今年動き出すさまざまな人や物事をお伝えするシリーズ「動き出す2026」です。
30年近くにわたり、『ある製品』でスキーやスノーボードの日本代表を支える企業が仙台にあります。
オリンピックイヤーの今年、2月に始まるミラノ・コルティナオリンピックに向け細部にわたる調整が続いています。
過去いくつものメダルを獲得してきたスキー、スノーボードの日本代表。
世界と戦う代表選手の滑りを30年近くに渡って支え、メダル獲得を後押ししてきたのが、仙台市泉区根白石に本社を置く『ガリウム』。
工場の壁には、日本代表選手たちの写真がズラリとならびます。
こちらで作られているのが、スキー・スノーボード用のワックスです。
ガリウム社では、1998年の長野オリンピック以降、全ての冬季オリンピックで、日本代表チームにワックスを提供しています。
ガリウム営業部長 山田章巨さん
「ワックスはスキー・スノーボードの滑走面に塗ることで雪面との摩擦を低くします。摩擦が少なくなって板が滑ることによって、もちろんタイムも速くなります」
Q.コンマ1秒を争うような世界では相当重要?
「そうですね、かなり重要なものになると思います」
ガリウム社を率いる結城谷行社長は、クロスカントリースキーでオリンピック出場歴を持ちます。
世界トップレベルでの経験が、ワックス製造のきっかけだったそうです。
ガリウム営業部長 山田章巨さん
「(当時のワックスは)海外ブランドばかりで日本のブランドはなかったので、よりよいものを作って世界の頂点に立つということで、日本製のワックスを作り始めたと聞いています。」
世界で勝つための国産ワックス開発。その命題を叶える素材が、ある日偶然、発見されます。
ガリウム営業部長 山田章巨さん
「たまたま開発の段階で『ガリウム』という素材を机にこぼしてしまって。それを拭いて取ろうとしたんですけど、なかなか取れなかったと。水を垂らしたら水を弾くっていうことで、もしかするとワックスに入れた時に商品の性能が向上をするんじゃないかと」
こちらが、そのガリウム。
静電気を帯びにくく、摩擦を少なくする効果や撥水性が高いなど、ワックスに適した特長がある一方で、加工が非常に難しい素材です。
これを特別な技術でワックスへと加工することで、滑りの性能が劇的に向上しました。
今回のオリンピックでも、日本代表チームに提供が決まっているガリウム製のワックス。開発には、並々ならぬ苦労が付きまといます。
ガリウム営業統括・開発担当 佐藤純一さん
「気温、雪温、大気中の湿度、雪の水分量、汚れ等々。条件っていうのはかなり無限にありますね。」
屋外スポーツであるスキー・スノーボードでは、雪面の状況が刻一刻と変化します。
それぞれの状況で、最も滑るワックスは何なのか…50種類以上ある原料から最高の組み合わせを探る、途方もない作業です。
ガリウム営業統括・開発担当 佐藤純一さん
「やっぱり自然相手なもんですから、計算ではいかないところがあって、面白いところでもあり難しいところでもあります。」
こだわりの配合で作られた試作品は、次の段階へと向かいます。
岩手県八幡平市のクロスカントリーコースに、開発担当・佐藤さんの姿がありました。
ガリウム営業統括・開発担当 佐藤純一さん
Q.今日は何をする?
「いろいろ試作しているワックスの、雪上での実走テストという形になります」
ガリウムは社員全員が、スキーやスノーボードなど、ウィンタースポーツの経験者。
佐藤さんも、ユニバーシアード日本代表や国体に選ばれるなど、クロスカントリー歴50年を誇るベテランです。
自分たちで滑ることで性能を試し、さらなる改良につなげていけるのもガリウム社の強みです。
ガリウム営業統括・開発担当 佐藤純一さん
Q.いいものがあればナショナルチームに提供?
「この中から(オリンピックに)行くワックスが出るかもしれないですね」
雪の温度や湿度など、細かいデータを記録し終えると、試作品のワックスを事前に塗ったスキー板で滑り、タイムを計測していきます。
ワックス1種類当たり、合計24回、テストを繰り返します。
「あ、これだめだ」
大切にしているのは、タイムだけではありません。
ガリウム営業統括・開発担当佐藤純一さん
「タイムは速いけれど、乗ってコースを走った時に、スケーティングってハの時でやってますよね?それがスムーズにいってくれない板があったりとか、逆にタイムが悪いのにその感覚だけは良かったりとか。それが合ってくれれば一番いいんですけどね、タイムもいいし感覚もいいしということで」
年間で100以上の試作品を製作し、タイムも感覚もよく、商品化できるのは、多くて1つか2つ。
国内10カ所以上の場所で、年間50回以上行うこの実走テストで、様々な雪の状態で安定して滑るワックスを絞り込んでいきます。
オリンピアンたちに絶大な支持を受けるワックスは、気の遠くなるような作業から生み出されます。
およそ2時間をかけ、22種類のワックスのテストが終了しました。
ガリウム営業統括・開発担当 佐藤純一さん
Q.今回のオリンピックに送れそうなものは?
「あります、はい。一個は確実に。安定しているものが出てきているという所」
Q.安定したものが出てくると嬉しい?
「うれしい。もちろんうれしいですね。」
まもなく始まる、ミラノ・コルティナオリンピック。
仙台の地で作り出されたワックスが、日本代表の躍進を支えます。
ガリウム社は今回のミラノ・コルティナオリンピックでは、ノルディック複合やクロスカントリーなど4種目にワックスを提供する予定だそうです。
それ以外にも、個人でガリウム社のワックスを使う選手はいるそうですが、どんなワックスを使うかは戦略上非常に重要なことなので、選手名は言えないとのことでした。
ミラノ・コルティナオリンピックは2月6日開幕です。