「夫婦の危険信号でわかりやすいものは?」「事前に夫婦の危機を回避するには一体どうすればいいのか」。最近、こうした質問を受けます。

例えば、配偶者の不倫やギャンブル依存症で家計が火の車といった、原因が明らかなものから、「急に夫婦の会話が少なくなった気がする」、「家にいてもなぜか孤独を感じる」、「結婚している意味がわからなくなった…」といった原因のよくわからないものまで、“危険信号”はまさに千差万別。

後藤千絵弁護士
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私は、兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所で離婚や男女問題を専門に扱う弁護士として年間300件を超える法律相談を受けています。

毎日のように夫婦関係の相談を受けていると、失敗する夫婦の傾向や、逆に幸せになる夫婦の法則が見えてきます。今回は、離婚弁護士として経験上知り得た、「こうなったらかなりアブナイ!」という夫婦の危機の兆候、対策を紹介していきます。

コロナ禍では妻の不満爆発が多い

コロナ禍で「コロナ離婚」という言葉も生まれました。

新型コロナウイルス感染拡大の対策として企業がテレワークや在宅勤務を推奨。それによって家にいる時間や夫婦で過ごす時間が増え、お互いの価値観の違いに気づき、一緒に生活することが耐えられなくなって、結局、離婚に至ってしまったというケースが「コロナ離婚」の代表的なもの。

実際にコロナをきっかけに今まで見て見ぬふりをしていた夫婦の溝が浮き彫りになり、離婚を真剣に考え始めたという夫婦は、想像以上に増えてきています。「コロナ離婚」は、まさに夫婦の危険信号を無視した結果とも言えます。

また、コロナ禍によるステイホーム中の不満爆発は圧倒的に女性が多いのが特徴で、妻の不満が爆発し離婚を突きつけられた夫からの相談が目に見えて増加しています。

例えば、最近もこのような相談が複数の男性からありました。

「妻が突然、子どもを連れて家を出て行きました!理由が全くわからなくて本当に困惑しています…」

「妻に連絡をしても着信拒否されていて全く連絡がつきません…」

「弁護士から突然、受任通知がきました。どう対処したらいいのでしょうか?」

「妻から離婚調停が申し立てられ、裁判所からこの日に出廷するようにという一方的な呼び出しがありました。仕事を休むわけにはいかないのですが、出席しないと不利になるのでしょうか」など…。

夫としては、そこまで夫婦関係が破綻していたという実感はなかったものの、テレワークで自宅にいる時間が飛躍的に増え、妻と顔を合わせることが多くなり、ケンカや言い争いが絶えなかったそうです。

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さらに最悪なケースもあります。直人さん(35歳、仮名)は、全く身に覚えがないのに、妻から「モラハラ」「DV」と言われ、妻側が住所を秘匿し、子どもへの面会交流も拒否されてしまったようです。

隔週の出勤で帰宅後、妻と子どもの姿は見えず家はもぬけの殻。呆然としていると、テーブルには置き手紙と弁護士からの受任通知が置かれていたそうです。

受任通知とは、弁護士が依頼者から依頼を受けて代理人となることを知らせる通知で、今後は弁護士が窓口となり、基本的に妻とは直接の連絡を取ることができなくなります。

夫の出勤日をねらっての妻の反乱で、直人さんからするとまさに「寝耳に水」でした。直人さんは身に覚えのないDVやモラハラを訴えられたことで大変なショックを受け、仕事も全く手につかないと憔悴していました。

妻の危険信号とは?

では、妻が反乱を起こす前に危険信号はなかったのでしょうか。

妻の不満は突然爆発することが多く、夫からすると困惑しかないと思います。ただ、その前に必ず妻からの危険信号は発せられているため、夫は、その危険信号を見逃してしまっているのです。

厳しい言い方をすれば、夫は現状に安心しきって、妻に注意を払わないあまり、そのサインに全く気づいていないのです。

分かりやすい危険信号は、「まともに話をしなくなる」こと。ケンカや妻から話し合いを求めてきているうちはまだいいのです。

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「この人とはやっていけない。もうムリ!」と思うと、妻は話をしようとする努力すらしなくなります。妻が「老後にこの人の世話をするなんて考えられない」「子どもが巣立った後、2人になることがイメージできない」などという気持ちになると離婚を決断しやすくなり、一度決断すると、経験則上、覆すのはほぼ不可能に近いと言わざるをえません。

急に妻が話をしなくなった、相談や文句を言わなくなった、家族のイベントに入れてもらえないような気がする…そんなときは要注意です。夫は「最近ケンカが減って良かったな」などと思っているとしたら、それが一番危ないサインだったりするので、絶対に放置せずに、対策を練ることが重要です。

