秋田の冬を象徴する魚「ハタハタ」が、今シーズンかつてない不漁に見舞われている。漁獲量は1995年の禁漁明け以降で最少となる見通しで、海水温の上昇や群れの消失、性比の異常など、海で起きている複合的な異変が浮かび上がってきた。地域文化として根付いてきた「季節ハタハタ漁」が存続の危機に立たされている。

記録的な不漁 禁漁明け以降で最少か

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秋田県によると、今シーズンのハタハタ漁獲量は沖合5.5トン、沿岸114キロの計約5.6トンにとどまり、1995年の禁漁明け以降で最も少ない見通しだ(1月6日時点)。

八峰町・八森漁港(2025年12月)
八峰町・八森漁港(2025年12月)

八峰町の八森・岩館両漁港の季節ハタハタ漁も47.5キロと、昨季の5%ほどに激減した(1月7日時点)。

八森漁港の漁の解禁は2025年11月25日だったが、初漁は12月23日と異例の遅さ。地元の漁師は「予想はしていたが、ここまでとは」と肩を落とす。

海水温の上昇が産卵接岸を阻む

八森漁港の漁師・山本太志さんは、15年以上にわたり海面水温を記録してきた。

長年、海面水温を記録している漁師の山本太志さん
長年、海面水温を記録している漁師の山本太志さん

その経験から、水温が13.2℃を下回るとハタハタが産卵のため沿岸に寄るとされるが、今季は12月下旬になっても13.4〜13.6℃と高いままだった。

漁師になって20年になる山本さんは「20年で水温が4℃ほど上がっている」と指摘し、温暖化の影響が産卵行動を直撃している可能性を示唆する。

南北の群れが消失 回遊パターンに異変

山本さんの経験によると、例年、山形方面から北上する群れと北海道方面から南下する群れが八森沖で合流する。

しかし、南からの群れは4年前から姿を消し、今季は北からの群れも確認されなかったという。

「これまで北からの群れが残っていたから何とか漁になっていたが、今季はそれすら来なかった」と山本さんは語る。

雄が激減 次世代が生まれない危機

さらに深刻なのが、漁獲されたハタハタの性比の異常だ。通常は雄7割・雌3割だが、今季は9割が大型の雌で、雄がほとんどいないという。

多くのハタハタが接岸していた頃の藻場の様子
多くのハタハタが接岸していた頃の藻場の様子

ハタハタは雌が藻場に産卵し、そこに雄が来て受精することで稚魚が生まれる。雄がいなければ繁殖が成立せず、来季以降の資源回復にも暗い影を落とす。

「文化が消える」漁師の危機感

八森で生まれ育ち、ハタハタ漁とともに生きてきた山本さんは、「季節ハタハタの文化が消滅するのではないか」と危機感を口にする。

若い漁師は他魚種への転換や養殖に挑戦し始めているが、高齢漁師の多くはハタハタ漁が収入の柱で、転換は容易ではない。

大量のハタハタの水揚げで活気づいていた頃の漁港の様子
大量のハタハタの水揚げで活気づいていた頃の漁港の様子

「12月に入ると町が活気づいた。あの光景はもう戻らないかもしれない」と山本さんは語る。

揺らぐ漁業と食文化 問われる地域の選択

地域の食文化の象徴でもある秋田の県魚「ハタハタ」
地域の食文化の象徴でもある秋田の県魚「ハタハタ」

ハタハタは秋田の冬の食卓を支えてきた県魚であり、地域文化の象徴でもある。しかし、海の変化はその根幹を揺るがしつつある。

漁師の生活をどう守るのか、資源をどう回復させるのか、そして文化をどう継承するのか。答えの見えない問いが、今まさに地域に突きつけられている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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