今回の衆院選で自民党が掲げる公約には、「積極財政」や「安全保障」などが並んでいます。

当初、掲げていた「消費税の減税」が、高市総裁の近畿での街頭演説では、触れられていないことが分かりました。背景に何があるのでしょうか。

■自民党公約の「積極財政」とは? 有権者からは「いまいちわかってない」という声も

【自民党・高市早苗総裁】「はじめて今回、自民党の公約に『責任ある積極財政』という言葉を入れました。もっともっと日本の経済を強くして、福祉も医療も年金も困らない日本にしましょう」

4日、京都府長岡京市での街頭演説に臨んだ自民党の高市総裁。公約に掲げる「積極財政」の必要性を訴えました。有権者には伝わったのでしょうか?

【有権者】「(積極財政を)いまいち分かってないです」

【有権者】「あまり分からないですけど、暮らしやすい国にしようとしている」

■「積極財政」とは

「積極財政」とは、政府が財政支出を拡大し、景気回復を図る政策です。その姿勢は2025年度の補正予算にも表れていて、歳出の総額はおよそ18兆3000億円!コロナ禍を除くと過去最高額です。

最も多く割かれているのが、「物価高対策」。次いで、「危機管理投資・成長投資」におよそ6兆4000億円。高市総裁は、この投資が「積極財政の肝だ」と強調しています。

【自民党・高市早苗総裁】「国内での投資が着々と進んでいけば、日本変わります。行き過ぎた縮み志向を私たちが胸張って、一緒に成長志向に変えていきましょう」

具体的に、どのようなことに投資をするのか?

去年11月に自らが発足させた「日本成長戦略会議」では、安全保障上必要かつ、経済成長をけん引するAI・半導体、食品など「17の分野」で、重点的に投資を進めることを決めました。その内の1つが創薬の分野です。

■「新薬開発」する企業を取材 薬を開発の支援が手薄の厳しい環境

命を守る最前線は、どのようなリスクを抱え、どのような投資を必要としているのでしょうか。

感染症の治療薬などを主力とする塩野義製薬。新型コロナウイルスの国内初の治療薬「ゾコーバ」や、ワクチンの開発も担いましたが、いずれもスピード面ではアメリカに遅れをとりました。

背景にあったのは、日本の「新薬開発」の厳しい環境です。

薬を開発するには、基礎研究や治験を行い、通常10年前後かかりますが、日本ではこの間の支援が手薄だといいます。

一方、パンデミックが起きる前から基礎研究に投資をしていたアメリカは、早い段階でワクチンや薬を実用化させることができました。

【塩野義製薬 澤田拓子副会長】「海外の場合は、圧倒的に(国が)巨額の資金を提供していました。(海外のように)失敗しても構わないという形で投資をしていかないと、(日本の)スピードでは、とてもゴールにはたどり着けない。リスクを国が分担してくれるのは非常にありがたい」

■「原薬」の生産は中国に集中 国内で作ると10倍の価格

さらに、薬の製造においてもある深刻な「リスク」を抱えているというのです。

【塩野義製薬 澤田拓子副会長】「医薬品を作るために必要な“種”が、本当に中国に集中している」

薬に含まれる有効成分である「原薬」。現在、世界のほとんどが、その生産を中国に依存しているのです。

2019年には、中国の工場で抗菌薬の原料の生産がストップするなど、日本の医療機関で手術ができなくなる事態に陥りました。

塩野義製薬は現在、国の補助金を受けて生産工場を整備中ですが、人件費や規模の違いから中国製の10倍近い価格となる見込みです。

【塩野義製薬 澤田拓子副会長】「(薬を)作れるようにはなったけれども、『使いません』とになれば意味がなくなる。(国に)買い取っていただいてでも、使うようにしないと実は厳しいと思います」

■「食料品の消費税・2年間ゼロ」の財源は?

このような課題の解決に向けて、「積極財政」による投資に期待が高まる一方で…問題は財源です。

2025年度の補正予算では、歳出総額18兆3000億円のうち、11兆7000億円分は、「国債」で賄われます。

国の借金が膨らんだ形になる中、飛び出したのが…

【自民党・高市早苗総裁】「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としないこと。私の悲願でもありました」

「食料品の消費税・2年間ゼロ」について、高市総裁は、党首討論では「2026年度内スタートを目指したい」とも発言しました。

実施すると年間5兆円もの減収となる可能性がある中、自民党は「国債の発行はせず、補助金など歳出・歳入の見直しで、2年分の財源を確保する」としています。

【中道】「食料品の消費税ゼロ」
【共産】「すべての消費税を5%」
【参政】「消費税をまずなくそう」

自民党と同様に、チームみらい以外の主要政党が消費税減税や廃止を公約に掲げています。

■世界からは厳しい目「日本の財政はリスク」

有権者から家計の負担軽減への期待が聞かれる一方で、世界からは厳しい目が向けられています。

マーケットでは、一気に日本の国債の売りが進行。これは投資家が日本の財政を「リスク」とみていることを示し、長期金利が一時2.37%にまで跳ね上がりました。

この理由について専門家は…。

【第一生命経済研究所 熊野英生エコノミスト】「これは予定されてない、予想されていない財政出動・減税。消費税の減税は12月の税制調査会でも出てこなかった話で、唐突に出てきたので、これは債権市場が驚いた」

長期金利の上昇はさらなる財政悪化につながるおそれがあるため、政府も火消しに走りました。

1月、ダボス会議で片山財務大臣は、「消費減税は期間限定で赤字国債に頼らない」と世界各国の首脳や大企業のトップらにメッセージを発信。しかし円安や金利上昇の波は、現在も不安定なままです。

【第一生命経済研究所 熊野英生エコノミスト】「与党も野党も言ってるということは、もうこれ消費減税から日本は後戻りしないんじゃないか。市場は、こういう副作用に対する反応を示している。このまま金利が急上昇してしまうと、もっと経済に対して悪影響が及ぶかもしれない。私は要注意だと思います。

問題の本質は、今まで消費税を何に使っていたかで、社会保障財源。税外収入などで賄うには、穴が大き過ぎるので、穴埋めが難しい」

■「消費税減税について」言及のなかった高市総裁

積極財政をしながら、収入を減らす消費税減税を本当に実現できるのか?

そんな疑問が沸く中、高市総裁の演説をよく聞くと…

【谷元キャスター】「18分にわたる演説で、消費税減税についての言及はありませんでした。有権者の方に話を聞くと、『消費税減税もぜひお願いしたい』という声や、『ほかに大事なことがあるのかな…』という声も聞かれました」

海外市場を意識してでしょうか。公示日の第一声、そして近畿での演説で高市総裁は、消費減税について一度も触れていませんでした。

公約の実現は果たされるのでしょうか。

(関西テレビ「newsランナー」2026年2月5日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。