東日本大震災で被災した、宮城・岩手・福島の今を伝える明日への羅針盤。今回のテーマは「観光」。
津波で壊滅的な被害を受けた宮城・南三陸町に10月、海が見えるワイナリーがオープンした。ワイナリーが目指すのは、ワインが作る人々のつながり。

この記事の画像(15枚)

海が見えるワイナリー

宮城・南三陸町志津川の漁港近くにオープンした「南三陸ワイナリー」。

佐々木道彦さん:
きょうは1.5トン前後です

この日、ワイナリーでは収穫したブドウの房から実を分ける破砕作業に追われていた。

佐々木道彦さん:
とても糖度が上がっていいブドウになっていると思います

南三陸ワイナリーの社長・佐々木道彦さん(47)。

佐々木道彦さん:
この南三陸で作るというのが大きな目標だったので、町の海産物とすぐ近くでワインが作られる。町の人も期待していたので、ようやくその体制が整った

震災前は大手楽器メーカーで、新規事業の立ち上げや新商品の開発を手掛けてきた佐々木さん。
ボランティアをきっかけに、被災地を元気にしたいと、2014年 静岡県から仙台市に移住。その後、ゼロからワイン造りを学び、2019年2月「南三陸ワイナリー」を設立した。

佐々木道彦さん:
ボランティアで三陸沿岸部に何度か来たんですけど、震災後の状態を見たとき、既存の産業が復旧するだけでは復興につながらないと思っていた

新工場は震災後、水産加工場として建てられたプレハブを活用。醸造用のタンクのほか、ワインの試し飲みや商品の購入ができるショップも整備された。
コンセプトは「海の見えるワイナリー」。赤、白、ロゼのいずれも食材の味を引き立てるキリっとした辛口が特徴のワイン。

来店客:
お魚もいいですけど、お肉にも合います。豚肉とかにも合うかもしれない

来店客:
シャープな辛みでおいしいです

佐々木道彦さん:
ワインはより地域のことが語られやすいお酒ですし、知りたくなるお酒でもある。それをきっかけに地域のおいしいものと一緒に食べたいとか、どんどんつながっていく

ワインで南三陸町を盛り上げる

2011年の初めには約1万7000人だった町の人口は、2020年9月末の時点で約1万2400人。
南三陸町では震災後、人口の減少が一気に進んだ。
町も、ワインがつなぐ交流人口の増加に期待している。

南三陸町商工観光課 佐藤宏明 課長:
いかに町に滞在していただけるか、観光面で取り組んでいかなければいけないと思います。町を回遊していただく上で、また一つスポットができたということは、今後に期待したい

南三陸町内のこちらの旅館では、新型コロナウイルスの影響で、宿泊者が2019年の同じ時期と比べ、10分の1まで減った。
ワイナリーのオープンを受けて、志津川名産のタコや銀ザケなど、地元の食材をふんだんに使った料理と南三陸ワインが楽しめる宿泊プランを発売。
ワインが観光の起爆剤になることを期待している。

いりやど 千葉知恵 マネージャー:
ワイナリーができたということで、喜びが湧き上がっている。ワインを通した南三陸町の魅力というのは、無限の可能性・発信力があるのではと大変期待しています

佐々木道彦さん:
メインは4種類であとは実験的にやっているので、今後合えば増やしていくということで、トータル7品種

佐々木さんは2020年4月、南三陸町の田束山の中腹にある広さ2ヘクタールの耕作放棄地を町から借り受け、7種類  約2300本のブドウの苗木を植えた。
ブドウの実がワインに使えるまであと3年はかかるが、志津川湾が一望できるこのブドウ畑を、ワイン作りを一から体験できる観光スポットにするのが目標だ。

佐々木道彦さん:
ワイナリーとしても、南三陸の一つの名勝地として、いろんな人に来ていただいて、この気持ちよさを感じてもらえればなと。それに食事とワインで過ごしてもらえれば、新たな南三陸の楽しみが増えるのではないかと思っています

南三陸町で広がる、人のつながり。
新しい観光の魅力が生まれようとしている。

(仙台放送)