アルペンスキーのメダリストが挑戦する夏季競技

アルペンスキー銀メダリスト・森井大輝選手。

2002年のソルトレイクシティパラリンピックからアルペンスキー競技で、5大会連続でパラリンピックに出続けている。ワールドカップでは3度のシーズン総合王者だ。

そんな森井選手が今、全く違う競技の『パラパワーリフティング』に挑戦している。

 
 
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トレーニングを「フィットネス」と言われて奮起

練習場所を訪れてまず驚くのは腕の太さだ。ベンチプレスの要領でバーベルを挙げるパワーリフティングの練習で鍛えたのかと思いきや、「チェアスキーのトレーニングでこの腕になりました」と笑った。

世界が認めるチェアスキー界のトップ選手・森井選手は現在、冬季競技のアルペンスキー座位の部から、夏季競技のパラパワーリフティングへ転向。2020年東京パラリンピック出場を目指してトレーニングを続けている。

 
 

決意した時期は2018年平昌パラリンピックの前。トレーニングで取り入れていたベンチプレスで重いバーベルを挙げることが得意だったという。

しかし、「僕が挙げているときに、大谷コーチに『君が今までやっていたのはフィットネスだね。僕がこれから本当のトレーニングを教えてやるから』って言われたことに、ちょっとカチンときて…」と話すように、そこからパラパワーリフティング・大谷進トレーニングコーチとのタッグが始まった。
 

「彼が100%になった時、絶対に輝く」

 
 

“フィットネス”発言について大谷コーチは、「元々パラパワーの素質はあったのを分かっていましたから」と笑う。さらに「今2年後の東京2020に向かって、パラパワーリフティング専門でやっています。でもまだ50%も行ってない感じかな。彼が100%になった時、彼は絶対に輝くと思います」と、森井選手の才能に全幅の信頼を置く。

一方、森井選手はこれまでやっていたチェアスキーとは大きく違う点があると話す。
「アルペンスキーの場合は、挑戦してタイムを飛躍的に上げることができたんですが、パラパワーの場合は、練習で挙げている重り以上は絶対に挙がらないんですよね」

トレーニングで挙げたウエイト以上は挙がらない、これが森井選手が練習に熱を入れる理由だ。

取材に訪れた日、森井選手は135kgに挑戦、そして成功していた。
この135kgという重さ、試合で挙げれば日本ランキングトップになることができる。
 

冬季メダリストではなく新人として目指す夏季メダル

 
 

森井選手は、2競技を行う理由について、「チェアスキーとパワーリフティング、一瞬にかける集中力はどちらも同じです。スキーは筋肉があって体重が重い方が滑走のスピードが上がるので、今のトレーニングもチェアスキーに役立ちます」と明かす。

さらに、夏冬競技への相乗効果だけでなく、「自分がさまざまな競技に挑戦し続けることで、障がいを持った子供達に夢を持ってもらいたい」という願いも込められている。

目指すはやはり2020東京パラリンピックだ。

「出るからにはやっぱり入賞だったりの目標を掲げているんですけど、もう後2つ3つギアを上げなくては行けないので、頑張ります」と、控えめに話す森井選手だが、ベテラン“チェアスキーの森井大輝”としてではなく、新人“パワーリフティングの森井大輝”としてメダルを狙う。
 

森井大輝(モリイ・タイキ)

 
 

1980年7月9日生まれ 38歳 トヨタ自動車所属。
4歳からスキーを始める。高校2年生の時に交通事故で脊髄を損傷。
1998年長野パラリンピックを病室で見て、チェアスキーを始める。
パラリンピックはアルペンスキー競技で02年ソルトレイクシティ大会から5大会連続出場。
最高成績は06年トリノ大回転、10年バンクーバー滑降、14年ソチのスーパー大回転、18年平昌の滑降で銀メダル。
ワールドカップでは3度のシーズン総合王者。
20年東京ではパラパワーリフティングで夏季大会出場を狙う。

(PARA☆DO!:毎週水曜夜10時54分放送
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