長野県軽井沢町で大学生など15人が死亡したスキーバス事故から2026年1月15日で10年です。事故をきっかけに罰則強化の法改正が行われるなど、バス業界を取り巻く環境は大きく変わりました。同じような事故を起こさないために。県内事業者の安全運行の取り組みを取材しました。

1月15日朝の、長野市のアルピコ交通長野営業所。バスの運転手が出社後、すぐに行うのが点呼です。

アルピコ交通ではタッチパネルで健康状態や睡眠時間などを入力した後、運行管理者と対面でも体調などを確認しています。


長野発新宿行きの高速バスを担当する入社10年目の木内佑汰さん。点呼の際に運行管理者から手渡されたのが運行指示書です。

スケジュールや経路、休憩地などが書かれていて、アルピコ交通では貸切バス、高速バス、路線バスいずれの運転手も必ず携帯するようにしています。

軽井沢のスキーバス事故では、「出発前に運転手の点呼をしていなかったこと」「運行指示書に経路が示されていなかったこと」などが判明し、ずさんな管理体制や低い安全意識が浮き彫りとなりました。

再発防止を願う遺族の提言などもあり、国は、バス業界や専門家が参加する会議で再発防止策の検討を重ねてきました。

道路運送法が改正され、悪質なバス事業者への罰則が「100万円以下」から「1億円以下」に引き上げられたほか、無期限で有効だった貸切バス事業者の認可が5年の更新制に。

また、従来の国の監査に加え、全国10カ所に設置された「適正化センター」による抜き打ちの緊急監査も行われるようになりました。

国の監査も項目を増やし、運行管理者が行う点呼は録画が義務付けられるなど安全運行に向けた環境整備は進みました。

アルピコ交通長野営業所・植松誠所長:
「(事故は)非常にショッキングでまったく他人事ではないと感じた。より一層、それぞれの取り組みをもう1回点検し直して進めてきた10年だった」

アルピコ交通では会社独自でも安全運行の取り組みを行っています。

各営業所に、運転手OBの指導員を配置し、現役運転手への指導や研修を行っているほか、月に1度、社内で起きた事故やトラブルを振り返り各運転手と共有しています。

出発前には車両の点検も―。

タイヤのナットなど車両の点検を終え、いよいよ出発する木内さん。バス事故以降、ハンドルを握る重みを忘れたことはありません。

アルピコ交通 運転手・木内佑汰さん:
「(事故は)乗車している客の命だけでなく、その家族の方の人生まですべて狂わせてしまうことが、ハンドル操作一つ誤ることで起きてしまうと(感じ)身を引き締めてこれからも安全運転をしていかなければと実感した」


乗客はー。

20代(新宿へ):
「私たちができるシートベルトを締めるとか最低限しかできないが、しっかりやりたい」

運転手不足などバス業界を取り巻く環境は厳しさを増していますが、安全運行への思いは変わらずに引き継がれています。

アルピコ交通長野営業所・植松誠所長:
「安全を優先することをずっと胸に刻みたい、バス会社は厳しい状況であるが、全てにおいて安全があってのバス運行なので、10年、100年変わらず胸に刻みたい」

事故をきっかけに、罰則強化の法改正などバス業界に大きな影響を与えました。

担当記者:
「事故から10年がたちますが、取材したバス事業者もスキーバス事故の光景が忘れられず、安全第一の意識につながっていると話していました。ただ、安全運行の実現は道半ばです。国土交通省によりますと、2025年1年間で、道路運送法に基づく行政処分は、過去5年で最も多い282の事業者に上りました。県内でも5つの事業者が処分を受けています。『健康診断を受けていない運転手がいた』『点呼記録に不備があった』などの違反が多いということです。また、違反を重ねた結果、最も重たい『事業許可取り消し』の処分も2つの事業者が受けました。過去5年で、初めてだということです。インバウンド客の増加などで貸し切りバスの需要が高まっていることも要因の一つとされていますが、改めて、悲惨な事故を思い起こし、事業者だけでなく利用客も、安全運行について考えることが大切だと思います」

長野放送
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