宇宙を舞台にした、ビジネスコンテストが開かれた。
今まで“地球の外”の遠い世界として捉えられがちだった宇宙が、衛星は今や身近なツールになりつつある。
コンテストの様子を取材し、専門家に、宇宙ビジネスを取り巻く状況を聞いた。

進む民間の“衛星活用ビジネス” 高まるポテンシャル

「宇宙データの力を活用して、持続可能な農業をサポートします」
「日本の宇宙利用産業の機会創出に貢献したいと考えています」

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宇宙を舞台にした事業を、熱く語る参加者たち。12日、NEDO(ネド)=新エネルギー・産業技術総合開発機構が開催した、宇宙ビジネスをテーマにした賞金コンテストの様子だ。

東京都市大学 理工学部 柳 圭亮さん:
「残土発見くん」は、“宇宙の目”、つまり衛星データを使って、自治体の対策をサポートします。

東京都市大学の学生が提案したのは、残土の不法投棄を早期発見するシステム。衛星データから得た様々な情報を活用し、地表の高さなどの変化を読み取ることで、残土が不法投棄された場所を“見える化”するという。

そして、最優秀賞(アイデア部門)を受賞したのが、宇宙機器の輸出入などを行う企業「
Space BD」が提案した、「災害対策ソリューション」だ。

この技術は、過去の災害記録や気象データなどを基に、AIが数日から数週間先に発生する災害を予測。その“災害発生の可能性が高い場所”に観測衛星を向かわせ、事前に被害状況を把握する事が出来るという。

Space BD 事業開発部・藤村 将成 博士:
我々は、自社で気象衛星を開発し、打ち上げます。今まで国主導であった気象衛星市場を、民主導の市場を新しく作っていく、このような大きなチャレンジを考えている。

様々な可能性を秘める宇宙ビジネス。そのポテンシャルは近年、高まっているという。

経産省 製造産業局 宇宙産業室・伊奈康二 室長:
衛星開発は、元々政府が主導する事が多かったが、近年、ベンチャー企業・中小企業などによる、小型の衛星を活用したビジネスが進んできている。
ビジネスのポテンシャルは非常に高いが、様々な分野での衛星データの利用を試していくということがすごく大事になっていると感じている。

20年後には市場規模145兆円 “活用の理解”深めるため官民が協力を

「Live News α」では、今回のイベントにモデレーターとして参加された、デロイト トーマツ グループの松江英夫(まつえ・ひでお)さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
これから宇宙ビジネスは、どのように広がっていくのでしょうか?

デロイト トーマツ グループ 執行役・松江英夫さん:
宇宙ビジネスはむこう20年間で今の3倍の市場規模、145兆円(1兆ドル)くらいになると言われています。今までのような人工衛星の打上げや月面探査のようなケースばかりではなくて、地球にいながらにして宇宙のデータを活用する、いわばユーザー側の産業群での活用、これがシェアとしては最も大きくなると言われている。

具体的には、農林産業をはじめとする一次産業とか、サプライチェーンに絡むようなデータの利用とか、自然災害への対応。こういうところで、すでに衛星データは既に多く活用されている。

更に今後は全ての産業において、SDGsの文脈、特に環境への対応において、衛星データの活用が期待されている。

例えば、日本にいながらにして、原材料の仕入れ地の森林や畑の状況を可視化したり、然るべき対応をした時の説明責任、これを果たしていく上での認証の役割として衛星データに期待する、こんな展開も期待を集める分野です。

三田友梨佳キャスター:
人工衛星からのデータの活用を進めていくために、乗り越えるべき課題を挙げるとすると、どのような事が?

デロイト トーマツ グループ 執行役・松江英夫さん:
まだまだ、ユーザー側の衛星データの活用に対する理解が不足しているところが、最大の課題。
背景にはコストが高いということもあるが、まだ衛星データをどの分野でどう使ったらいいのかわからない、それに関する情報がまだまだ足りない、というのが背景にあると思う。
ここをどう変えていくのかが課題だと思います。

三田友梨佳キャスター:
では、そうした“活用の理解”を深めるためのポイント、宇宙ビジネス時代の扉を開くためには、何が鍵となる?

デロイト トーマツ グループ 執行役・松江英夫さん:
これは官民が一体になって力を合わせて、衛星データを活用できる環境を作っていくことが大事。
既に政府も、クラウド上に衛星データを活用できるプラットフォームを作るなどして利用を促しているが、これからは低コストで多くの人がシェアできるような工夫をしていく必要がある。

民間も、衛星データを活用する事例やアイデアを共有する、こういった取り組みも重要になってくると思う。

宇宙というと、“地球の外にある遠い存在”と言うのが今までの見方だったと思うが、これからは地球上の活動を支える中核、いわば“内側にある存在”と捉え方を変えることによって、日常の色んな場面で衛星データを活用できる、そんなアイデアが広がっていくことを期待したい。

三田友梨佳キャスター:
宇宙というとどうしてもどこか遠い存在に感じてしまいますが、私たちの生活に関わる話題なのだということを感じます。今後の企業の発展には、宇宙ビジネスも視野に入れた経営が重要になるのかもしれません。

(「Live News α」2022年12月12日放送分より)

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