2月23日から26日までの4日間、フィリピン軍は南シナ海で、日本、アメリカとの合同演習を実施した。
筆者はフィリピン軍の艦船に同乗し、台湾近海で初めてとなる演習と、中国軍による追跡で互いをけん制し合う現場を取材した。
スペイン統治時代からの重要拠点へ
FNNなど一部メディアは、インド太平洋地域の防衛協力を強化する3カ国の合同演習「海上協同活動」への取材をフィリピン軍から許可された。我々が向かったのは、首都マニラから車で約3時間の港町、スービックだ。
スペイン統治時代から海軍の重要拠点として栄え、1992年にフィリピンに返還されるまではアメリカ海軍の世界最大と言われた基地もあった。
旧日本軍の占領下だった太平洋戦争時の歴史も残る。海辺に建つ「ヘルシップ(地獄船)記念碑」には、劣悪な環境の輸送船で移送中に犠牲になった連合国軍の捕虜の記憶が刻まれていた。
フィリピン艦船に同乗、3カ国合同演習を取材
2月22日午後、スービックの港の制限エリア内に入ると、フィリピン海軍のフリゲート艦「アントニオ・ルナ」が見えてきた。全長107メートルの大型艦船で、前方に大砲、後方にはヘリコプターが発着できる飛行甲板もある。
2021年に就役し、領有権をめぐり中国と対立する南シナ海のパトロールなどにあたっている。
船内では、訓練で使用する物資が運び込まれ、出港に向けた準備が着々と進んでいた。乗組員を集めた打合せには取材陣も参加し、予定されている演習内容や天候状況のほか、フィリピンと台湾の間に位置するバシー海峡近くまで北上する見通しが周知された。
23日午前、艦船が出港した。航行している状態で甲板にヘリコプターが着陸したり、航空機3機が連携して飛行する演習を実施しながら北上していく。
操舵室では、並走するアメリカのミサイル駆逐艦「デューイ」との通信訓練が進められた。
出港から丸1日が経過した24日午前、船は台湾まで200kmほどのバシー海峡近くまで到達した。アメリカ軍の航空機が周囲を旋回する様子も見られた。
日本からは海上自衛隊のP-3C哨戒機「オライオン」が参加。
フィリピンの戦闘機とともに約3時間にわたり飛行訓練を行った。
台湾近海で中国艦船を探知…
こうした中、操舵室では中国の艦船をレーダーが探知したとの情報が入り緊張が走った。
我々のカメラも、遠くに見える中国船と、その上空を飛ぶヘリコプターを捉えた。
周辺はフィリピンのEEZ=排他的経済水域内なのだが、中国の艦船が追跡してきていたのだ。
中国の監視活動はその後もしばらく確認された。ただ、無線による挑発行為などはなく、フィリピンとアメリカの艦船は洋上で横付けして物資を補給したり、隊列を組んで進む演習を続けた。
26日の演習終了時には、それぞれの艦船の甲板に乗組員らが一列に並んで敬礼し、互いに手を振り合い、友好ムードで締めくくられた。
ASEAN議長国フィリピンが迎える正念場
フィリピン軍は、今後も海上安全保障における多国間の連携の強化を目指している。
合同演習が台湾近海で行われたのは初めてで、「アントニオ・ルナ」のジェニファー・モンフォルテ艦長は成果を強調した上で、「演習中に中国船がEEZ内に侵入して追跡してきた行為は違法で異常だ。我々の演習はEEZ内で行っているので挑発行為ではない」と話した。
一方、中国軍は2025年12月末に台湾を取り囲んで大規模な軍事演習を実施している。
今回の演習については、「フィリピンは南シナ海情勢をかき乱し、地域の平和と安定を損なっている」と非難する声明を発表した。
ASEAN=東南アジア諸国連合と中国は、南シナ海での紛争を防ぐためのルール「行動規範」の策定に向けた交渉を2026年までに妥結する方針を確認している。
フィリピンは2026年、ASEAN関連の国際会議を取りまとめる議長国になっていて、年内に妥結できるかが焦点となる。
筆者は2024年3月にフィリピン沿岸警備隊の巡視船に同乗して南シナ海を取材し、10隻以上の中国船に囲まれ、中国船が放水する緊迫の現場に遭遇した。
その後も両国の衝突は続き、今回の取材でも主張が食い違う現状を目の当たりにした。
国際法上の根拠がない中国の海洋進出を阻止するためには、多国間の演習でけん制を続けるのが最善策なのかもしれない。
(FNNバンコク支局長 田中剛)
