「パートナーと離婚したいのですが、どうすればいいの?離婚はお金がかかるというけれど、一体いくら位かかるのか全く想像もつきません。離婚するときに注意すべき点があれば教えてください」

離婚を決意し、新しい人生を歩む決断をしたときに絶対にはずしてはいけないポイントを知りたいと相談に来る方が増えています。

それもそのはず。日本は3組に1組が離婚していると言われ、実際に日本の離婚割合は年々増加し、1970年代まで一桁あった“離婚割合”(離婚件数÷婚姻件数)は現在35%まで上昇しています。離婚は以前と比べて格段に抵抗ないものとなり、むしろより幸せになるためのステップとして考える方も飛躍的に多くなっています。

とは言え、実際に離婚するとなれば、今住んでいる家は?子供の親権は?離婚するのはいいけど絶対に損はしたくない!といったさまざまな不安や疑問点が湧いてくるのではないでしょうか。

後藤千絵弁護士
この記事の画像(5枚)

私は、兵庫県西宮市のフェリーチェ法律事務所で、離婚を専門に扱う弁護士として年間300件を超える法律相談を受けています。今回は、離婚弁護士として「ここだけは絶対に押さえておかないと損!」という離婚のポイントを紹介したいと思います。

「離婚の合意」を確認すること

離婚を決意したときに、まず確認していただきたいことは「相手は離婚に合意するのか、しないのか?」ということです。

離婚するには、お互いに離婚することに合意すること、または法律上の離婚理由があることが必要です。離婚したいからと言って、一方的に別れることはできません。

お互いの合意があって初めて、離婚の条件についての話し合いが始まります。「離婚の合意」の有無は最初の「もめるポイント」です。しっかり確認しておきましょう。 

押さえたいポイント「お金」

離婚という手続き自体には、さほどお金がかかるわけではありません。日本では90%近くが協議離婚であり、その際の手続きとしては離婚届、離婚協議書の作成となるため、弁護士などの専門家に依頼する場合を除いては、離婚協議書を公正証書化する場合の費用で済みます。

公正証書の費用は目的の価格によって異なります。調停離婚などを選び、弁護士と契約する場合は、着手金、報酬金、日当、実費などの諸経費がかかります。

弁護士ごとに費用は異なりますので、しっかりと説明を受けた上で、自分と相性のいい弁護士を選びましょう。離婚調停は長丁場となる場合も多いので、相性が悪い弁護士だとストレスになる可能性があります。

また離婚後の引っ越し、転居の費用、新たな家財の購入などは、すぐにかかる費用として100万円程度はみておくべきでしょう。

まずは、離婚にまつわる「お金」の問題で押さえておきたい4つのポイントを挙げていきます。

image

(1)財産分与

お金の問題で重要なのは「財産をどう分けるか」、いわゆる「財産分与」と言われる問題です。財産分与をするにあたり、あらかじめ夫婦の財産を把握しておくことが非常に重要です。ここでは主に相手の財産ということになるでしょう。

と言うのも、いったん離婚の話が出てしまうと、相手が財産を意図的に隠すことも考えられるからです。そうなると相手の財産調査は難しくなります。離婚の話が出る前に、自分が把握していない預貯金や生命保険、株式などの財産がないか、探っておきましょう。

原則として、結婚後に築いた財産は「夫婦共有財産」として、それぞれ2分の1ずつ権利を保有しています。ただ実際にどのような割合で分けるのかは夫婦の自由なので、夫婦で話し合うことになります。

あくまで結婚後に夫婦が協力して築いた財産が対象で、独身時代からの財産や相続財産は対象外となります。よく「こっそり貯めていたへそくりも財産分与の対象になるのですか?」と質問を受けるのですが、へそくりも夫婦共有財産として財産分与の対象になります。

事前準備としては、以上のポイントを踏まえ、夫婦共有財産にあたると思われるものをリストアップしておくとよいでしょう。

(2)慰謝料

慰謝料は、相手の不法行為で精神的苦痛を受けた場合に請求できます。不倫やDVがあった場合には、相手が言い逃れできないように証拠を準備しておきましょう。DVの場合は、病院で診断書をもらっておくことが大切です。不倫の場合は浮気相手とのメールや写真が主な証拠になります。

慰謝料の相場は、経験的には不倫や浮気で「100万〜300万円」、DVで「50万〜300万」です。正直なところ、300万円以上の慰謝料というのはあまりみかけません。

(3)年金分割

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金について、夫婦で納付した保険料の総額を分割することです。あくまで保険料の分割であり、保険金を分割することではありません。

2008年4月以降の保険料は自動的に2分の1に分割されますが、それ以前の保険料は話し合いで分割する必要があります。まずは、年金分割のための情報通知書を年金事務所に請求しておきましょう。

