広島県内の児童虐待の相談対応件数は、ここ10年間で毎年過去最高を更新している状況が続いています。
この「児童虐待」などから長きにわたって子供たちを守ってきたご当地ヒーローが広島にいます。
そのヒーローがいま大きな葛藤を抱えています。
【子どもたち】
「頑張れー!」
待ち望む子どもたちの目の前に現れたのは。
【メープルカイザー】
「俺は子どもたちの未来を守るために誕生した正義の戦士!真っ赤に輝くもみじの化身、『安芸戦士メープルカイザー』だ!」
広島のご当地ヒーロー「安芸戦士メープルカイザー」。
来年度末で16年続けてきた戦いを終えることにしています。
「児童虐待をなくしたい」と県内を中心に活動し、これまで1000回近くの戦いを重ねてきました。
【メープルカイザー】
「またね、バイバイ。また会おうね。ありがとうね!また会おうね!」
訪れた人との時間を大切に過ごす、心優しいヒーロー。
誕生したのは自身の経験がきっかけだったといいます。
子供のころ、両親は共働きで面倒を見られる環境ではなく、カイザーさんは親族の家に預けられていました。
そこで待ち受けていたのは…。
【メープルカイザー】
「テニスラケットで叩かれたりとか、学校の縦笛で顔を殴られたりとか…というのが多々ありました。2階から突き落とされたり結構ありましたね」
親族の家を飛び出したカイザーさんはその後、養護施設へ保護され、平日は施設、土日は自宅で暮らす生活を送っていました。
しかし、「虐待」から逃れられたものの次に待っていたのは、施設や学校での陰湿な「いじめ」です。
【メープルカイザー】
「その時に助けてくれるだろうなとおもっていたヒーローが仮面ライダーだった。小さい時に自分が受けたそういう体験を、いまの子どもたちにしてほしくないと思って始めたのがきっかけです」
心の支えとなっていた「仮面ライダー」。
自分も誰かを救えるヒーローになりたい。
その強い思いが、メープルカイザーを誕生させました。
カイザーさんのヒーローショーを見るとほかのヒーローにはない部分に気づきます。
それは…。
「メープルセイバー!」
「この剣が切ったのは、お前たちの体ではなく、お前たちの持っている悪い心を切ったんだ!」
「絶対に相手を傷つけない」。
カイザーさんの強いこだわりです。
さらに…。
【メープルカイザー】
「同じ台本を2回作らないというのがこだわり。呼んでいただいたイベントに沿ったようなテーマのストーリーを作り、そのなかに親御さんとか子どもたちへのメッセージを最後に入れるというのがこだわり」
戦うだけではありません。
【メープルカイザー】
「必ず僕、お父さんとお母さんと握手をするっているのを毎回心がけていて、お父さんとお母さんが握手をしているときの子どもたちが嬉しそう。なんかお父さんもお母さんも握手してるんだっていう感じが嬉しそう。なんか不思議な感覚になる」
そして、時には悩みにも寄り添います。
【相談をしたファン】
「長女がいるんですが、高校生の。また反抗期がぶり返していて、親としてふがいないからこうなったのかなと思っていて、相談したら誰でもあることだから、誰もが通る道だからと言ってくださったので、かなり楽になりました」
ファンから厚い信頼もあるヒーロー。その一方で心にある悩みをかかえています。
【メープルカイザー】
「子どもとの予定がなかなか合わなかったりとか、子どもの行事になかなか参加できないということもあるんですが、僕もともと首が悪くて、昔、格闘技をしていて首があまりよくなくて、いま状態がよくなくてずっとこう痺れたような感じが残っていたりとか…」
親子の時間が大事だと訴えているにも関わらず、自分が子供を大事にできていない。
そして、ヒーローの象徴である1.3キロもある変身マスクそのものがカイザーさんの体をむしばんでいました。
【メープルカイザー】
Q:首はきょうは?
「痛いですよ。きょう首痛いです。だから朝痛み止め飲みました」
首の神経が圧迫されている影響で、めまいを感じることもあるといいます。
体をだましだまし、生活する日々が続いています。
【メープルカイザー】
「病院の方に相談をしたときに首の負担を減らさなくてはいけないといわれ、もし最悪手術をしないと治らないといわれた。やっぱり皆さんを元気にするなら僕も元気じゃないとダメだというのもありますし」
「活動を続けるか」「活動をやめるか」半年ほど悩んだ末、ひとつの思いに至ったといいます。
【メープルカイザー】
「息子が俺がメイプルカイザーをやるよといってくれた。その一言でじゃあ活動を休止にしようと。息子が大きくなって変身できるようになって、もしまたメープルカイザーが世の中に戻れるように活動終了ではなく活動休止として発表させてもらった」
【メープルカイザー】
Q:メイプルカイザーやる?
【息子】(こくりとうなづく)
活動をそばで支えてきた妻・誉乃さんも本音を漏らします。
【妻・誉乃さん】
「やっぱり体のことが一番心配だったので、さびしいっちゃさびしいけど、続けてほしい気持ちもないことはないが、自分の体を大事にしてほしい」
メープルカイザーを応援してきたファンは活動休止を惜しんでいます。
【子どもたち】
「少し悲しいなというのもありつつ、また戻ってきてほしい。この子がメープルカイザーショーに来るようになってから、元々内向的だったんですけど、来るようになってからいろんな人としゃべれるようになったり、人見知りが改善されたり、すごく明るくなったと思うので、勇気もらった元気もらったというのが一番かな。終えるところまで追っかけて一緒に楽しめたらいいな」
子どもたちを救うため16年間ヒーローとしてやってきました。
「本当に活動を休んでいいのか」葛藤を抱えながら応援してくれた人たちのため戦い続けます。
【メープルカイザー】
「メープルカイザーはあと残り1年活動があります。まだまだ優しい社会を作るために一生懸命頑張っていきますので皆さん応援よろしくお願いします。頑張ります!」
ご当地ヒーロー・安芸戦士メープルカイザー。
優しい社会を作る彼の戦いに終わりはありません。