仙台市青葉区に本社を置き、今年、人工衛星を初めて打ち上げる予定のスタートアップ企業。 打ち上げた人工衛星を地球に帰還させるという難題に挑戦しています。
宇宙に打ち上げた人工衛星が燃え尽きずに再び地球に戻ってくる。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「宇宙と地球の経済、生活をつなぐためには、当然行くだけではなく、戻ってくることが必要不可欠」
壮大な挑戦が今年、仙台から始まります。
仙台市青葉区花京院にある「ElevationSpace(エレベーションスペース)」。社員数およそ60人の東北大学発スタートアップ企業で、人工衛星の研究・開発に取り組んでいます。
代表取締役CEOの小林稜平さん(28)です。秋田県出身で、もともとは建築を学んでいました。 高専に通っていた19歳の時、宇宙建築という分野に興味を持ち、東北大学に編入学。東北大学大学院に在学中、この会社を立ち上げました。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「やっぱりすごく楽しい。難しいこともたくさんありますし、刺激的で」
愛用しているコップに描かれているのは、今年後半以降に打ち上げを予定している人工衛星「あおば」。会社として初めて打ち上げる人工衛星で、他の人工衛星にはないある特徴があります。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「行く部分はロケットに乗せて運んで、宇宙空間で研究開発や実験など、さまざまな宇宙空間にしかない環境での活動を行って戻ってくる。ロケットの先の部分を開発しているのが我々」
「あおば」は宇宙で実験を行った後、その成果を地球に戻す無人小型人工衛星。目指しているのは、地球と宇宙の往復です。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「宇宙にしかない無重力環境を使ってさまざまな研究開発や実験が行われているが、実は日本は宇宙に運ぶ便、輸送船は持っているが戻す便は海外に依存している。やりたいことは人が宇宙で生活できる世界を作ることですが、まずは人が生活するためには交通インフラがないといけない。さらには、宇宙で人が生活するための、ノウハウや知識が全然足りていないので研究開発を加速させなければいけない」
おととし10月、イーロン・マスク氏が率いるアメリカの宇宙開発企業「スペースX」が成功させた世界初の快挙。
打ち上げた宇宙船のブースターを発射台にそのまま収まる形で帰還させたのです。
打ち上げた宇宙船を地球に戻す技術の開発は今、世界的に注目されています。
国内では過去、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」が地球への帰還に成功しました。
宇宙工学が専門の東北大学・吉田和哉教授は、エレベーションスペースの挑戦は民間企業であることに意義があると話します。
東北大学宇宙工学 吉田和哉教授
「小さなプロジェクト、あるいはローコスト、低価格なプロジェクトでそれを実現するというところがすごい。JAXAの実験でいくつかはあるが、本当に民間企業が取り組むレベルでは、これは全く初めての挑戦と言えるので、その点でも非常に画期的」
打ち上げた人工衛星を地球に戻す鍵を握る一つがエンジンです。 通常の人工衛星は打ち上げられた後、地球の周りを回り続けますが、次第に高度が下がり、最終的には大気圏で燃え尽きます。
しかし、「あおば」は地球の周りを回っている時に、エンジンを逆噴射して減速し、意図的に高度を下げ、大気圏に突入します。こうすることで地球への帰還が可能になりますが、そのためには複数の課題があります。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「通常の人工衛星にはないエンジンや高度な制御の技術。耐熱材料の技術など、多様な技術が必要になってくるのが、宇宙から地球に戻る技術。この技術の難しいポイント」
これは宇宙に荷物を運ぶために、人工衛星に搭載するカプセルの模型です。最終的にはカプセルが人工衛星と分離し、パラシュートで海上に降下することで回収されます。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「ちょっとこのカプセルを見てもらうと分かるが、少しゴツゴツしていてへこんだりしている。昨年、福島県南相馬市で行った航空落下試験という、ヘリコプターから実際にカプセルを落として、パネルを展開してパラシュートがちゃんと開くかとか、海で正常に回収できるか、こういった検証を行っているが、その時に練習したモデル。何回か失敗したりしてボコボコの形になっている」
今年後半以降の打ち上げに向けて、着実に準備を進めるエレベーションスペース。福島県にも大きな工場を持っています。
宮城県、そして東北を中心とした活動の根底にあるのは、生まれ育った東北の地への宇宙を通じた恩返しです。
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「東北地域って人口減少率や高齢化など、そうした課題がある中で、やっぱりこの状況をどうにかしたいというのは、東日本大震災を自分自身も経験して強く思っている。私自身はこの地域に産業を作っていくとか、日本を代表する企業を作っていくことが、一番の恩返しになると思っています」
会社の壁に記されているのは、エレベーションスペースが掲げるミッション。今年始まる一大事業に思いは一つです。
社員
「私が担当する初めての機体で、初めて打ち上げすることになります。ぜひとも宇宙に行って無事帰ってくるのを楽しみにしています」
「まずは打ち上げ成功、そして無事返す。これに全集中したいと思っている」
ElevationSpace 代表取締役CEO 小林稜平さん
「打ち上げはミッションのまさにはじまりの部分。そこから半年間のミッションをしっかり、成功できるように準備していく。そういう重要な一年になると思う」