首里城の赤瓦を再活用するプロジェクトが発足

琉球古典音楽を専門とする沖縄県立芸術大学の山内昌也教授。
2019年10月の沖縄・首里城の火災で破損した赤瓦の破片100個を受け取り、再活用するプロジェクトに乗り出した。

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県立芸術大学 山内昌也教授:
実物を目の前にしますと、やはり心が張り裂ける思いと。ただ、これを単なる悲しみだけではなく、新たな方法として形を変えることによって、県民の方々、そして世界中の方々に伝えることができればなと思います

2019年10月31日、炎に包まれ、崩れ落ちた首里城…。
目を疑うような光景をあの日、山内教授は、正殿の北側に位置する大学の研究室から茫然と見つめていた。

県立芸術大学 山内昌也教授:
聞いたことのない音…消化活動の水の音とともに、瓦がどんどん崩れ落ちる音が、ここまで聞こえてきたんですね。悲しさといいますか、喪失感といいますか。一番は、聖地そのものが消滅してしまわないかなという危機感をすごく感じました

伝統×革新 “新しい”御庭を作る

琉球王朝時代、中国などから来た使者たちをもてなしたり、国王の儀式の際などに演奏されてきた琉球古典音楽。
演奏する場所は、首里城正殿前の「御庭(うなー)」だった。

当時、御庭に設置された舞台は、芸能を披露したのちに取り壊されていたことから、山内教授は赤瓦を活用するアイデアとして、移動できる「琉球古典音楽の舞台」を制作するという着想を得たという。

県立芸術大学 山内昌也教授:
“伝統”と“革新”。これまでにはないスタイルの琉球伝統芸能の形が表現できるのかなと

山内教授が考案したのは、180cm四方の正方形の舞台をコンクリートで作り、そこに首里城の赤瓦を配合するというもの。
舞台を置いて演奏することで、在りし日の首里城や「御庭」を思い起こせるように、という意味を込めて「Una-」プロジェクトと命名した。

さまざまな技術者が集結! 「Una-」プロジェクト発足

アイデアを形にするため、山内教授の呼び掛けで多方面の技術者が集結。
全体のデザインなどのとりまとめをしたのは、沖縄と東京を拠点に活動する建築家の細矢仁さん。

細矢仁建築設計事務所 細矢仁さん:
今のところ、この外周部分、この模様を少し内側に入れて、外周部分の光が当たりやすいところに(赤瓦を)入れようかなと思っています

一般的なコンクリートに瓦を練り込むことは難しいため、今回は「HPC(ハイブリット・プレストレスト・コンクリート)」という、薄さが特徴の特殊なコンクリートを使用する。

技建 常務取締役 津波古充仁さん:
薄いので、構造体というよりもデザイン的な、意匠的なものによく使われる材料です。今回、瓦を入れて表現するというものには向いているのかなと思います

 

また、赤瓦を埋め込むだけでなく、舞台の表面にはオリジナルの紅型の模様を施し、2パターンの舞台を制作することが決まった。
紅型をデータ化し、レーザーカットして型紙を作ることで、精密で美しい模様をコンクリートに転写する、初の試みにも成功した。

細矢仁建築設計事務所 細矢仁さん:
(紅型が)つながりながらも、ひとつの全体としてきちんとした絵になっているというところがやっぱりすごいなと。つながっているからこそ、コンクリートを流し込んでもうまく上手く充填してくれる

最先端と伝統の融合…瓦を無駄なく使う工夫も

最先端の技術と伝統の美が融合した今回の作品。
綿密な下準備を整え、いよいよ首里城の瓦を使っての制作に入る。

手作業で小さく砕いた瓦をコンクリートに練り込み、慎重に型枠に流し込んでいく。

果たして、出来栄えは…。

技建 常務取締役 津波古充仁さん:
予想通りというか、少し瓦が出て来ていい感じになったと思います

さらに、紅型の模様を施した部分に、首里城の赤瓦を砕いた際に出た粉を白いコンクリートに練り込んで、赤瓦のような風合いに仕上げる工夫もされている。

技建 常務取締役 津波古充仁さん:
(瓦を砕いた時に)粉が出てきて、それが使えなかったので。捨てるのも、せっかくいただいた瓦ですので、無駄なく使えたらと思って

何が起きたか忘れないように…「本来あるべき御庭を感じてほしい」

現在も制作が続いている舞台「Una-」は、10月31日に、琉球王国時代の王家の墓である玉陵でお披露目され、奉納演奏が行われる。

県立芸術大学・山内昌也教授:
(2019年の)10月31日に何が起きたのか、決して忘れないように、そういったメッセージを込めて。「Una-」を見て、そびえ立っていた首里城そのもの、本来あるべき御庭の空間を感じていただければなと思います

首里城再建への想いを形として残し、伝えていくために。
人々の想いが結集したプロジェクトが進められている。

(沖縄テレビ)