(4)婚姻費用

婚姻費用とは、日常生活を送る上で必要な生活費のことです。夫婦は、婚姻費用を分担する義務があり、扶養を必要としている方が請求できます。婚姻費用を決めるには目安があります。

東京・大阪の裁判官が共同で作成した『算定表』と呼ばれるもので、裁判でも使われています。『算定表』は基本的にお互いの収入から婚姻費用を決めるので、できれば事前に相手の収入を確認しておきましょう。

押さえておきたいポイント「子供」

image

次に離婚にまつわる「子供」の問題で押さえておきたい3つのポイントを挙げていきます。

(1)親権

未成年者の子供がいる場合には、「子供の親権者」をどちらにするか決めないと離婚することはできません。親権者をどちらにするかは、離婚の話し合いにおける重要なポイントで、もめるケースが非常に多いです。

いったん決めた親権は重大な理由がないと変更は難しいため、ひとまず相手に親権を渡して後で変更しようなどといった安易な考えは禁物です。どうしても親権がほしい場合は、離婚するまでは子供と離れて暮らさないようにしましょう。

親権者の争いになった場合に、裁判所は、子供の現在の環境が変わらないことを最も重視するためです。

育児に取り組んできた時間が長いのは一般的には母親になるため、母親に親権が渡ることが多いのが現状ですが、虐待や育児放棄があれば別です。

父親が親権者になることも十分あり得ます。とはいえ、父親が親権を得るのはまだまだ難しいので、専門家に相談することをおすすめします。

(2)養育費の問題

養育費も、東京・大阪の裁判官が共同研究して作成した『養育費算定表』を参考にして決めることが多いです。最近では、「養育費未払い」の問題がクローズアップされています。

厚生労働省の「2016年度(平成28年度)全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、実際に養育費を受け取っている母子家庭は24.3%にすぎず、一度も受けたことがない世帯は約6割もいます。

協議離婚の際には、養育費はできるだけ具体的に取り決めて強制執行認諾約款付公正証書にして、万が一のときに強制執行ができるようにしておくことが重要です。

(3)面会交流

子供と離れて暮らしている親にも、子供と直接会って交流をしたり、電話やメールで連絡を取り合ったり、学校行事を見学したりすることが認められています。

これを「面会交流」と言いますが、面会交流は子供の権利でもあるので、一方の親が正当な理由なく拒否することはできません。面会交流は子供にとって、離れている親にも愛されているという自信や安心を得る機会になります。

経験上、面会交流がきちんとできている親は、養育費が不払いになるケースが少ないように思います。もちろん子供にとってマイナスになる面会交流は制限したり、拒否することが可能です。離婚する前に夫婦でよく話し合って、お互いに無理のない条件を決めることが面会交流を長続きさせる秘訣です。

現在の離婚事情

image

相談を受ける中で、最近多くなってきているのが「熟年離婚」です。50代や60代、ときには70代の方の相談にのることもあります。熟年離婚の特徴は、圧倒的に女性からの相談が多いことです。最近ではこんな相談をうけました。

専業主婦である良子さん(58歳、仮名)のケースです。

「夫とは、結婚して38年になりますが、もう我慢できません。夫は典型的な昔の人間で、妻は外で働かずに、家で夫の世話をしていればいいという考えの人でした。私はずっと『俺が食わせてやっている』『誰のおかげで生活できていると思ってるんだ』と言われ続けてきました。旅行に連れて行ってもらったことなんてありませんし、外食すら数えるほどしか行っていません。それでも私は文句ひとつ言わず、家を守ってきたのです。

ですが、子供も独立しましたし、自由に自分の人生を楽しみたくなりました。夫の介護をするのもうんざりですし、離婚を考えています。幸い、子供たちも応援すると言ってくれています。離婚するにあたり、どんなことに注意すればよいか、アドバイスをいただけますか?」

熟年離婚では、より一層、お金の問題が重要になってきます。離婚後に生活資金を確保できるかどうかがポイントです。

特に良子さんのような専業主婦の場合は、定期的な収入が見込めるかどうかをシビアに判断する必要があります。

財産分与では、退職金を含められるかどうかが重要なポイントです。退職金が含められる場合は財産分与の額は大きくなるので、生活資金としてあてにできる可能性が高いでしょう。

年金分割は利用できるのか、利用できるとしてどの程度の年金を受け取ることができるのか、年金事務所に確認しておきましょう。熟年離婚は今後も増えてくると考えられます。離婚後の生活に困らないように、あらかじめ専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

後藤千絵
京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

フェリーチェ法律事務所:https://felice-houritsu.jp/