「小浜・京都ルートが絶対的に必要」「小浜・京都ルート1本で議論をするのはどうなんだと」与党議員同士が火花を散らし、「亀岡ルートがナンバーワンです!」「北陸新幹線はぜひ舞鶴へ」と自治体が名乗りを上げ、ついには「延伸計画反対!」と仏教会まで立ち上がりました。
福井県の敦賀から新大阪まで延伸する計画の北陸新幹線をめぐって、関西では今、まさに白熱した議論が巻き起こっています。
一度は決まったはずのルートが、なぜ再び振り出しに戻ってしまったのでしょうか。
■田中角栄から50年、ようやく決まったはずが...
東京から石川県の金沢を経由し、新大阪まで延伸する計画がある北陸新幹線。この計画が決まったのは1973年、田中角栄内閣の時でした。
【田中角栄首相(当時)】「交通網がなくて国民所得が上がるはずはありません」
そう語った田中角栄首相の言葉から約40年。2016年、利便性の高さなどから福井県の小浜市から京都市内を経由する「小浜・京都ルート」が最終的に選ばれました。
しかし先週、改めて始まったのは…。
【(「小浜・京都ルート」再考)与党整備委員会 前原誠司共同委員長】「我々が提示する8パターンについて検証していただくと同時に、キックオフでございます」
自民と維新でつくる与党の整備委員会で、再検討が始まったのです。
議論されているのは「小浜・京都ルート」のほか、米原駅から東海道新幹線に乗り換えや乗り入れとなる「米原ルート」、琵琶湖の西側を通る「湖西ルート」など8つのルート。今年7月までの今国会中に、1つに絞ろうというのです。
■「千年の愚行」と掲げる僧侶たち
なぜ振り出しに戻ったのか。まず、京都市内で「小浜・京都ルート」に強い反発が起きています。
【京都仏教会の僧侶たち】「京都の水と伝統を守るため、北陸新幹線延伸計画反対」
「千年の愚行」と書かれた旗を掲げているのは、京都仏教会の僧侶たちです。「小浜・京都ルート」は京都市内の地下をトンネルで縦断する計画で、「地下水への影響が懸念される」などと反発。すでに3万9000筆以上の反対署名を集めていて、今後国に提出したいとしています。
京都仏教会の宮城泰年常務理事は「水脈を変えてしまうということは、京都の産業にとってみれば大変なことだと。今ここで黙っていたら、どのようなことになるか。それこそ50年先の我々の孫・子の代にツケを及ぼすものである」と訴えます。
問題は費用面でも深刻です。物価高騰などの影響で、建設費が当初の試算からどんどん膨らみ、最大5兆3000億円になる可能性があると判明したのです。
■維新候補のトップ当選が流れを変えた
さらに去年、「小浜・京都ルート」に大きくブレーキをかける出来事が起きました。
参議院選挙の京都選挙区で、「小浜・京都ルート」の“再考”を公約に掲げた維新の新実氏が、「小浜・京都ルート」に決定した張本人である自民の西田氏を上回って、トップで当選したのです。
この「民意」を受けて、ルートの再検討をすることになりました。
【(「小浜・京都ルート」推進)自民・西田昌司参院議員】「日本海側を通るルートで、東京~京都~大阪間を作っておく、完全別ルートでないと駄目。反対のための反対論が、京都にまかり通り過ぎてたと思いますね。それが新幹線計画が、ずっと遅れてきた一番の原因です」
あくまで「小浜・京都ルートが最適」と話す西田議員に対し、新実議員は…。
【(「小浜・京都ルート」再考)維新・新実彰平参院議員】「『小浜・京都ルート』1本で議論をするのは、どうなんだと問題提起をさせていただいた次第です。
『小浜・京都ルート』の是非だけを問うた参議院選挙ではありませんでしたし、私も鬼の首を取ったように振る舞うつもりは全くありませんが、やはりまだ尊重していただいてしかるべき民意というものは、参議院選挙にあるんではないというふうに思ってます。怒られますかね」
「全ルートをフェアに並べる」という思いを”はんなり”と主張しました。
■「亀岡ルートがナンバーワンです!」
ルートをめぐり“バッチバチ”の議論が繰り広げられる中で、「誘致活動」に再び熱を入れる地域もあります。
0系新幹線の先頭車両を展示するのは京都市の隣にある亀岡市。
【記者リポート】「今回、亀岡市を通る、“亀岡ルートの案”が復活しました」
亀岡市では「“西京都駅”構想」などを掲げ、1973年から誘致活動を行ってきました。
亀岡出身の関西テレビの神崎解説デスクが10年前に撮影した時には「北陸新幹線」と書かれた巨大な看板もありましたが、今はというと…。
【記者リポート】「看板は取られていて、現在は骨組みだけに...」
もう誘致は諦めていた中、再び「亀岡ルート案」が出されたのです!
