旅行でも仕事でも電車を利用すると食べたくなる「駅そば」。発祥については、諸説ありますが、その歴史を調べ「明治25年に軽井沢駅で始まった」と強く主張する人たちがいます。その根拠は?長野県内のおすすめ駅そばも紹介します。

■軽井沢駅が「駅そば」発祥の地?

そば処・信州。県内各地の駅に「立ち食いそば」のコーナー、「駅そば」があります。

客:
「おいしいです。(魅力は?)駅にあること、駅そばが大好きなので」

立ち上る湯気、しょうゆのいい香り。「駅そば」は旅行や仕事などで電車を利用する人たちを引き付けます。

こちらは、軽井沢駅。店に飾られていたのが「駅そば発祥の地 軽井沢駅」。

おぎのや軽井沢駅売店・友野由章店長:
「駅そばの発祥は諸説あるみたいで、文献や記事で残っている中では明治25(1892)年に油屋が(軽井沢駅で)提供し始めたのが先だと聞いている」

駅そばの発祥は軽井沢駅という説があるのです。

■軽井沢は「明治25年創業」

その歴史を調べ「軽井沢」と強く主張しているのが、茅野市の小川達朗さん(77)と弟で東京在住の亮夫さん(73)ら親族4人。

小川達朗さん:
「年が経てば経つほど知っている人もいなくなり、資料の紛失もあって、どうなるかわからない危機感もあった。われわれの先祖が駅そばを始めたと証明して論争、うわさについて区切りをつけたいと考えた」

4人は、かつて軽井沢駅前で営業していた「油屋旅館」の縁故者。幼いころから「油屋旅館が軽井沢駅でそばの販売を始めたことが駅そばの発祥」と聞かされてきました。

しかし、発祥の地はどこか?については諸説あり、小川さんらによりますと「論争」にもなっているそうです。

有力な説として北海道の森駅、長万部駅、岩手県の盛岡駅、群馬県の横川駅。そして軽井沢駅。

小川さんらは4年ほど前に調査を始めました。国立国会図書館や鉄道博物館など全国さまざまな場所に出向き、資料を読みこみました。

そして、見つけたのが1958(昭和33)年に社団法人国鉄構内営業中央会が発行した「会員の家業とその沿革」です。

そこに書かれていたのは、「信越線軽井沢駅 有限会社油屋旅館 創業 明治25年4月1日」「ホーム売店 麺類(そば)と生玉子」。

「月見そば」が思い浮かびます。

文献には「油屋旅館」が、明治25(1892)年に軽井沢駅で駅そばの販売を始めたと書かれていました。

■調べると…ほかは「明治26年以降」

では、ほかの場所はどうか?

「北海道駅弁史」などを参考に調べると、いずれも明治26年以降とみられることが分かったそうです。たどり着いた結論はもちろん「発祥は軽井沢駅」。

小川達朗さん:
「私は感動的だった。真実はなんだろうと考えていた時に、根拠が必要で、ギリギリのところで調べがついたと考えています」

小川亮夫さん:
「そば処として『駅そばの発祥の地が軽井沢』はひとつの財産だと思う。そういう意味で、答えを曖昧ではなくて出せたことはよかったと思っている」

■当時、作業員に「温かいそば」を

では、なぜ軽井沢駅でそばの販売が始まったのか?

当時、信越線では碓氷峠の軽井沢ー横川間の工事が行われ明治26年に開通。小川さんらによりますと、その1年前に作業員に温かいそばを食べてもらおうと「油屋旅館」が提供を始めたと言います。

そして、開通後は軽井沢駅で峠を越えるための機関車の付け替え作業があり、一般の利用者に待ち時間に食べてもらえるように駅そばの提供を続けたということです。

現在、しなの鉄道軽井沢駅では40年ほど前に油屋旅館から経営を引き継いだ「おぎのや」が営業を続けています。

神奈川から来た客:
「本当においしかった。寒い時期はちょうどいいですね、あったかいそばが」

おぎのや軽井沢駅売店・友野由章店長:
「昔ながらの味を求めて来ている方もいるのでなるべく伝統の味は崩さず、(駅そばは)観光の玄関口で、一番最初に食べるものであったり、旅行の最後に食べるものであったり、旅の思い出に残るような味を提供していけたら」

■塩尻には「日本一狭い駅そばの店」

さて、そば処・信州。各地に人気の駅そばがあります。

JR塩尻駅の2階の待合室に併設されている「桔梗」。「日本一狭い駅そばの店」として、そのかいわいでは有名です。

入り口は約50センチ、中に入ってもスペースの幅は約1メートル50センチ、奥行きは60センチほどです。


客:
「(雑誌に)日本一狭い駅そばがあるって。狭さは気にならない。おそばがおいしいし」

もちろん、そばの味も人気の理由です。


■一度閉店も「復活」した店も

しなの鉄道・黒姫駅では「復活」の一杯を味わえます。改札を出てすぐの待合室の中で営業している「黒姫駅そば店」です。

須坂市から来た客:
「おいしいですよ。スキーに来てるから、(冬は)ほぼ1日おきだね」

正確な記録は残っていませんが、国鉄時代の50年ほど前には営業していたとみられます。

北しなの線が開業した2015年に一度閉店しましたが、復活を願う声が多く町の振興局が運営を担う形ですぐに再開しました。

黒姫駅そば店・渡邉啓子さん:
「町の人が、駅にそば屋さんがないのはさみしいと、皆さんの声で立ち上がった」

店の売りは「麺」。通常の乾麺より30円高い「特上」を頼めば「生麺」を味わえます。

黒姫駅そば店・渡邉啓子さん:
「(違いますか、香りとか?)わたし的には全然違います」

麺がゆで上がったら「企業秘密」のつゆをかけて、できあがり。

新潟・妙高市から来た客:
「麺おいしいですね。駅そばでは多分一番うまい」

黒姫駅そば店・渡邉啓子さん:
「特に違うのは、黒姫のお水はおいしいんですね。そのお水を沸かして、おつゆも作って、というのが一番だと思う」

■「伝統あるものは滅びない」

夏の観光シーズンには1日300食ほどを売り上げる人気店。観光客はもちろん地元からも訪れます。職場が近くにあるというこちらの男性は、週1回のペースで訪れています。

近くで勤務する客:
「いつ来てもおいしい。寒いので、冬場は特に。(やっぱり麺は『特上』?)きょうはちょっと奮発して」

都内から鉄道写真の撮影に訪れた男性。駅そばは「旅情」を感じさせると言います。

都内から来た客:
「途中でおいしいもの食べながら、思い出にもなっていい」

黒姫駅そば店・渡邉啓子さん:
「伝統あるものは滅びないというんですかね。維持されていくことが素晴らしい」

■「新しい文化として発展して」

各地で愛される駅そば。調査の結果「軽井沢駅が発祥」と結論付けた小川さんも、もちろん「駅そば」のファンです。

自分たちの調査が信州の駅そばの維持や発展につながればと願っています。

駅そばの歴史を調査・小川達朗さん:
「このまま愛される駅そばとして、各駅のバリエーションも含めて新しい文化として発展してくれれば」

長野放送
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