13歳の中学生が趣味のカメラで世界を広げています。字を書くことに困難を抱え不登校になりましたが、初めて写真展を開きました。独自の視点で捉える野鳥の姿に共感が広がっています。
■13歳の中学生が初の野鳥写真展
真っ青な空に羽を広げるユリカモメ。見事なシンクロを見せる2羽のホオジロガモ。藻をついばみ顔を起こした瞬間です。
写真展に訪れた人:
「よく(レンズの)ピントが合ったね」
横川我歩さん:
「普通に飯を食べているだけなので意外と合わせるの楽でした」
岡谷市の中学1年生・横川我歩さん13歳です。
撮影したのは、この冬、諏訪湖で出合った野鳥。3月15日、下諏訪町で初めて写真展を開きました。
■「書字障害」抱え不登校に
横川我歩さん:
「カンムリカイツブリが飛んでました」
「頭を空っぽにしながら歩いてます。外に出ると頭の中がリフレッシュできる」
我歩さんにとって、諏訪湖は幼い頃から慣れ親しんだ安心できる居場所です。
実は、我歩さん、ある「困難」を抱えています。
文字や数字をうまく書けない「書字障害」。話したり理解したりすることは問題ないのに、「書く」ことだけが難しい発達特性の一つです。
母・志歩子さん:
「(黒板に)書かれた文字を(書き)写つすという学習スタイルが我歩にとっては苦しい。私たちもそれに気づけるまで時間がかかって、『学校に行きたくない』って始まったのは2年生の秋とか3年生のはじめの頃」
学校から次第に足が遠のき―。
横川我歩さん:
「5年生くらいまではずっと(家に)引きこもってました。ずっとゲームやって、YouTubeを見て、頭がそれで汚染されていた」
■カメラが変えた日常と世界
そんなとき出会ったカメラ。きっかけは、アイスホッケーチームへの加入でした。
子どもたちを撮影しようと母親が手にした一眼レフ。それを借りて湖畔を歩くと鳥や昆虫、よく知る生き物に次々に出合いました。
母・志歩子さん:
「(我歩は)小さいころから図鑑を読んだり、好きなことの知識はたくさん。読むことはいくらでもできるので」
横川我歩さん:
「あ、モズだ。モズです、今あの看板の上にいますよ」
「たまに、そこにシジュウカラもいるよ。エナガもいるし」
横川我歩さん:
「図鑑に載っているものを初めて見たときは、めちゃくちゃ興奮します。『自分だけが撮ったぞ』みたいなそんな瞬間がいい。そんな瞬間を撮りたいですね。(鳥にも)バリエーションがあって、“撮り”飽きないというか、“鳥”だけに(笑)」
■個性に合わせた学び
今も毎日の登校が難しい我歩さん。中学進学を控えた頃から下諏訪町の学習支援拠点「信州本〇塾」に通い始めました。
元教員の牧野直樹さん(45)が、週に1度、我歩さんにあった学習方法で個人授業を行います。
信州本〇塾・牧野直樹さん:
「きょうは先に理科のワークをやりましょう。風化って何?」
横川我歩さん:
「風化は岩石が崩れていく感じ」
信州本〇塾・牧野直樹さん:
「浸食とは?」
横川我歩さん:
「削られる」
使うのは普通の問題集ですが、文字は書き入れません。先生の問いかけに、我歩さんが口頭で答えて知識を整理していきます。
横川我歩さん:
「風化、浸食、運搬」
信州本〇塾・牧野直樹さん:
「正解」
信州本〇塾・牧野直樹さん:
「我歩さんの特徴は、一度おぼえたら忘れにくい。こうやって学びを重ねていきます。学校だと5時間かけてやる勉強を今、10分でやりました」
横川我歩さん:
「ここで予習したことを学校で確認したり」
そんな中、牧野さんが目にした我歩さんの写真―。
信州本〇塾・牧野直樹さん:
「『たくさんの人に見てもらったらいいよ』と言ったら、『大したことないですから』って。“人の目が怖い”ということで、ふたをするのはもったいないと思って」
SNSに投稿すると、たくさんの「いいね」が―。
我歩さんは背中を押されて写真展の開催を決意。自ら個人や企業に協賛金も募りました。
伝えたいメッセージがあります。
横川我歩さん:
「不登校全員が暗いってわけではないことを伝えたい。明るい不登校もいますよと伝えたい。好きなことができるっていいです。人生変わりますよ、結構」
■1日限りの写真展に70人以上
塾を会場にした1日限りの写真展には70人以上が訪れました。
鮮やかな青のカワセミは1週間かけて餌場を特定。おばあちゃんも一緒に歩きました。
撮影に同行した祖母:
「一緒に諏訪湖まで行って、いい写真撮れていてびっくりしました」
横川我歩さん:
「カワセミ、これメスだよ」
来場者:
「どこで見分けるの?」
横川我歩さん:
「くちばしの下が、赤いか黒いか」
来場者:
「こんなきれいな鳥が諏訪湖にいるなんて思わなかった」
■「このサギ、ハードボイルドだね」
トークショーも開かれました。
横川我歩さん:
「(アオサギは)よく見ると片足で立っている。あと首を縮めて傍観してる。父ちゃんにこの写真見せたら『このサギ、ハードボイルドだね』って言われました」
「この鳥は何を思ってるんだろう?何でこんなことしてるんだろう?って(写真の)裏を考えてもらえると面白いです」
「(ヒドリガモは)このとき100羽近くいて、小さい子どもがワーって行って、バッて飛びあがった」
最初は緊張気味でしたが、徐々に口調も滑らかに。我歩さんの目線で切り取る鳥たちの個性に、皆が引き込まれました。
来場者:
「私も朝5時半に起きて諏訪湖を歩く。歩いてくと(鳥が)バッと飛ぶ。その瞬間を見てるから、すごい納得してうれしい」
■「鳥へのを愛感じる」周囲の反響
“好きなもの”をたくさんの人と共有できました。
アイスホッケーの仲間:
「細部まで細かく撮れているところがすごい。鳥への愛を感じられる写真。鳥一つ一つの魅力を出していると思った」
中学校の担任:
「堂々と話す姿を見て、一段と成長する姿に感動した。この機会で、いろいろな人とつながり、可能性が伸びていくことを楽しみにしている」
横川我歩さん:
「楽しかったです!全然面識のない人が来て『この写真良いね』と言ってくれると親に褒められるのもうれしいが、それとは少し違ったうれしさがある。聞いてもらうことって楽しいです。うれしくてうれしくて、途中から調子づいて、声が大きくなった」
■家族の思いと見つけた自分の道
父・忍さん:
「他の人には見えていない世界が彼には見えていたりするし、それが親ながら、私とは違う感覚をもって育っていることをうれしく思う瞬間があった」
母・志歩子さん:
「(以前は)できないことばかりに着目していたけど、今すでに持っているもの、こんなこともできる、あんなことも。皆が持っているものは持っていなくても、自分にはこれがある、自分だからできることがあると視点を変えてきての今、なのかな」
横川我歩さん:
「新芽出てきてますね、桜も。取っちゃいけないんですけどね」
自分自身とまっすぐ向き合い、世界を広げる我歩さん。諏訪湖もまもなく春本番です。
横川我歩さん:
「流れに身を任せて生きていきます」
母・志歩子さん:
「応援してます」
横川我歩さん:
「なので、ゴープロ(カメラ)買っていただけたら(笑)」