市長に“意気込み”を聞きました。
【(亀岡ルート推進)亀岡市 桂川孝裕市長】「ここの亀岡ルートが、一番最短距離で、工事も早く進むでしょうし、予算も安くできるんじゃないかと我々はみていて、『原価を安くして、早くする』ということが、関西圏、大阪にとっても大変、重要なこと」
「新たな初夢」と題し、今年1月に誘致の再始動を表明した亀岡市。看板がなくなったこの場所にも再び…。
【(亀岡ルート推進)亀岡市 桂川孝裕市長】「枠が残っているので、新たな啓発看板を作りたい。『亀岡ルート』がナンバーワンです!」
桂川孝裕市長は力強く宣言しました。
■舞鶴も「夢っす!夢っすね」
そしてもう1つ!北陸新幹線に期待を寄せるのが、京都府北部の日本海に面した舞鶴市。今回、舞鶴を通る2つのルート案が出されています。
【舞鶴市民】「夢っす!夢っすね」
【舞鶴市民】「『ここ(舞鶴)まで通してくれ』言うといて」
市民の声を届けに行くと...市長が来てくれました。
【(舞鶴ルート推進)舞鶴市・鴨田秋津市長】「『市長がんばれ!絶対にとってきてくれ!』と声をたくさんいただいてるので、もう両腕をがんがん振り回して、ここでアピールしないと!“一回死んだルート”ですからね」
やる気にみなぎる舞鶴市長は、去年7月の参議院選挙の後、すぐに誘致活動を再開し、「舞鶴」の強みをアピールしてきました。
その一つが海上自衛隊・舞鶴基地。舞鶴は日本海側で唯一、海上自衛隊の基地があり、海上保安本部も置かれている地域なのです。
【(舞鶴ルート推進)舞鶴市・鴨田秋津市長】「「今、(太平洋側で)南海トラフ地震が高い確率で発生すると言われる中、災害時もそうですし、万が一の有事の際にも、新幹線を整備していくことで、輸送能力をしっかりと高める。北陸新幹線はぜひ、舞鶴へ!」
■「早く決めて、早く作って活用してほしい」
“白熱”...というより“混沌”としてきた誘致論争の決着は、無事、終点にたどり着けるのでしょうか。
取材を続ける鉄道ジャーナリストの伊原薫さんは…。
【鉄道ジャーナリスト 伊原薫さん】「議論を尽くした結果決まった『小浜・京都ルート』が重要視されるべき。
『湖西ルート』は、走行距離=建設費を抑えられるというメリットがある。直線的に京都を結ぶという部分もあるので、検討の価値はある。いろいろな方の利益関係もあると思いますが、早く決めて、早く作って活用してほしい」
肝心の運行主体であるJR西日本は、「利便性などから『小浜・京都ルート』が最適で、他のルートは課題がある」としています。
計画から50年を経ても決着しない大阪への延伸計画。8つのルート案が入り乱れる中、果たして無事に開業する日は来るのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年3月12日放送)