ファンが支えるラジオ番組

ラジオは聞くだけではなく、今や参加して応援する楽しみ方も…ファンが生み出した持続可能な新たなラジオの形を取材した。

ファンコミュニケーションズ 新規事業開発部GERAチーム・恩田貴大マネジャー:
面白ければ続くとか、熱狂的なファンがいれば続くというようなコンテンツ作りです

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お笑い芸人・ラランドのラジオ収録現場。

2人の日常トークや大喜利コーナーなどで構成されるこの番組、配信しているのはネットラジオアプリの「GERA」

ラランドのラジオ収録現場
ラランドのラジオ収録現場

ラランド サーヤさん:
最近ハマっているものとか?

ラランド ニシダさん:
ハマっているもの…

ラランド サーヤさん:
あなた意味分からないアプリやっているよね。なんか「池の水大作戦」みたいな

ラランド ニシダさん:
ああ!「池の水大作戦 THE GAME」ね(笑)

ラランド サーヤさん:
「THE MOVIE」みたいな感じであるんだ…

GERAでは、お笑い芸人がパーソナリティーを務める1回30分程度の番組を、1話から全て無料で聞くことができる。

GERA
GERA

このアプリには、2つの特徴がある。それは、応援ボタン個人スポンサーシステム

“応援ボタン”タップで20秒程度の広告

応援ボタンとは、再生画面にあるグッドボタンを押すと「応援する」というボタンが出てくる。この応援ボタンをタップすると20秒程度の広告が流れる仕組みになっている。

実は、配信しているラジオ番組内には広告がなく、自分が「面白い」「応援したい」と思った時に、自ら広告を見るというシステム

番組ごとのスポンサー権を販売

2つ目の特徴は、個人スポンサーシステム

アプリ内では、番組ごとのスポンサー権が販売されていて、応援したいと思って購入すると、パーソナリティーが番組内でラジオネームと好きな一言を読み上げてくれる

個人スポンサーシステム
個人スポンサーシステム

ラランド ニシダさん:
この番組は「マネたくさんにも読んでほしい (ラジオネーム)でみ」「神様、仏様、ニシダ (ラジオネーム)塩おにぃ」。以上の個人スポンサーの提供でお送りしております

ラランド・サーヤさん:
スポンサーがすごい増えましたね~

ラランド ニシダさん:
増えましたな…

この収益は、パーソナリティーに贈られるほか、番組の制作費にもあてられる。

ラランド・サーヤさん:
ちゃんと(個人スポンサーの)量が多かったりすると、『これだけ応援してもらっているんだな』と可視化できていいなと思います。この人毎回来ているなとか、こっちも名前を覚えていたりするので、ファンの人を認知していくのにもつながるし、ファンの人も多分それで喜ぶのかなと…

“面白ければ終わらない”

考案したのは、ネット広告の会社に勤める恩田貴大さん。

ファンとパーソナリティーをつなぐこの仕組みを思いついたのは、大好きだったラジオ番組が終了したことがきっかけだった。

ファンコミュニケーションズ 新規事業開発部GERAチーム・恩田貴大マネジャー:
GERAのコンセプトはやっぱり、“面白ければ終わらない”という、熱狂的なファンの方々が支えてくれればずっと続くような仕組みを作る。一緒に作りたいよという人たちをどんどん運営でお力添えして、小さな放送局をたくさん作るみたいな。番組ごとでチームを作ってもらって、広告費とかもそこで賄って、手数料だけ頂くみたいな。僕らがお力添えして、より独立した支援にしていくというのを目指していますね

番組ではこの取り組みについて、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞いた。

ユーザーイノベーションの発展を

三田友梨佳キャスター:
ファンの応援がつくる新たなラジオのかたちですが、長内さんはどうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚氏:
面白いですね。今回の取り組みはある意味、クラウドファンディングのような形だと思います。クラウドファンディングは、もともとスタートアップの会社が資金を集めるための手段でしたが、今は大きな会社もクラウドファンディングを使って、ユーザーを巻き込んで新しいものを作っていく。ユーザーイノベーションという考え方が広がってきています

三田友梨佳キャスター:
ユーザーイノベーションですか?

長内厚氏:
ユーザーイノベーションというのは、ユーザーを巻き込んで製品やサービスを作っていく。メーカーだけの視点ではなくて、ユーザーの視点も取り込んでより良い物を作っていく。例えば、今回のラジオの場合、今まではスポンサーからお金を得てユーザーは受け身の状態だったわけです。放送局が作った番組を受け取る側でしかなかった。それが、お金を出して、意見を出すことで、ある意味出資者となり、オーナーになっていく。ユーザーがお金を払うということは、その番組の価値を一緒に作っていく、参加しているということになるんだと思うんですよ

三田友梨佳キャスター:
なるほど

長内厚氏:
そこで重要なのは、作り手と受け手が一緒になって1つの物を作っていこうという、新しいサービスや物の作り方だと思います。ユーザーはお金を払うことによってオーナーシップを持てる。番組側はユーザーの新鮮な視点を受け入れることでお互いWin-Winな状況を作れるわけです。これはラジオに限らず、いろいろな製品やサービスに使える話で、ユーザーイノベーションはこれからのイノベーションの1つのキーになってくると思います

三田友梨佳キャスター:
確かに番組を聴いているだけではなくて、番組に携わっていると感じるのは受け手の皆さんにとっても新しい価値となるはずです。世の中にはメディアもコンテンツも溢れているので、こうした新たな形を追求していくことがより重要になってくるのかもしれません

(「Live News α」10月22日放送分)