YouTube番組『リアルバリュー』で発表された、暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」。
高市総理の名前を冠した暗号資産と思われましたが本人が「全く存じ上げません」
と今月2日、SNSで否定したことにより、その価値が暴落しました。
「日本円で約400万円」という大幅な損失を受けたという投資家も。
また弁護士は次のような問題点を指摘します。
【仮想通貨に詳しい山田祥也弁護士】「高市総理が関係しているんだなと勘違いする内容であれば、それは問題になります」
そもそもサナエトークンとは何なのか。一体なぜこのような事態となったのか。
総理大臣の名前を冠した暗号資産をめぐって起きている騒動の真相に独自取材で迫りました。
■「高市さんサイドとも連絡を取らせて頂いて…」公開後『サナエトークン』急騰!
You Tube番組「リアルバリュー」をキッカケに発行された、高市総理の名前が入った暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」。
このプロジェクトを手掛けていた実業家の溝口勇児氏は、自身のXにこのような動画を投稿しています。
【溝口勇児氏のXより】「ジャパンイズバックプロジェクトからサナエトークンを発表します。リーダーを象徴する名前として、サナエを冠する運びとなってサナエトークンとなった。高市さんサイドとも連絡を取らせて頂いています」
ホームページを見ると高市総理のイラストと共に、サナエトークンの説明などが記載されています。
この暗号資産は先月25日に公開されるとその価格が急騰。
■「私は全く存じ上げませんし、何も知らされておりません」高市氏が関与否定で暴落
しかし今月2日、事態は急転することになります。
【高市総理のXより】「名前のせいか、いろいろな誤解があるようですが、このトークンについては、私は全く存じ上げませんし、私の事務所側も、当該トークンがどのようなものなのかについて知らされておりません」
高市総理自身が関与を真っ向から否定したのです。これを受けてサナエトークンの価値は暴落。
また暗号資産の取引などには交換業者として金融庁への登録が必要ですが、今月4日には国会で金融庁の担当者が「登録を行っている、暗号資産交換業者28社の中で当該トークンを取り扱っている事業者はございません」と明かしました。
金融庁は実態の把握に乗り出すとしています。
■「価値がみるみる落ちていった…」当事者を取材
今回ランナーは、この「サナエトークン」の取引で400万円の損失を出した当事者を独自に取材することができました。
【投資家・せきねもん氏】「(番組の)切り抜き動画かなにかが流れてきていて、(高市首相の)後援会が『X』上で『ノーボーダー(運営側)』の投稿をリポストしていて。
高市さんが認める後援会が間接的に認めているということなので、そこはかなり盛り上がるかなと思って購入したというのもあります」
700万円分のサナエトークンを購入したという男性ですが、その価値はみるみる落ちていったといいます。
【投資家・せきねもん氏】「下がったのが結構早くて、僕が投資して、すぐ下がってという状況なので。
プロジェクトとしても、そんなに盛り上がっていなかったので、『損切り』して全部売ってしまったんですが、それはたまたま高市さんが投稿する日の朝ぐらいでした」
男性は下落が続く価格を見て売却を決めましたが、その後、高市総理がXで関与を否定し、さらに暴落したということです。
【投資家・せきねもん氏】「結構一気にいろんな情報がバーッと来て、リリースも一気にされたので、ちょっとあまり計画的ではなかったのかなと思ったりはしました」
■「仮想通貨の説明は受けていない」高市氏後援会がコメント
”トークン運営側とコミュニケーションをとっていた”とされる高市総理の後援会。
先ほどランナーの取材に対し、コメントを出しました。
【高市総理の後援会】「ノーボーダー側からは仮想通貨として用いられるサナエトークンの説明は全く受けていません」
あくまでアプリ内で意見を集める手段として利用すると説明を受けたとしています。
■「法的な問題は2つある」と暗号資産トラブルに詳しい弁護士
この一連の騒動で法的には何が問題となる可能性があるのか?
