宮城県内で1月13日、新たな課税がスタートしました。1泊あたり300円を徴収する「宿泊税」です。
税収を観光振興に活用することが目的で、県内の観光地にあるホテルや旅館は、早速、準備に追われていました。
記者リポート
「県内できょうから始まった宿泊税。人口減少に伴い衰退の一途をたどる県内の観光業において国内、世界中から多くの人を呼び込む起爆剤となれるのでしょうか」
仙台市の観光地のひとつ、秋保温泉にある「ホテル佐勘」。
ホテルでは、早速、宿泊税を徴収する事業者であることを示す「証票」を掲示しました。
ホテル佐勘 西村健フロントマネージャー
「あらかじめチェックインの際に、宿泊税のことを必ず触れて館内だと案内のボードを掲げてこちらをもとに案内しています」
13日の宿泊税の徴収開始に合わせて、フロントスタッフを中心に勉強会を開催するなど準備を進めてきました。
「本日から宿泊税を頂戴する形になっています。あすの朝、チェックアウトの際にお支払いをお願いします」
「宿泊税」とは、県と仙台市が、観光振興の財源に活用するため、素泊りで1泊6000円以上の宿泊に対して、1人あたり300円を徴収するものです。
県では、来年度、およそ12億円、仙台市では、およそ10億円の税収を見込んでいます。
宿泊者(大崎市から)
「あまり何回も何回も行くものではないので、高いとは思っていないです」
宿泊者(角田市から)
「高いとは思わない。お金が回れば景気も良くなるのでしょうから良いと思います」
ホテル佐勘 西村健フロントマネージャー
「私たちがしっかりと理解をしてご説明をすることで、ご納得してもらえると思いますので、特段心配はないのが正直なところです。秋保の観光地をめぐる周遊バスとかインフラ整備が実現していけば良いと思います」
22億円と見込まれる税収をどのように活用するのか。
県と仙台市は、外国人観光客の誘致の強化を挙げています。
観光庁の調査によりますと、おととし1年間で、国内に宿泊した外国人はおよそ1億6446万人。
東京、大阪、京都で全体の6割を占める中で、宮城県は77.7万人と、全体のわずか0.47パーセントに留まっています。
観光施設のインターネット環境の整備、観光ガイドの確保などに税収を活用することで、県内で宿泊する外国人観光客の数を「120万人」まで引き上げるのが目標です。
一方、仙台市以外の観光地からは…
観光客
「(宿泊税は)ちらっとしか把握していなかった。(税は)気にしていなかった。きのう、きょうしか休みないから」
観光客
「税収を観光にうまく使ってくれればいいと思いますけれど、物価高で宿泊費も上がっている中で300円というのは高い」
旅館ゆさ・遊佐久則さん
「税金と言えども、お客様の感覚としては結局泊まった行為に対して『いくら払った』となると思うので、値上がりのような感覚に捉えられるのでは」
不安を口にするのは、大崎市の鳴子温泉で旅館を営む遊佐久則さん。
ただ徴収が始まったからには、拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通、いわゆる『二次交通』の充実に活用してほしいと話します。
旅館ゆさ・遊佐久則さん
「二次交通のバックアップはお願いしたいところではあるが、それが継続的になる仕組みを我々もどうしたらいいか考えなくてはいけない」
県によりますと、おととし、県内に宿泊した観光客のうち、80パーセントにあたるおよそ770万人は「仙台圏域」に宿泊。
鳴子温泉を含む、「大崎圏域」は、全体の6パーセントほどに留まりました。
『二次交通』の充実を求める声は、旅館以外からも…
鳴子温泉の土産店 遊佐昭俊さん
「鳴子ー仙台間の高速バスも今動いていない状態なので、二次交通にお金を使ってほしいというのが我々の願いです」
県もこうした現状を課題と捉えていて、宿泊税の活用方針の大きな柱として県内各地の観光地や温泉地を結ぶ「周遊性の向上」を挙げています。
旅館ゆさ・遊佐久則さん
「(観光に)来た方の満足度をあげる施策をしてもらえればいいのではないかと思います。(県には)現場の声をよく聞きながら今後の計画を作っていただければと期待します」
観光政策に詳しい専門家は、人口減少が進むなか、観光分野での人材育成にも、宿泊税の活用が考えられるといいます。
日本総研 高坂晶子主任研究員
「観光分野は人手不足、特に将来的にそのマネジメントを担うような人材というのを確保するのが難しくなっているところがある。今から手を打っていくというのは非常に長い目で見て有効」
地域経済を維持していくためにも、宿泊税の導入は意義があるといいます。
日本総研 高坂晶子主任研究員
「(地方財政は)例えば医療や教育、介護などといったニーズに対応するのが地方自治体の仕事なので、比較的固定的な費用に振り分けられる財源が多く、観光振興に振り向けられる財源には元々余裕がない。地方交付税交付金を算出するときの根拠に、交流人口はカウントされない。その中で新たな財源を開拓するのは、自治体の政策として当然考えられる選択肢」
こうした事情から、近年、宿泊税に理解を示す事業者が増えているといいます。
ただ、宿泊税を導入して終わりではなく、“費用対効果の検証”の重要性を指摘します。
日本総研 高坂晶子主任研究員
「例えば1年後にどんな成果が上がったか、もしくはどの程度の進捗状況にあるかということをきちんと公開していく。高い効果が認められるもの(施策)に大胆に移し替えていく作業も必要」
交流人口の拡大が地域社会の存続のカギを握る中、訪れる人、そしてそこに住んでいる人、どちらにとっても魅力ある地域づくりが求められます。