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プレスリリース配信元:公益財団法人スプリックス教育財団
スプリックス教育財団 基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025
2026年2月12日
概要
公益財団法人スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施しました。本報告では、基礎学力の一部である計算力と世帯年収等のSES(家庭の社会経済的背景)がどの程度相関があるのかを、6か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国、日本)を対象に調べました。調査結果のポイントは以下の通りです。調査結果のポイント
(1) 計算力と世帯年収:「基本的な計算力」でも世帯年収と相関
調査を行った6か国において、世帯年収が高い層は、計算力も高い層が多いという傾向が確認できました。学力と世帯年収に相関があることはこれまでの調査でも報告されてきましたが、計算力の時点で世帯年収に相関があることがわかりました。
(2) その他のSES:親の学歴、本の数なども計算力と相関
調査を行った6か国において、世帯年収以外にも学力に影響があるとされる指標についても相関を確認しました。その結果、「教育費」「保護者の大卒率」「家庭で保有する本の数」についても計算力との相関が見られました。これは、家庭の経済資本や文化資本が子の基礎学力に影響を与えている可能性を強く示唆しています。
(3) 進学希望と世帯年収:進学意識もSESとの相関があり、格差の再生産に懸念
世帯年収が低い層よりも世帯年収が高い層の方が、大学以上に進学する意識が親子ともに高いことがわかりました。家庭環境の差が進路にも影響しており、格差を再生産している可能性があります。
調査の背景
これまでの研究では、学力格差の背景にSES(家庭の社会経済的背景)があることが指摘されてきました。SES(家庭の社会経済的背景)には、経済資本として世帯年収や教育費、文化資本として親の学歴、本の数などがあり、学力テストの点数と相関があることが知られています。例えば、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2023)でも、家庭の社会経済的地位と小学4年生の成績との間に強い関連性が確認されています。日本においても、全国学力・学習状況調査(2023年)において、家庭の社会経済的背景が低い児童ほど正答率が低い傾向が示されています。高度な学力ではなく、基礎学力の段階においてもSESの影響が見られるのでしょうか。今回は基礎学力の一部である計算力に着目しました。計算力とSESの相関を明らかにすることで、どういった家庭環境要因が基礎の部分から強く影響しているかを把握できます。その上で、今後SESを克服するレジリエンス(困難に立ち向かう力)には何があるのかを探る足がかりとしたいと考えています。
調査方法

留意事項
・ 学校調査(日本)では、回答者はランダムに抽出されたものではありません。そのため、便宜上「国名」として記載していますが、特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
・ 日本のデータは匿名性保持のため、正確な調査対象者数を非公表としています。
・ 本報告では、日本の調査結果をインターネットパネル調査の5か国合計(以下パネル5か国と記載)との比較を中心に報告しています。
・ 本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。
調査結果
(1) 計算力と世帯年収:「基本的な計算力」でも世帯年収と相関がある基本的な計算力と世帯年収に相関があるのかを、計算テストを実施して検証しました。図1(a)および(b)は、パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と日本における小学4年生の世帯年収層別に見た計算テストの得点層(計算力層)の占有割合の変化を示します。世帯年収や計算力が国による差が大きいため、各国内での相対的な経済力・計算力を比較できるよう、世帯年収層および計算力層を国別学年別にそれぞれ高・中・低、A・B・Cの3層に分類しています。

図1. 世帯年収層別にみた計算テストの得点(計算力)層の占有割合の変化(小4)計算力の高い順にA・B・Cに分類。 (a) パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)、(b) 日本。
パネル5か国、日本の双方において、世帯年収が低いほど計算力がC層(低め)の割合が高く、世帯年収が高いほど計算力がA層(高め)の割合が高いという典型的なSES(家庭の社会経済的背景)の相関が見られました。いずれも、統計的に有意な結果となりました(p < 0.05)。
特に日本においては、世帯年収が高い層の56%が計算力が高いA層に含まれており、「高い計算力を持つことと世帯年収の高さ」に強い相関があることが示されました。
(2) その他のSES:親の学歴、本の数なども計算力に相関がある
世帯年収と計算力の相関は、直接的な影響ではなく間接的な影響である可能性もあります。世帯年収以外にも一般的に学力に相関があるとされる「教育費」「本の数」「親の学歴」についても分析を行いました。
図2の6つのグラフは、パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と日本における小学4年生のSES(家庭の社会経済的背景)別に見た計算テストの得点層(計算力層)の占有割合の変化を示します。ここでは、先ほどと同様に計算力層を国別学年別にA・B・Cの3層に分類しています。また、SESとして以下の通り分類しています。
● 教育費:「習い事にかけている1か月あたりの費用」を国別学年別に高・中・低
● 本の数:家庭に所有する本の数を、「本箱2つ分以上」「本箱1つ分程度」「本箱1つ分未満」で多・中・少
● 親の学歴:保護者の学歴が大学または大学院である人数で2・1・0。無回答、その他、不明を除く。

