揺れる福岡県議会。県議会議長に対する議長職の辞職勧告決議案が提案されたが、これを採決しないように求める動議が出て、決議案の採決は見送られた。自民党の議員たちにとっては“踏み絵”をぎりぎりで回避したかたちとなった。

辞職決議案提出 各会派は対応に苦慮

8月17日、取材陣の質問に答えることなくエレベーターへと乗り込んだ福岡県議会の蔵内勇夫議長(72)。その蔵内議長に対して8月14日、議長職の辞職を求める決議案が提出された。

臨時議会に臨む蔵内議長(8月17日)
臨時議会に臨む蔵内議長(8月17日)
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「『蔵内議長が怖い』で終わらせてはいけません。蔵内議長は最早、議長としての信任を失っていると私は判断しています」。辞職勧告決議案を提出したのは、県議会の正・副議長を巡る“金銭授受”疑惑を告発した吉松源昭・県議(58)だ。

辞職勧告決議案を提出した吉松県議(8月14日)
辞職勧告決議案を提出した吉松県議(8月14日)

決議案に賛成するのか反対するのか。“踏み絵”ともいわれる状況に各会派は対応に追われた。

公明党の新開昌彦・会長(69)は「我々としては地域の皆さんとか、いろんなことで声を頂いたなかで判断した。賛成に回る」と議員10人の公明党は全員が賛成することを確認した。

公明党は議員10人全員が賛成(8月17日)
公明党は議員10人全員が賛成(8月17日)

また議員20人の民主県政県議団を率いる原中誠志・会長(67)は「県議会の信頼回復、及び議長の進退については、自らがしっかりと考えて決断をして頂きたいという内容です」と蔵内議長へ進退に関する要請書を提出した。

議長へ要請書を提出した民主県政県議団の原中会長(8月17日)
議長へ要請書を提出した民主県政県議団の原中会長(8月17日)

最大会派の40人の議員を抱える自民党は、16日から断続的に協議を繰り返したものの、賛成、反対の意見が出て議論は紛糾、方針をまとめることはできなかった。

蔵内議長の元秘書の“若手”県議が「動議!」

現在、議場が工事中のため、いつもとは違う場所で始まった臨時議会。

福岡県議会・臨時議会(8月17日)
福岡県議会・臨時議会(8月17日)

「諸問題の渦中にあって、県議会のトップである議長がとった行動の数々は、その職責に相応しいと到底、言えるものではありません」。全てが異例のなか、吉松県議が決議案の提案理由を説明した。

決議案の提案理由を説明する吉松県議(8月17日)
決議案の提案理由を説明する吉松県議(8月17日)

これに対し、予想していなかった動きが自民党県議団のなかから出た。

「動議!」。自民党の当選1回の林泰輔・県議(51)が手を上げる。林県議は、かつて蔵内議長の秘書を務めていた県議だ。

「動議」を出した林県議(8月17日)
「動議」を出した林県議(8月17日)

「ただ今、決議案について説明がなされましたが、これはたった今、上程されたものであり、我々議員はその趣旨について十分な理解には至っておりません。従ってこの重大な決断を下すには、この提案内容、時間共に不十分であり、採決を図ることは極めて拙速であります」と決議案について採決しないよう求める動議を提出した。

「採決を図ることは極めて拙速」(林県議 8月17日)
「採決を図ることは極めて拙速」(林県議 8月17日)

すると、この決議案提案の審議直前に副議長に選出された自民党の板橋聡・副議長(59)が「動議は成立致しました。本動議をただちに議題とし…」と発言。

「動議は成立致しました」(板橋副議長 8月17日)
「動議は成立致しました」(板橋副議長 8月17日)

すかさず吉松県議は「議長、議長、議長、賛成かどうか起立で採決しないとダメでしょう!」と反論した。

「起立で採決しないとダメでしょう」(吉松県議 8月17日 )
「起立で採決しないとダメでしょう」(吉松県議 8月17日 )

すると板橋副議長は「決議案の採決を中止することに賛成の議員は起立願います。起立多数であります。可決されました」と一気に事態を進めた。

「起立多数であります」(板橋副議長 8月17日)
「起立多数であります」(板橋副議長 8月17日)

この動議に関する採決は賛成多数で可決され、蔵内議長の辞職決議案の採決は、ギリギリのところで取りやめとなった。

動議に関する採決は賛成多数で可決(8月17日)
動議に関する採決は賛成多数で可決(8月17日)

「自民党内で圧力がかかってますよね」

「多くの有権者の皆さんが見に来ているわけですから、それは正面から受け止めるべきだったと思います。賛成の討論の申し入れをした人が、ほんの数時間後に取り下げる。これは誰が考えても圧力があってますよね、自民党内で圧力がかかってますよね。こういうことがダメだと言っているんですよ」(決議案を提出した吉松県議)。

「自民党内で圧力がかかってますよ」(吉松県議 8月17日)
「自民党内で圧力がかかってますよ」(吉松県議 8月17日)

「私自身は、最初からこれをやるべきではないと思っていました。議長という職にある者を下ろすかどうかという話ですから、それをもって他の全ての議員が“踏み絵”を踏まされるみたいな話になることは、私は違うと思う」(動議を出した林県議)。

「“踏み絵”を踏まされるみたいな話は違う」(林県議 8月17日)
「“踏み絵”を踏まされるみたいな話は違う」(林県議 8月17日)

記者団に囲まれた蔵内議長。第三者委員会や政治倫理条例に目途がつけば辞職すると説明したのかと問われ「従来からそう言ってるから、僕は。変わってません」と応えた。

「僕は変わってません」(蔵内議長 8月17日)
「僕は変わってません」(蔵内議長 8月17日)

「知事が論評することは適切ではない」

こうした動きについて福岡県の服部誠太郎・知事(71)は「県民の皆さまからの一票をもって負託を受けた県議会議員の皆さまが、それぞれに責任をもって判断された結果であり、これに対して知事が論評することは適切ではないと考えます」とコメントを出した。

「知事が論評することは適切ではない」(服部知事 コメント)
「知事が論評することは適切ではない」(服部知事 コメント)

傍聴した県民に話を聴くと「ここまで潰されるとは思っていなかったので、せめて審議には入らせて欲しかったと思います」と話す女性や「僕、きょう初めて来たんですけど、この状況で税金を納めたくない、それが本音です」と話す男性など、辛辣な答えが聞かれた。

「この状況で税金を納めたくない」(傍聴に訪れた県民 8月17日)
「この状況で税金を納めたくない」(傍聴に訪れた県民 8月17日)

議員たちが態度の表明を避けたかたちの採決中止。しかし県民からの議会への不信感がさらに高まることは、避けられそうにない。

傍聴席(8月17日)
傍聴席(8月17日)

蔵内議長 議長職辞任の意向

また複数の関係者によると、蔵内議長は、金銭授受疑惑を調査する第三者委員会の設置や政治倫理条例を制定した上で、9月議会を目途に議長職を辞任する意向だという。臨時議会後の自民党県議団の議員総会で明らかにした。

9月議会を目途に議長職辞任の意向を表明した蔵内議長
9月議会を目途に議長職辞任の意向を表明した蔵内議長

しかし蔵内議長は、引き続き疑惑の当事者であることは変わらない。徹底した調査と解明が求められる。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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