全国的に高い評価を受ける福島県会津坂下町の日本酒。この地で創業160年を超える老舗「豊國酒造」で、6代目の高久功嗣(たかくこうじ)さんが理想の酒造りに挑んでいる。一度は家業を離れ会社員として働いた経験を持つ高久さん。父から受け継いだ伝統の技と家族の支えを胸に、地域の誇りとなる一杯を追求する。
会津の個性豊かな地酒
3月14日、会津坂下町のレンタルスペースで日本酒の飲み比べ会が開かれた。会場に並んだのは、町が誇る個性豊かな地酒の数々だ。
参加者からは「坂下の人は気さくで飾らない。そういう飾らない味が酒に直接出ていて、すっきりとして甘くておいしい」「裏豊國を最初に飲んだ。すごく力強いけども、シャインマスカットみたいなフルーティな香りがあっておいしかった」といった声が上がった。
中でも上品な味わいで人気を集めていたのが、豊國酒造の酒。会津坂下町に3つある伝統的な酒蔵の一つで、創業160年を超える歴史を持つ老舗である。
一度は離れた酒蔵
その豊國酒造で今、酒造りの中心を担うのが6代目の高久功嗣さんだ。幼い頃から酒造りの現場を身近に感じてきたが、かつては「酒蔵の息子」という立場に肩身の狭さを感じることもあったという。
高久さんは「酒蔵の息子って、すこし優遇されているような、お坊ちゃまみたいなそういう面を少し感じたことがある。自分だけの力で就職して会社に勤めたいというのもあった」と話す。
大学卒業後は、福島県郡山市の製薬会社に就職。8年間、営業職として経験を積んだ後、30歳を区切りに家業を継ぐことを決意した。
父の背中から学ぶ酒造り
酒造りに欠かせない知識や経験のほとんどは、5代目である父・禎也さんの背中から学んだ。
2026年からは、酒の香りや味を決める最も重要な工程の一つである発酵の管理を任されるようになった。アルコール度数と糖度のバランスなど、様々な要素を緻密に分析し、調整していく。
ひたむきな仕事ぶりに、父・禎也さんも全幅の信頼を寄せている。禎也さんは「ほぼ一人でできると思います。私、何もすることなくなってしまったので。自分でやりたいことをとことんやってもらいたい」と語る。
原動力は家族と地域の誇り
高久さんが追及する理想の酒蔵。それは、手作りの伝統にこだわりながら技術を磨き上げる姿勢にある。「人の熱意であったり、代々伝わるものであったり。そういうところが日本酒の魅力を一番感じるところ」と高久さんは考えている。
日々、酒造りに向き合う高久さんには、かけがえのない時間がある。仕事終わりの妻・恵美さんとの晩酌だ。自身が造った酒を飲む妻の表情や言葉が、大きなモチベーションにつながっている。
妻の恵美さんは「おいしいお酒を造るということと、家族のためにということは、夫の仕事をみていて常に感じている。夫にはいつも感謝しています」と話す。
高久さんは「豊國という銘柄が自分の出身地で最高の酒だと、地元の方が誇りに思えるようなお酒を突き詰めて造っていきたい」と力強く語った。
米どころで良質な水に恵まれた会津坂下町で培われてきた日本酒文化。高久さんは家族の支えと地域の誇りを胸に、今日も酒を醸している。
(福島テレビ)