逆に夫側からの危険信号は、帰宅時間が遅くなる、生活費を入れなくなる、セックスレスになるといったところが代表的なところでしょうか。ただ、このような場合は、夫が不倫をしている可能性大ではありますが…。

危険信号を察知したら…

では、危険信号を察知した場合の対策としては、何かあるのでしょうか。

男女問わず、まずは、相手の話に理解を示すことが効果的で、相手の話の腰を「絶対に」おらず、聞き役に徹してください。

特に女性は、極端な言い方をすれば、夫に客観的な意見など求めていないのです。夫が言い分をとことん聞いてくれて、「そうだね、君の言う通りだね」と言ってくれれば、妻の不満の大部分は解決するのです。

前述の直人さんのケースでは、専業主婦である妻の言い分が甘く思えて、「それは間違っているよ。君は社会に出ていないから考えが甘い」と少し上から目線で言ってしまっていたようです。妻の話をちゃんと聞かないどころか説教までするのは、言うまでもなく最悪です。

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そして、「いつでも君の味方だから」と妻に言葉にして伝えてみてください。絶対的な味方がこの世で一人は確実にいるというだけで生きていく気力が湧いてきたりします。もちろん、妻が夫に対して「一番の味方」であることも効果があります。

自分には絶対的な味方が一人いることは、結婚していることの最大のメリットと言えますし、幸福感と安心感を与えてくれるものです。

最低限のルール作りを

「離婚を避けるために結婚する際に決めておいた方がよいことはありますか?」という質問もよく受けます。結婚生活は、基本的にはどちらかが死ぬまで続く「契約」です。

いい時もあれば悪い時もあるので、悪い時をどう乗り越えるかが最大の課題になると言えます。結婚の際には、お互い快適に生活するための最低限のルール作りをしておくことがオススメです。

結婚生活では、お互いを尊重しながら、最低限のルールを守って接するということが大切であり、最低限のルールを決めておくことは結婚生活がうまくいっている夫婦共通のポイントです。

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というのも、夫婦のもめごとはお互いの「これくらいは許されるだろう」という甘えからくることが多く、うまくいっているほとんどの夫婦は、知らず知らずのうちに役割分担ができています。コロナをきっかけに、あらためて家庭内のルールを作るのも効果的だと思います。

そもそも「コロナ離婚」の最初のきっかけは、夫がうがいや手洗いを疎かにしたり、家族が嫌がっているのに平気で飲み会に参加したりして、家族の怒りをかったことが原因だったりします。

たとえば「家庭内コロナ対策会議」と名前をつけて、毎週日曜の夜に、家族みんなで少し贅沢な食事をしながら家族内での衛生上のルールや、外出時の注意事項などを話し合う機会を設けるなど、ちょっとした楽しみと合わせてミーティングをするのもオススメです。ぜひ工夫を凝らして楽しみながら、家庭内のルール作りをしてください。

“些細”なことも毎日になると耐えられない

日本では“3組に1組が離婚する”と言われていますが、その大きな要因の一つが、「増え続けている熟年離婚」です。国立社会保障・人口問題研究所の「同居期間別離婚数 1947年~2018年」のデータでは、同居期間20年以上で離婚する割合が1947年では3.1%でしたが、1990年には13.8%になり、2018年は18.5%と年々増えています。

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その理由の多くは些細なことの積み重ねである「性格の不一致」であり、見えない夫婦の危機は、実はじわじわと迫りつつあるのかも知れません。

今、コロナ禍によって夫婦のあり方は確実に変化しています。ごまかしがきかなくなり、夫婦の問題に正面から向かい合わないといけなくなった、相手のほんの些細な行動にイラっとするようになったなどの訴えが多くなっています。

最近相談を受けたケースでは、「夫は、家飲みにケチをつけて、ワインのうんちくを長々と語り出す。せっかくの家飲みが台無しで、ストレスが発散できていません」「夫がトイレの便座の蓋を閉めないのが気になって仕方ありません。私が注意しても全然直さないんです。最近では私を困らせるためにわざと蓋を開けるようにしている気がしてきました…」など。

本当に些細なことなのですが、毎日だと耐えがたい苦痛になるもので、現実に、夫の行動に対する妻側の不満は確実に増加し、イライラがピークに達した妻が別居を強行するケースも徐々に増えています。危険信号を事前に察知し、対策を講じることは確実なリスクヘッジになります。

今後いつ収束するかわからないコロナ禍の中で、望まない離婚に至るのは、経済的にも精神的にも避けられるものなら避けたいところです。私の経験上、夫婦は話し合いができていれば、大抵なんとかなります。

いちはやく夫婦の危機を察知して対策を練ることが、極めて重要になってきます。夫婦円満で幸せな老後を迎えることが、何と言っても人生の最大のゴールなのですから。

後藤千絵
京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

フェリーチェ法律事務所:https://felice-houritsu.jp/