図2. SES(家庭の社会経済的背景)別にみた計算テストの得点(計算力)層の占有割合の変化(小4)計算力の高い順にA・B・Cに分類。(1)教育費は、国別・学年別に高・中・低の3層に分割。(2)家庭の本の数は、多(本箱2つ分以上)・中(本箱1つ分程度)・少(本箱1つ分未満)の3層に分割。(3)親の学歴は、両親ともに学歴の回答があったもののうち、大学または大学院と回答した親の人数。無回答、未定・わからないを除外。 (a) パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)、(b) 日本。
パネル5か国、日本の双方において、いずれの指標においても「低い/少ないほど計算力がC層(低め)の割合が高い」「高い/多いほど計算力がA層(高め)の割合が高い」という典型的なSES(家庭の社会経済的背景)の相関が見られました。いずれも、統計的に有意な結果となりました(p < 0.05)。
特に日本では、「教育費が高ければ高いほど子の計算力が高い」「両親ともに大卒以上であれば子の計算力が高い」傾向が強く、両親ともに大卒の場合は計算力が高いA層の割合が62%に達し、両親とも非大卒の場合(24%)と比較して38ポイントもの差が見られました。これは、保護者の学歴や教育にかける熱意が教育費へと反映されて、子どもの計算力に影響している可能性を示唆しています。
(3) 進学希望と世帯年収:進学意識もSESとの相関があり、格差の再生産に懸念
世帯年収といったSES(家庭の社会経済的背景)が影響するのは、計算力のみではなく親子の学習に関わる意識とも関係している可能性があります。その一例として、子ども自身が大学以上に進学するつもりがあるか、保護者が子に大学以上に進学して欲しいかといった進学希望と世帯年収の相関を見てみます。図3(a)および(b)は、パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)と日本における小学4年生の世帯年収層別に見た大学以上への進学を希望する割合の推移を示します。世帯年収層は図1と同様に国別学年別にそれぞれ高・中・低の3層に分類しています。

図3. 世帯年収層別にみた大学以上への進学を希望する割合の変化(小4)子ども・保護者ともに「大学または大学院」まで進学したい・して欲しいと回答した割合を示す。母数からは未回答、未定・わからない、その他は除外した。 (a) パネル5か国(アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国)、(b) 日本。
パネル5か国、日本ともに、保護者と子ども両方において「世帯年収が高いほど、高い学歴を希望する」傾向が見られました。ただし、パネル5か国は非常に高い有意性(p<0.01)を示したものの、日本では統計的有意性は示されませんでした。
日本は統計量が少ないこと、ごく一部の自治体における調査であることや、大学進学費用の懸念が平均的な世帯にも存在すること、日本の小学4年生は「進路が未定」とする割合が極端に高いこと(44%。今回は母数から除外。詳細は第7回のニュースリリースをご参照ください)等様々な要因が考えられます。
最終的な学歴の希望といった意識についても、世帯年収と相関があることが示されました。これは、SES(家庭の社会経済的背景)が基礎学力や将来の学歴に影響している可能性を示唆しており、ひいては格差の再生産になりうることを示しています。
まとめ
一般的な学力のみならず、基礎学力の一部である計算力の段階においても、世帯年収や教育費等のSES(家庭の社会経済的背景)が影響している可能性が示唆されました。ただし、パネル5か国と日本では一部振る舞いが異なることから、どういった文化背景なのかによりSESが計算力に与える影響の程度は変化すると考えられます。また、SESは親子ともに大学進学への意識に影響を与えており、SESが高い家庭の子が高い学歴を持ち、その子がさらにSESが高い家庭を築く、といった格差の再生産が連鎖して起こる可能性が考えられます。
しかしながら、SESが低い家庭においても高い計算力を示す子どもが一定数存在します。今後は、SESを克服した(レジリエンス)層に着目し、SESによらず計算力を高める意識や習慣について詳細な分析を進めてまいります。
調査の詳細には、パネル5か国の中学2年生のグラフを掲載しています。ご参照ください。本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第9回目の報告です。今後もスプリックス教育財団では、子どもの基礎学力に関して様々な分析を進めてまいります。
調査の詳細(PDF)
備考:計算テストの実施概要
本調査で実施した計算テストの形式は、参加国によって内容が異なります。- インターネットパネル調査のグループ:TOFASの問題を一部抜粋した短縮版(全32問)を実施しました。回答形式は4肢択一の選択式です。
- 教室で参加したグループ:学校の教室において、国際基礎学力検定TOFASの計算テストを受験しました。回答形式は、選択式と記述式を併用しています。
そのため、両グループ間で正答率を直接比較することはできません。
出題される問題は、学年に応じた基礎的な計算問題です。例えば、小学4年生では「43×2」、中学2年生では「(5x−9)−(−x−4)」といった内容が含まれます。
なお、TOFAS(国際基礎学力検定)の詳細は下記よりご確認ください。
TOFAS - 国際基礎学力検定
備考:関連調査一覧
- TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)2023- 全国学力・学習状況調査(日本)令和5年度(2023年)
■公益財団法人スプリックス教育財団 概要
公益財団法人スプリックス教育財団は、社会的支援を必要とする学生に対して奨学金の支給を行うほか、教育に関する調査研究を行いその成果を広く一般に公表し、もって青少年の健全な育成に寄与することを目的としています。
名 称:公益財団法人スプリックス教育財団
設 立:2023年4月
代表理事:常石 博之
事業内容:奨学金の支給、調査研究
財団HP :https://sprix-foundation.org/
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