財務省近畿財務局で検査官などの経験もある、暗号資産トラブルに詳しい弁護士はこう指摘します。
【竟成法律事務所・山田祥也弁護士】「2つ大きな問題点があって、1つは業の登録をしていない業者が暗号資産の販売・交換に関与したということ。
もう一つは高市総理が実際には関与していないのにも関わらず関与したというニュアンスの発言をした、あるいはそういった内容の主張がなされたというところ」
サナエトークンのホームページでは英語で「免責事項」と書かれた部分をクリックすると、「現時点において高市氏と提携または承認されているものではないことにご留意願います」と記載はありますが…
【竟成法律事務所・山田祥也弁護士】「これ「打消し表示」というのですが、打消し表示があったとしても、一般に多くの人がこれを見て『ああ、高市総理が関係しているんだな』と勘違いする内容であればそれは問題になります」
■暗号資産をめぐるトラブル増加の背景にあるのは…
専門家が刑事事件に発展する可能性もあると指摘する今回の事案。
近年、暗号資産をめぐる事件やトラブルは頻発しています。
先週、大阪府警は60代の男性がおよそ4億4000万円相当の暗号資産をだまし取られる事件が発生したと発表しました。
捜査関係者はその背景について「被害者の金を暗号資産に変えて送金させる手口はかなり増えている。犯罪収益を隠す、いわゆる資金洗浄(マネーロンダリング)のためにこの手口を使う」と説明します。
様々な問題点をはらむ暗号資産とは一体、どのように作られ、取引されるのか。
ランナーは専門家の元を尋ねました。
■暗号資産は誰でも簡単に安価に作れてしまう…
【近畿大学情報学部・森山真光准教授】「技術的には暗号資産であるトークンっていうものはだれでも簡単に作れてしまう。費用に関しては暗号資産にもよるんですが数十円~数千円で作れるということになっている」
暗号資産は、種類によっては誰でも、そして、比較的安価に発行できるということで、実際に作成方法を教えてもらいました。
【近畿大学情報学部・森山真光准教授】「最近はウェブサイトで登録することもできまして。
こちらは『ソラナ』というブロックチェーン上でトークンを作るウェブページになっています。
まずは名前ですね。例えばnewsランナートークンを作るということで、『newsランナー』と入れていきます」
名前を決めたら、次は通貨の単位を入力します。
【近畿大学情報学部森山真光准教授】「ビットコインだったらBTCとかなので、頭文字をとって『NRT』とか」
そして、供給量、どのように使用するかなどを入力し…
【近畿大学情報学部・森山真光准教授】「これで情報入力は完了です」
この後、定められた暗号資産で手数料を支払い、発行されるということです。
■わずか47秒 あっという間に暗号資産発行
発行までにかかる時間を計測すると、なんと暗号資産作成のための登録作業は、わずか47秒でした。
手軽さの一方で、リスクもあるといいます。
【近畿大学情報学部・森山真光准教授】「暗号資産に関しては価格変動が激しかったり、盗難のリスクがある。発行する側も購入する側も注意しなきゃいけない」
運営サイドはプロジェクト停止を明らかにしたものの…
今回、騒動となっているサナエトークン。
運営サイドは、プロジェクトの停止とトークン保有者への補償などを行う方針を明らかにしています。
ランナーは、運営側の溝口氏にコンタクトを試みましたが、9日までに返答はありませんでした。
時の総理の名前を冠した暗号資産が巻き起こした騒動は今後、事件かに至る可能性はあるのか。どう進展するのでしょうか。
■西脇弁護士「届け出なく『交換業』行えば“資金決済法違反”に」
元テレビ朝日アナウンサーで、仮想通貨にも詳しい弁護士の西脇亨輔さんは、今回の問題について、
【西脇弁護士】「このニュースでも取り上げたように、仮想通貨は簡単にできてしまいます。結果として、世界にはおよそ3000万種類前後あると言われています。
それだけたくさんあるということは、玉石混交で、怪しいものもあるかもしれません。
そこで『資金決済法』という法律があって、登録をした業者の人でなければ、仮想通貨・暗号資産については、取引に関わってはいけないとなっている。
取り引きされるような環境を作ることや、いわゆる『交換業』に当たるようなことを、届け出なく行った場合には、資金決済法違反として犯罪になってしまうということです。
今回の運営団体の側は、『自分たちは作ったけれども、交換業に当たるような、届け出が必要なことはしていない』という主張をしています。
でもやっぱり、今回様々な宣伝とかがなされていることが、『交換業に当たるんじゃないか』といった指摘もされている。
もしも資金決済法違反となると、罰則もあります。さらに詐欺だとか、そういったものに関わるとなると、刑法犯の可能性も出てきます」
■西脇弁護士「真相をすべて明らかにしないといけない」
その上で西脇さんは、「サナエトークン」を購入した人の金がどのように流れたのか、運営団体と高市総理の後援会との関係など、「真相をすべて明らかにしないといけない」と指摘しました。
【西脇弁護士】「金融庁が今後調べると思いますが、実際に買った人の元からお金がなくなって、どこかに流れているのは事実だとすると、一体それはどこに流れているのか。
そしてそのことと、この問題の背景との関係とか、運営団体との関係はないのか。そして、今回はこの高市総理の公認の後援会、そういったところが関わっているのかどうか。
まず全体像は、お金の流れを追うところから、始まって、真相をすべて明らかにしないといけないと思います」
■ランナーコメンテーター藤井聡教授「トークンの設計発行運営への関与はありません」などコメント
この騒動をめぐっては、「newsランナー」のコメンテーターである京都大学大学院の藤井聡さんの関与がSNS上で話題になっていました。
藤井さんから次のようなコメントが届いています。
「当方はトークン設計ではなく国民意見集約の専門家として民意を政治に届けるプロジェクトに協力していました
トークンの設計発行運営への関与はありません
先方から意見投稿のインセンティブとしてトークン提案があり、アプリ内トークンであることを確認し協力しました
しかし実際にはアプリと独立に大量発行、名称も未確認と知り大変驚き、遺憾に感じています
結果、高市総理、関係各位にご迷惑をおかけすることとなり、深くお詫び申し上げます」
藤井さんの番組出演につきましては、事実関係が確認されるまで見合わせることになりました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年3月9日放送)