歴史研究家として、原爆後の広島と向き合う一人の被爆者がいます。
今もなお調査を続けながら想いを受け継ぐ人を探しています。

【アメリカ オバマ元大統領(平和公園 2016年)】
「私たちは犠牲者を追悼するために広島にきます。10万人を超える日本の男性・女性・子供たち、何千人もの朝鮮の人々、そして十数人のアメリカ捕虜も犠牲となりました」

2016年、現職の大統領として初めて広島市の平和公園を訪れ、原爆で亡くなったアメリカ人がいたことに触れたオバマ元大統領。
演説後、一人の被爆者のもとに歩みより、抱き寄せました。

森重昭さん。原爆で亡くなったアメリカ人の遺族をたった一人で調べ、その行方を伝え交流する活動を続けてきました。

【被爆者 森重昭さん(88)】
「もうこの人たちは国家に殉じたわけ。軍人じゃないので死ぬ必要がなかったのがね。せめて追悼してあげようと思って」

オバマ元大統領との抱擁から10年。
その調査は、今も続いています。
今、森さんが願うことは…。

【被爆者 森重昭さん 講演にて(世界平和記念堂 広島市中区 2023年)】
「私の名前は森重昭と申します。爆心地より2.5キロ離れた己斐町の橋の上で被爆しました。 (※森さんは8歳のとき原爆に遭いました…) 私はきのこ雲の中におりました。目の前は真っ暗です。 (※森さんが被爆した己斐の町の当時の様子が描かれ絵の説明…) 胸が裂けています。中から飛び出した内臓。付近の倒壊した建物の下から『助けてくれ 助けてくれ』という声があちこちから聞こえました。原爆はまさに死神そのものでした」

この原爆で少なくとも14万人が年末までに亡くなったといわれていますが詳細は不明です。
そのため森さんは、会社勤めをしながら、被爆した己斐町の被害の調査を始め、1軒1軒尋ね歩きました。
そこで聞いたのは、「アメリカ兵も原爆で犠牲になっていた」という証言でした。

原爆投下直前の7月28日。
連合国軍が呉市上空から日本の戦艦を攻撃。
その際、アメリカ軍の大型爆撃機2機が墜落しました。
パラシュートで脱出するなどし、生き残ったアメリカ兵は日本軍の捕虜となり、爆心地近くに連れて行かれました。

「捕虜兵が味方の落とした原爆の被害にあっていた」
その事実は、戦後、長年公表されず、家族にも伏せられてきました。

ジェームズ・ライアン少尉、当時20才。
墜落後、中国憲兵隊司令部に捕虜として抑留されました。
司令部は爆心地からおよそ500メートルの場所にあり、ライアン少尉は被爆死しました。
森さんは、被爆死したアメリカ兵について個人的に調査し、当時のアメリカの人口2億人の中から手弁当で遺族を探し出し、交流を続けていたのです。
(今から30年前の)この日、遺族の依頼で森さんは市役所を訪れていました。

【森重昭さん】
「原爆慰霊碑に弟の名前を記載してほしい、と強く強く願っていらっしゃる様子が書いてありました」

森さんの申請でライアンさんの名前は、原爆死没者名簿に記され、被爆者を悼む慰霊碑に納められました。

【森重昭さん】
「たった一人の名前ですけれども私にとっては本当万感の思いがする」

その後も一人で遺族探しを地道に行い、申請を続けました。
平和公園にある追悼平和祈念館。
ここには2万6千人を超える遺影が登録されています。
その中に12人のアメリカ兵の姿も。
40年近くをかけ森さんが遺族を探し当て登録したものです。
当時捕虜がいた場所に森さんは追悼の銘板も建てました。

【森重昭さん】
「いち被爆者として2度と核が使われることのない世界の実現のために努力したい」

遺族の一人ラルフ・ニールさん。

【伯父を失ったラルフ・ニールさん】
「伯父に何が起きたかを調べてくれた。森さんに私たち家族は本当に感謝しています。当時の原爆投下が正しかったのかどうか間違っていたのか私にはわからないが将来2度と繰り返されてはいけないということだけは言える」

現在88歳の森さん、調査はまだ続いていました。

【森重昭さん】
「あと2人だけね。長崎で被爆したオランダ兵ですけど。遺族がまだ見つからないんですよ」

フルーン・アーリーさんとクウマンス・ウィルム・ホートリープさん。
一人は大工。
一人はビジネスマンでした。
連合国軍のオランダ兵として長崎で捕虜となり被爆死しました。

【森重昭さん】
「ぜひその遺族を探し出して、被爆死したオランダ兵が長崎にいたということを長崎の原爆資料館かあるいは祈念館に登録したいと強く願っております」

体の衰えを感じる日々ですが情熱は衰えません。

【森重昭さん】
「2人の遺族を見つけることに協力していただけたら大変うれしい」

執念の調査を次世代に託したい。
そこにはつなげたい思いがあります。

【森重昭さん】
「原爆を使わせるような戦争はもう2度とないことを願う、それを後世の人に知ってもらいたいとつくづく思います」

テレビ新広島
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