付けの素材となる「ボタニカル」は、わずかな量の違いで味の変化にもつながるため、小数点以下まで細かく計量します。
富井亮太さん:
「(試作品でつくる量が)少ない分、小数点1でも味がずれてしまうので、そこは気にしている」
今回、試したのはジンのもとであるジュニパーベリーのほか、コリアンダー、白ごま、ゆず、そして「七味」です。
富井亮太さん:
「長野県の古くからある味をジンとして再現するにあたって、バランスの良さを重視して、七味のフレーバーは残しつつ、ジュニパーベリーの味も香りも感じるようにしたかった。その調合の具合が」
計量したものを混ぜたら一晩寝かせて、香りをしっかりアルコールに溶け込ませます。
■「焼き鳥に一番合う」味に
翌日―。
富井亮太さん:
「アルコールとボタニカルの香りが漂っていたので、しっかり漬け込んである。想像と違った味が出たりするので、どうなるか楽しみ」
約85度で熱することでアルコールだけを蒸発させ、それを水で冷やして、「ジン」を抽出します。
約30分で160mlを抽出。このままだとアルコール度数が82%近くもあるので、水を加えて45%ほどに下げます。
試作品が完成しました。
富井亮太さん:
「うまいです、バランスはめちゃくちゃ良いです。ジンの良いところと七味の香りが最後、香ってくるので、どちらも強調しすぎていない。バランスが取れていると思うので、レシピ的にはこの方向性でいこうと」
思っていた通りのジンが出来上がったようです。
富井亮太さん:
「(何にあう?)焼き鳥、一番合うんじゃないかと個人的には。できれば長野県のお土産になるようなジンを、今回はつくっていきたい」
■ラム酒やアガベ酒も視野に
富井さんの「酒造りへの意欲」は増すばかり。
ジンの製法を生かして、ほかにもさまざまな蒸留酒造りにチャレンジしていきたいと意気込みます。
富井蒸留所・富井亮太さん:
「今のところジンに関しては、新商品とか限定商品をいろいろ考えている。それ以外にラム酒、アガベシロップを使ったアガベ酒という酒を将来的にはつくっていきたい」