低体重で生まれた我が子 自分を責める日々…

1128グラムで生まれた晃(あきら)くん。妊娠8ヵ月での突然の出産だった。
お母さんの希望(のぞみ)さんは、出産6日目に先に退院した。

出生時の晃くん
出生時の晃くん
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母親の漆畑希望さん;
記憶もあんまりなくて、突然破水しまって。自分の気持ちも追いつかないし…。
(晃くんに)会いに行くことしかできなかったので。

晃くんの成長記録ノート。
ここには、お母さんの想いがびっしりと記されていた。

漆畑希望さん ;
晃に伝えたいことを忘れちゃいそうだから、書いておこうかみたいな。
いっぱい注射器とかもあるし…でも小さくても泣くんですよ。

晃くんの生まれた広島市民病院総合周産期医療センター。こちらでは、様々な理由で小さく生まれた赤ちゃんを見守っている。
県内で1年間に生まれる赤ちゃんは約2万3000人~4000人。
そのうち低出生体重児は約2000人。
更におよそ300人が、晃くんのように1500g未満で誕生している。

広島市立広島市民病院:総合周産期母子医療センター・西村裕主任部長;
まだはっきりしていない部分があるんですが、大きく分けると2つあると思います。
1つは、母体側の要因ですね。例えばお母さんの栄養状態でありますとか、お母さんの年齢でありますとか。
2つめは本人、赤ちゃん自身の原因ですね。何か体重が大きくなれない病気を生まれつきお持ちであるとかですね。

ただでさえ不安な出産。小さな赤ちゃんを産んだお母さんの精神的負担は、決して軽くはない。

漆畑希望さん;
ずっと自分を責めて…。何いけなかったんだろうとか。
ごめんね、ごめんねって、晃に申し訳なくて。小さく生んでしまったことが、普通に生んであげられなかったことが申し訳なくて、ずっとごめんねって言った気がします。
“今となっては”なんですけどね。今は元気なんで…。

晃くんは現在5歳。お兄ちゃんと妹に囲まれ元気に成長している。

漆畑希望さん;
よかったね。

希望さんの夫;
(当時は)心配しかなかった。

悩むお母さんにエールとなる“サブブック”

あの時の辛い経験は、今も忘れることはない。
この日集まったのは、小さく生まれた子どもたちとそのお母さんたち。
漆畑さんは2年前、「早産児・低体重児・未熟児ちゃんママ交流サークル・しずくの木」を立ち上げた。月に1回、集まっている。

漆畑希望さん;
どうしてこのサークルがあるかというと、ここに来たら、他の正期産(予定日近くでの出産)で生まれた子たちと比べなくていいんです。
みんなやっぱりちょっと発達がゆっくりだったりするから、市のオープンスペースとかに行くと、やっぱりちょっと遅れを感じてへこんだりというのがあるんですけど…。
でも、ここに来るとそれを感じなくていいから。

妊娠をすると全員が受け取る母子健康手帳。
この中には、成長ごとの特徴を「はい」か「いいえ」で答える欄がある。
「3カ月を過ぎた頃、首が座る」「半年を目途に寝返りをうつ」…早く生まれた子の多くは、この基準より発達が遅れる。
質問の答えは「いいえ」ばかりになり、焦りや気落ちにつながると言う。
けれど、ここは比較をしなくてもいい特別な場所だ。

参加したお母さんA;
うちの子の、前の月よりできるようになったことに気づいてくれて、「すごいはいはいしてるね」とか、そういうことを一緒に喜んでもらえるのがすごく嬉しいというか。心がほっとできる場所です。

参加したお母さんB;
この子が生まれたのが551グラムで…。話を聞いてもらって心が救われて。
同じくらいに産まれたお兄ちゃんが大きく育っているのを見て、「この子もきっと大丈夫、大きくなってくれる」と思えたことがすごく助かりました。

そんな「しずくの木」のメンバーが、今、注目しているものがある。

漆畑希望さん;
静岡県で作られている、早く小さく生まれた赤ちゃんのパパとママのための“母子手帳のサブブック”として発行されているものです。

去年、静岡県で誕生した「リトルベビーハンドブック」。
小さく生まれた子を育てる親へ、先輩ママからのアドバイスが記され、その子のペースで成長を記録できるようになっている。

参加したお母さん;
成長曲線が、ゼログラムから書けるんです。これが普通の母子手帳は1000gからしか書けないので、枠外になっちゃう子とかもやっぱりいて。
ゆっくりでいいんだよって、この本自体が言ってくれている感じがしますね。

参加したお母さん;
生まれてすぐにこれを病院からもらえると、すごい心は軽くなると思います。

静岡県に続き、今年度からは名古屋市、埼玉県川口市でも発行され、福岡県や岐阜県でも準備中という。
医師はどう見ているのだろうか?

広島市立広島市民病院:総合周産期母子医療センター・西村裕主任部長;
非常によくできていて、これがあるとその子の目線でお母さんも赤ちゃんを見れるのではないか。検診がしやすくなるのではないかと思います。
小さい子に即したそういうものがあれば、我々の方も必要なことを的確に指導できるのではないかと思っています。

広島県での発行に向け、お母さんたちは動きだした。

漆畑希望さん;(県庁で要望書提出)
「リトルべビーハンドブック」広島版作成に関する要望書を持ってこさせていただきました。よろしくお願いします。

広島県健康福祉局子育て・少子化対策課・伊東典代課長;
子育て家庭に関する支援の全体像を今、検討しているところなんで、そういった中にあわせて小さく生まれた赤ちゃんへの支援も検討できればとは思っております。

リトルベビーのお母さんたちが、未来のリトルベビーのお母さんを応援するための第一歩だ。

漆畑希望さん;
これがあることで、孤独を感じなくてすむお母さんが1人でも多くなるように(「リトルべビーハンドブック」広島版を)作りたいなという想いは強くなりました。
一歩ずつ着実に進んでいると思うので、それをやっていきたいと思います。

(テレビ新広島)

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