水俣病の公式確認から今年で70年です。水俣病の原因となった『メチル水銀』などについて理解を深めようと地元の県立水俣高校の生徒たちが『水銀学習』に取り組んでいます。日本と世界の国々、様々な視点から水銀の健康被害について考える高校生の姿を追いました。

先月20日、県立水俣高校を訪ねると…2年生の生徒たちがある発表をしていました。テーマは、地域課題や医療、スポーツなどさまざま。興味のある分野について学びを深める『総合的な探究の時間』です。1年間、調べてきた成果をおよそ15分間でプレゼンテーションします。その中には『水銀』をテーマに選んだ生徒もいました。

【県立水俣高校2年森竹幸さん】「水銀についてみなさんはどれくらい知識がありますか。水銀はみなさんの身の回りによくあります。空気や水や食べ物にも含まれています。その中で僕らは今回、魚の水銀について調べました」

森竹幸さんと馬城昭寿さんです。2人は国立水俣病総合研究センターなどの協力を得て、『自分たちで釣った魚の水銀値』を調べました。国が定める規制の値を下回っていたため「親水護岸周辺の魚は安全であるといえると思う」と結論付けたものの、2人が実験した魚は「家庭用の冷凍庫で保存した魚」であることから「正確な値とはいえない」という反省点も見つかったといいます。

【国立水俣病総合研究センター丸本倍美主任研究員】「大人の実験からするとまだ『プレ実験』という感じだが…こういうのに興味を持っているのがすごい。今後、何を結論にするのかなと思って(見守っている)。ぜひ続けてほしい」

【県立水俣高校2年森竹幸さん】「(今後は)魚以外にもワカメとか海藻とか、別の地域の魚や生き物の調査もして比較し、もっと正確な値を出して伝えられたらと思う」【県立水俣高校2年馬城昭寿さん】「一から始めたので、とても難しかったが、チャレンジ精神が向上できたのでよかった」

海外における『水銀』の現状を調べた生徒もいました。

【県立水俣高校2年廣田愛心さん】「『水銀は危険』と分かっていても(発展途上国で使用が)やめられない理由は何でしょうか、主な理由は3つあります。一つ目は貧困です。生活のため、危険であっても水銀を使わざるを得ない状況にあります」

2年生の岩阪望央さんと廣田愛心さんは、発展途上国でコストをかけずに金を採掘・抽出するために水銀が使われていることやそれによって健康被害が出ていることなどを調べ、発表しました。

【県立水俣高校2年岩阪望央さん】「探究を通して私たちは問題を善悪だけで判断するのではなくその背景にある社会的な要因まで考えることの大切さを学びました」

岩坂さんは去年11月にスイスのジュネーブで開催された『水銀に関する水俣条約』の締約国会議『COP6(コップシックス)』にも参加し、水俣高校の活動について英語で発表しました。

【水俣高校2年岩阪望央さん】「私自身、『水銀』と聞いたら水俣病ということしか(今までは)思いつかなかったがジュネーブの国際会議に参加したことでいろんな視点を持つことができた。そういった点で(校内の探究活動にも)生かされたと思う」一方、1年生のカリキュラムでも今年度から『水銀学習』が始まりました。

【県立水俣高校柳生佐保教諭】「『水銀学習パンフレット』みなさんがんばって作りましたね。完成しました、届きました」

3月中旬に完成したばかりのパンフレット、タイトルは『水銀問題から学ぶ私たちの選択』。1年生全員を対象にした校外学習などで学んだことを、有志17人が一冊の本にまとめました。生徒が撮影した水俣の海の写真も…

【県立水俣高校1年生田端彩葉さん】「晴れている日はいつでも夕日がきれいなので水俣の景色をみんなに見てもらいたいなと思って撮った」スイスの国際会議に参加した一人、本山典美さんは『水俣条約』について記事を書きました。

【国際会議に参加した県立水俣高校1年本山典美さん】「水俣条約について詳しく調べた後でCOPにも行くことができた。水俣市民としてもっと環境への意識が高まったし外国の方々の水銀への意識(の高さ)も刺激になった。もっと水俣も何かをしないといけないし自分も行動していきたいと思った」

【県立水俣高校柳生佐保教諭】「生徒が有志として17人も手を挙げてくれたのが本当にうれしかった。これから先、探究活動が生徒たちの中でもっと育まれていく可能性を実感している」パンフレットは3000部を発行。水俣病について当事者の立場から生徒たちに講話をした語り部の緒方正実さんにも届けられました。

【水俣病語り部緒方正実さん】「水俣高校生が水俣病と正面から向かい合って学びに変えている。そのことが被害当事者としてまた市民として、大人としてものすごく意味があるというか。うれしい」パンフレットは今後、生徒たちが母校の中学校に届けに行くほか、来年度は翻訳して海外にも広める活動をしていきたいということです。

水銀による健康被害の歴史を繰り返さないために。水俣病公式確認から70年。水俣の地で生まれ育つ若い世代が学びを深め、自分たちなりのカタチで発信しようとしています。

テレビ熊本
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