食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「そぼろ飯」。1949年に新宿で創業した串焼きの名店「鳥茂」を再び訪れ、鶏・豚・牛の挽き肉に秘伝のタレを絡めた、オリジナル弁当(※事前予約)のみに入っている裏メニューを紹介。
戦後まもなく屋台から始まり、今では新鮮なもつを使った焼きとんで“東京を代表する名店”となった店の歴史にも迫る。
ピーマン肉詰め発祥の店「鳥茂」
新宿駅南口から、甲州街道を下って徒歩2分。賑やかな新宿の街から一本入った路地に佇む、1949年開店の串焼き「鳥茂」。

連日満席の店内は一階と二階を合わせて約80席。二階のカウンター席では、職人たちの熱気を間近で感じることができる。
現在、3代目・酒巻祐史さんがのれんを守り、祖父と父が築いた「仕事と味」を受け継ぎながら、時代に即した新たなメニューも生み出している。

以前「鳥茂」には、発祥と言われる人気メニュー「ピーマン肉詰め」を教えてもらった。

さらに、塩で味付けされた絶妙な焼き加減のレバーに加え、ねっちりと柔らかい食感のチレや、淡白な味わいの気管、コリコリとした食感のアゴなど、「鳥茂」ではさまざまな希少部位を楽しむことができる。
食事の締めには鶏ガラに魚介出汁、白みそを使った雑炊や、そのスープにそうめんを加えたにゅうめんもあり、最高の一杯と一串に出会える新宿の名店だ。
自分ができることを一生懸命やる
約75年前、新宿の地で屋台から始まった「鳥茂」。当時は物資に乏しく、手に入りやすかった豚の臓物を焼き鳥に見立てて出す店が多い時代で、「鳥茂」もそんな店の一つだった。
そして2代目の父が若くして亡くなったため、祐史さんは23歳で「鳥茂」を継ぐことに。

当時のことを祐史さんは、「やるしかない、という感じ。初代に『どうしたら商売上手くいくんですか?』と質問したら、『お前の好きなようにやればいい。自分で勉強してやりなさい』と言われのが一番の財産です」と振り返る。
植野さんに「何から始めたのか」と聞かれると、「まずは技術的なことから。どうやったらお店が繁盛するかを考えた」と答えた。
とにかく腕を磨くこと。そんな3代目にとって一番の先生となったのは「お客様」だった。

祐史さんは当時の客との関係を「自分の好きな店の次の代を育てようとしてくれていた。めちゃくちゃ厳しいことを言われたし、毎日が恐怖でしたね。お金をいただいて怒られるってめちゃめちゃ厳しいですから」と苦笑した。
そんな3代目に客は「365日、『鳥茂』のことを考えている人。目の前のお仕事に一生懸命な人だから来る人がひかれる」「常連をすごく大事にしていて、飽きられないために常に新メニューを考えている。飲食店だけど神社に参拝しに来るぐらいのつもりで来ている」と話していた。
祐史さんが中心となって、全スタッフが「自分ができることを一生懸命やる」。それが「鳥茂」という店なのだ。

本日のお目当て、鳥茂の「そぼろ飯」。
一口食べた植野さんは「軽く噛むと色んな旨味が一気に出る、色んなものが全部入っている。これ食べていると絶対幸せになれる」と絶賛。
鳥茂「そぼろ飯」レシピを紹介する。
