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東日本大震災の発生から、2026年3月11日で15年。犠牲者を悼む「祈り」の重みは変わらなくとも、追悼式典の「形」は今、大きな変容を遂げている。
県内で最も多い3970人が死亡または行方不明となった石巻市は、式典のあり方に一つの決断を下した。

「遺族を最優先に」式典会場の変更とサイレンの配慮

南浜津波復興祈念公園内の慰霊碑
南浜津波復興祈念公園内の慰霊碑

石巻市は今年、これまで南浜津波復興祈念公園内の慰霊碑前で行ってきた追悼式典の会場を、公園内の別の場所へと移した。その理由は、震災遺族への深い配慮にある。

石巻市震災伝承課 横山貴光課長: 
慰霊と鎮魂のためにつくった慰霊碑の前で、発災時刻の午後2時46分に、ご遺族や献花をする方が手を合わせられない。「式典を優先するのはどうなんだ」という声をいただいた。ご遺族の方を最優先にという考えから、今回は変更を考えた。

石巻市震災伝承課 横山貴光課長
石巻市震災伝承課 横山貴光課長

変化していくのは、場所だけではない。2024年からは、鳴り響くサイレンの音階をこれまでよりも低く設定している。 

石巻市震災伝承課 横山貴光課長:
サイレンを鳴らすと、どうしても震災時のことを思い出すという声も。若干音階の低いサイレンを採用して、そういった声に応えられるようにした。

徳水利枝さん
徳水利枝さん

石巻市雄勝地区で「雄勝ローズファクトリーガーデン」を運営する徳水利枝さんも、震災で母親を亡くした遺族の一人だ。徳水さんはこうした変化を「ありがたい」と受け止めている。 

徳水利枝さん:
私もあの音を聞いたらざわざわしてしまう。すごく気持ちに寄り添った施策をとってくださった。

追悼から「防災・伝承」へ。15年目の自治体の判断

東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授

時間の経過とともに、式典のあり方を問い直す動きは宮城県内各地で広がっている。
東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授は、この変化を必然的なものと指摘する。

東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授:
亡くなった方のために思う場として追悼式典が設けられるが、時間の経過とともに、犠牲になった方を直接知る方がだんだんと少なくなっていく。そうすると追悼の目的で行う意義が薄れていくのも実態。

事実、2026年式典を開催するのは沿岸15自治体のうち、石巻市、東松島市、仙台市、気仙沼市、南三陸町、七ケ浜町、山元町の7市町にとどまる。

また、気仙沼市では2022年から、式典の名称を「追悼と防災のつどい」へと変更。悲しみを共有する場から、記憶と教訓を未来に繋ぐ場へと、その軸足を移している。

それぞれが、それぞれの場所で迎える3月11日

東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授:
小さな町内会でも大きな市町村でも、様々な形でこの東日本大震災を忘れないことが継続的に行われれば、何百年後にもう一回来てしまうかもしれない災害に十分に備えられる。

今年、石巻市の式典に遺族代表として出席する徳水さんもまた、画一的な形式にこだわらないことの大切さを強調する。

徳水利枝さん:
この場所に、この時間にということがやりやすい、過ごしやすい人もいるし、それぞれの場所でそれぞれの思いで過ごしたいという方もいる。行政も遺族も、自分たちを支援してくれたことへの感謝の気持ちを新たにする場だと思う。それを確認するような、年に1回の場はあってもいい。

「大切な人を思う日」であることは変わらない。しかし15年という月日は、追悼のあり方をより多層的で、一人ひとりの心に寄り添う形へと進化させている。

仙台放送
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