中東情勢が混迷の度合いを深め、原油価格は再び1バレル=100ドルに迫る展開となっている。原油高が世界景気を下押しする懸念が一段と高まるなか、今週、日銀やFRBは金融政策を決める会合を開く。
湾岸諸国の石油生産は“世界需要の1割”減少
イランによるとみられるタンカーなどへの攻撃が複数報告され、イランがホルムズ海峡に機雷を敷設し始めたと伝えられたのに加えて、アメリカがイラン産原油の供給基地であるカーグ島の攻撃に踏み切り、トランプ大統領は13日、自身のSNSに「イランの『至宝』であるカーグ島のすべての軍事目標を完全に破壊した」と投稿した。

原油市場は、先週、WTI先物価格が一時1バレル=119ドル台と、3年9カ月ぶりの水準まで急騰、その後、76ドル台まで値を下げる場面もあったが、再び100ドル近辺の高値になっている。
IEA=国際エネルギー機関は、12日に公表した報告書で、ホルムズ海峡の封鎖などで、史上最大の供給混乱が引き起こされ、中東の湾岸諸国の石油生産は1日あたり少なくとも1000万バレル減少したと指摘した。これは、世界需要のおよそ1割に相当する量で、船の輸送が速やかに再開されない限り、供給の落ち込みは拡大すると危機感を示している。
株・円・債券のトリプル安
金融市場でも動揺が広がっている。日経平均株価は、アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃開始後2週間で約9%下げた。ニューヨーク市場では、一般消費財や金融、資本財などの景気敏感業種に売りが目立つようになり、ダウ平均株価は、週間での値下がり幅が900ドルを超えた。
為替相場では「有事のドル買い」が膨らみ、基軸通貨で流動性の高いドルが円などに対して買われている。基本的にドル建てで取引される原油価格の上昇は、円からドルの両替が増えることにつながる。エネルギー調達の輸入依存度が高い日本の貿易収支を、原油高が悪化させるとの見方も円相場の押し下げ要因だ。
13日のニューヨーク市場で、円は、一時1ドル=159円75銭と、2024年7月以来の円安・ドル高水準をつけた。「介入警戒ライン」とされてきた160円の節目到達が目前に迫ってきたが、原油高をきっかけに進む円売りドル買いの流れを「無秩序な動き」とは判断しにくいとして、介入は難しいのではとの見方も出ている。
原油高騰を通じたインフレの昂進が意識されるなか、金利は上昇ピッチを強めている。日本国内の債券市場では、13日、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが2.24%まで上昇したほか、13日のニューヨーク市場でも、長期債が続落し、10年債利回りが一時4.29%を記録した。ともに、約1カ月ぶりの高水準だ。
日米 金利は据え置きか
今週は、世界の主要中央銀行が金融政策を決める「中銀ウィーク」だ。17~18日にアメリカのFRB=連邦準備制度理事会が、18~19日には日銀が会合を開くが、中東情勢の不透明感が色濃いなか、いずれも動きづらいことから、金利は据え置かれるとみられている。

利下げペースが遅れるとの見方が強まっているのがFRBだ。金利先物市場の値動きからFRBの政策金利を予想する「フェドウオッチ」によると、攻撃前まで3割を超え最も多かった年内利上げ2回の予想は、14日の時点で約16%まで低下する一方、0〜1回とする予想が急増し、ともに40%程度となった。

日銀も、0.75%程度としている現在の政策金利を維持する公算が大きい。植田総裁は4日の国会で、原油高が「景気と、一時的な要因を除いた基調的な物価に下押し圧力となる可能性がある」とする一方、原油価格の上昇が続いた場合、「家計や企業の予想インフレ率が上昇し、基調的な物価上昇率を押し上げる可能性」を指摘した。
コストプッシュ型のインフレを利上げで抑えるのは難しいとの声が広がるなか、日銀は、エネルギー価格高騰の景気や物価情勢への影響を見極めるため、利上げを見送るとの見方が強まっている。
物価上昇と景気減速が同時進行する「スタグフレーション」をめぐる懸念が一段と強まるなか、中東情勢の緊迫化が金融政策にも影響する局面になってきた。世界経済が深刻な打撃を受ける可能性に警戒感が広がっている。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)
