医療保険制度改革が加速している。

今年8月からは「高額療養費」の自己負担額の上限が引き上げられ、来年3月までには「OTC類似薬」の特別料金の徴収がはじまる可能性が高い。

いずれも、患者負担が増える“医療費の値上げ”だ。

「OTC類似薬」とは、医師から処方される「保険適用の薬(処方箋でもらう薬)」のこと。同じような成分のものが「市販薬」でも売っているものを指す。

医療機関で処方される医薬品の中で、風邪薬や胃腸薬、湿布など、比較的軽い症状に使われる薬を中心に、広く利用されているものだ。

自民党と日本維新の会の与党は、増え続ける医療費を削減し、現役世代の社会保険料の負担減を目指して、この「OTC類似薬」に4分の1の特別料金を徴収することで合意。

来年3月までに77成分1100品目の窓口負担を値上げするとしている。

与党は様々な場面で『4分の1(25%)多くご負担ください』と強調しているが、この見直しに反対している全国保険医団体連合会によると、実際の負担増はおよそ2倍。

そして、対象の薬は『77成分から最終目標を1000成分とし拡大していく』ことが、既に与党内で協議していたという。

どういうことか。詳しく聞いた。

■負担増は1.25倍(4分の1)ではなく1.6倍以上

【全国保険医団体連合会 本並省吾事務局次長】
来年3月から実施される可能性が高いOTC類似薬の値上げについて、「現在、窓口で支払っている金額の4分の1(25%)が増える」と思っている方は多いのではないでしょうか。

しかしこれは誤りです。実際の患者負担は“25%増(1.25倍)”ではなく“60%増(1.6倍)”以上になります。なぜなら、「4分の1(25%)」は“薬価”に対してだからです。

例えば「薬価1000円」の薬を処方されたとします。

現在は、3割負担の人が窓口で払う金額は300円です。

見直しが実施されれば、
追加負担となる“特別料金”は「薬価1000円」の25%、つまり250円です。

そして残りの750円が保険対象となるので、
【750円×0.3=225円(保険対象分)】+【OTC類似薬“特別料金”250円】
という計算になり、窓口で支払う金額は475円になります。

2割負担の人は200円が400円。1割負担の人は100円が325円になるのです。

計算が少々ややこしく、政府も「4分の1(25%)」という数字のみを強調しているため、「300円が375円(1.25倍)に値上げされる」と勘違いをされているケースが多いと思われます。

値上げが予定されている対象に薬は、ロキソニン(錠剤・湿布)などの痛み止めや、アレグラなど花粉症治療薬、ヒルドイドやリンデロンなど皮膚疾患の保湿剤やステロイド剤など、日常的に幅広い疾患で使われている薬です。

この値上げによる家計への負担は決して少なくありません。

■与党は「対象“77成分”から“1000成分”へ拡大」を協議 さらに負担増の可能性

私たちが入手した資料によると、OTC類似薬の見直しについて、自民と維新が「最大1000成分(約7000品目)、2兆円の削減プラン」を協議していたことが分かりました。

これは『全てのOTC類似薬を保険から除外し、100%患者負担にする』ということです。

昨年12月の自民・維新の政調会長間合意で、来年3月から「77成分(約1100品目)のOTC類似薬に対して薬剤費の4分の1の特別料金を徴収する」ことが決まりました。約900億円の削減を見込んでいます。

このことは大きく報道され、皆さんご存じかと思います。

しかし実はこの時の政調間合意ですでに「令和9年度以降に対象範囲を拡大していく」ことと、「患者の追加負担割合の引き上げも検討する」ことも合意されていたのです。

対象薬剤の拡大については、最終的には約1000成分(約7000品目)。OTC類似薬のすべてです。

負担割合の最終目標は10割、これは保険適用から外れることを意味します。

この非公開資料によると、OTC類似薬は約1000成分あり、薬剤費は1.2兆円。
値上げによる医療費削減効果は、「患者から4分の1の特別徴収をした場合は5300億円」、「患者から1分の1の特別徴収(自己負担10割)した場合は2兆円」の削減が見込まれると書かれています。

1.2兆円の薬剤費に対し、2兆円の削減効果というのは、「負担増によって医療機関や保険薬局で処方してもらう人が減少する」ことを上乗せして試算したことによります。
(全国保険医団体連合会 本並省吾事務局次長)

■「スイッチOTC」を促進 健康被害の懸念が広がる…

【中川直人さん(薬剤師/全日本民医連理事/メディカプラン京都理事長)】
現在、認可されている薬品は約33000品目で、大きく分けて下記の3つに分類されます。

(1)OTC医薬品:処方箋不要な市販薬。約13000品目。
(2)OTC類似薬:原則、処方箋が必要な医療用医薬品。約7000品目。
(3)処方箋医薬品:処方箋必須の医療用医薬品。約13000品目。

(1)薬局やドラッグストアなどの“店頭で買える薬”を『OTC医薬品』といいます。いわゆる『市販薬』です。

(2)『OTC医薬品』と有効成分や効能がほぼ同じで、原則、医師から処方されるのが『OTC類似薬』です。(1)(2)の違いは「医師の処方が必要か不要か」と「自費か保険適用か」です。

(3『処方箋医薬品』は、医師の診断と処方が必ず必要な薬剤です。使用には高い安全管理が必要です。

政府は医療費削減のため、「スイッチOTC」化を推進しています。これは医師の処方が必要な医療用医薬品のうち、有効性と安全性が改めて認められたものを、“医療用から市販薬”へスイッチすることです。

これによりロキソニン(解熱鎮痛剤)や、ガスター、タケプロンなど胃潰瘍の治療にも使われる薬が、店頭で買えるようになりました。

しかし、安全性が高いといっても、実際には多くの重篤な副作用が報告されており、決して軽く考えてよいものではありません。

例えば、頭痛や生理痛などで幅広く使われているロキソニンは、本来は相当強い薬です。この薬に対してアレルギーを持っている人は命に係わることが起こりますし、体質や間違った飲み方などで胃や腎臓をいためてしまう危険もあります。

前述のとおり、政府はスイッチOTC化を強く推進しており、インフルエンザの薬として知られる「タミフル」も例外ではありません

現時点では医師会等からの反対意見が多かったのですぐにはならないと思いますが、インフルエンザの薬が医師の処方なしでの国民の自己判断により買えるようになるのはかなり危険なことではないかと思います。

■永遠に健康でいられる人はいない

来年3月から予定されているOTC類似薬負担増の影響は、大きくは風邪や花粉症、頭痛、腰痛などです。

市販薬を利用している方も多いでしょうし、若い方や健康な人は、今は実感としてないかもしれません。また、OTC類似薬を保険から外す代わりとして提示されている、社会保険料の軽減のほうが今はとても魅力的に思えるかもしれません。

しかしずっと病院に行かず、薬を飲まない人は少ないのではないでしょうか。

このままでは、どんどん適用範囲が広がって、個人の負担が増える。自分たちが老いるころにはとんでもないことになっていることを分かって欲しいと思います。

(中川直人さん 薬剤師/全日本民医連理事/メディカプラン京都理事長)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。