国内で1万人以上の患者がいるとされる指定難病「多系統萎縮症」について、東京大学は症状の進行を抑える治療法を世界で初めて開発したと発表した。
指定難病の「多系統萎縮症」は立ちくらみや排尿排便障害などの自律神経症状や、手足がこわばり、体が動かしづらくなるなどのパーキンソン症状など、様々な神経障害をきたす進行性の疾患。
国内に約1万2000人の患者がいるとされ、これまでに原因は解明されておらず有効な治療法も見つかっていないが、東京大学は「コエンザイムQ10」の投与により病気の進行を抑える治療法を世界で初めて開発したと発表した。
この記事の画像(2枚)東京大学名誉教授の辻省次教授は、「早く実用したい。神経難病について抑制する効果が見いだせたのは大きい成果」と話す。
東京大学は、多系統萎縮症の患者の体内で「コエンザイムQ10」の量が低下していることを発見し、患者129人を2つのグループに分け、48週間にわたり、1つのグループには「コエンザイムQ10」を投与し、別のグループには有効成分を含まないプラセボ(偽薬)を投与した。
その結果、「コエンザイムQ10」を投与されたグループは、病気の進行速度が約25%抑制されたということだ。
今回の臨床で投与された「コエンザイムQ10」は市販のサプリメントの含有量より大幅に多く、辻教授は11日の会見で「市販のサプリメントなどにより、医薬品ではない形でけた違いに多い高用量を接種することは懸念される」と注意を呼びかけ、医薬品として早期の実用化を目指したいとしている。