最初の討論会に比べ「まともに議論が交わされた」

現地時間10月22日の夜、日本時間で23日の午前に開催された投票前最後の大統領候補討論会は、最悪だった最初の討論会に比べれば極めてまともに議論が交わされた。ご同慶の至りである。 

両候補による最後のテレビ討論会 現地10月22日
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しかし、各種世論調査で劣勢のトランプ大統領は、数々のジャブこそ打ち出したものの、ノックアウトパンチを放つことが出来なかった。対するバイデン候補は時折言葉に詰まることはあったが、これと言った失言もなく、一定の安定感を示した。結果、戦いをリードする民主党のバイデン候補がまた一歩次期大統領の座に近づいたと言っても良さそうである。 

トランプ大統領への好意的な回答は「ほぼ増えなかった」

CNNによる討論会後の即席調査では53%がバイデン候補に、39%がトランプ候補に軍配を上げている。が、より注目すべきは討論会前と後の両候補に対する好意的な見方の変化である。

討論会前、バイデン候補に対する好意的な回答は55%、トランプ大統領に対する好意的な回答は42%であったが、これが討論会後はバイデン候補56%、トランプ大統領41%とほぼ変化がなかった。つまり、この最後の直接対決で、トランプ大統領は逆転のきっかけを掴むことができなかったと言える。 

共和党 トランプ大統領

トランプ大統領に希望があるとすれば「どちらがより強い指導者と感じたか?」という問いに49%がバイデン候補、同じ49%がトランプ大統領と回答したことだろうか。 

北朝鮮・中国に関する発言は?

事実と異なる発言や誇張・言い掛かりも散見されたが、それらも含めて、内容的には全体として特に驚きはなかったと言えるかもしれない。が、日本にとっても他人事ではない問題に関わる発言を少し紹介すると、北朝鮮に関する討論で、バイデン候補は金正恩委員長を何度か「悪党=A Thug」呼ばわりした。バイデン候補が当選すれば、非核化を求めて北朝鮮への圧力を強めることになるだろうし、対する北朝鮮は大陸間弾道弾ミサイルの発射実験を強行するなど新たな挑発行動に出る可能性が高くなったと言えるかもしれない。 

北朝鮮 金正恩委員長

また、中国に対して、バイデン候補は「ルールを守らせる」と断言した。どちらが勝ってもアメリカの対中政策は当分厳しいままになるだろう。 

現時点でバイデン候補が激戦州の多くを制する可能性大

選挙情勢を見ると、フロリダやオハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシン等、勝負を決めると見られる激戦州の大半でトランプ大統領が勝たない限り、再選は厳しい。投票日には共和党のシンボル・カラーである“赤い波=Red Wave”が湧き上がり、自分が勝利を収めるとトランプ大統領は強気だが、既にかなり辛い状況に追い込まれている。 

もちろん逆転の可能性がゼロになった訳ではない。前回2016年の選挙では、予想外の赤い波が激戦州を飲み込み、トランプ大統領が勝利を収めたのは紛れもない事実である。しかし、今回は、逆に民主党のシンボル・カラーである青い波が沸き起こり、激戦州の多くを制する可能性の方が現時点では高い。(太字は筆者) 

何よりもトランプ政権のパンデミック対策の失敗が大きい。既に22万人を超える死者が出ているという事実からトランプ大統領が逃れることは出来ない。また、国内の格差・分断を煽るような言動を続けてきたトランプ大統領にはもううんざりしたという有権者は多い。 

 

討論会の最後に「もしも当選したら就任式であなたに投票しなかった国民にどう語り掛けるか?」という司会者の質問に応え、バイデン候補はこう述べた。以下、拙速な要約になるが、ご容赦願いたい。 

「私はアメリカ全体の大統領になります。私に投票した人にとっても、そして、反対した人にとっても、全ての人々を代表する大統領になります。恐怖ではなく希望の光を灯し、フィクションではなく科学を優先します。我々は経済を成長させ、構造的な差別問題に対処することができます。同時に数百万人の雇用を創出するクリーン・エネルギーが動かす経済を確実にします。選挙によって決まるのはこの国の姿・特性です。謙虚さや名誉を重んじ、敬意を忘れず、人々の尊厳を尊重して接し、すべての人々に公平な機会をもたらします。これらを皆さんに確実にお届けするべく行動します」 

民主党 バイデン候補

ただし、勝負は下駄を履くまでわからない。大逆転を狙って共和党の選挙マシーンは投票日に大規模な“地上作戦=Ground Operation”を展開するはずである。より多くの支持者を投票所に向かわせるというこの地上作戦では伝統的に共和党が民主党を凌駕する。郵便投票を巡る開票の遅れや混乱がどのような影響を及ぼすかも未知数である。また、投票日まで2週間足らずの間にサプライズが起こる可能性も依然捨てきれない。 

投票日は11月3日。通常なら日本時間の4日午後、遅くとも5日未明には大勢が判明する。しかし、2000年の大統領選挙でフロリダの開票を巡って大混乱が起き、結果確定が大幅に遅れたのは記憶に新しい。 

そうした大きな混乱もなく、無事、選挙が終わることを願っているのはアメリカ国民だけではない。

執筆:フジテレビ解説委員・二関吉郎