京都の錦市場と大阪の黒門市場。

いずれも長い歴史を持ち、地元の台所として親しまれてきた市場がいま大きな転換点を迎えています。

錦市場の老舗店は年末に相次いで閉店し、外国人観光客頼みになりつつある黒門市場。

背景にあるのは訪日外国人観光客の急増です。

■外国人観光客の増加で活気を取り戻し…

大阪の日本橋にある黒門市場。関西の台所として知られるこの市場は、年末が一番のかき入れ時です。

江戸時代から続く黒門市場は、かつては正月に向けた買い物客でごった返す大阪の風物詩でした。しかし、約15年前から変化が訪れます。下町情緒あふれる雰囲気がSNSなどで広がり、外国人観光客が徐々に増加したのです。

バブル崩壊後に低迷し始めていた市場は、外国人観光客の増加で活気を取り戻しました。しかし、その状況を一変させたのが新型コロナウイルス。人通りが途絶え、店が次々と閉店する事態となりました。

■市場内の土地価格は右肩上がりで増加

コロナ禍が収まると、再び多くの外国人の姿が戻ってきました。さらに数年前から増えてきたのは、いわゆる「インバウンド」向けの新規店舗です。

【神戸牛と海鮮丼にくあんど・横山むつみさん】「絶対に来るっていうのは、もう確信はあったので、本当にいけるって、賃料上がってもいけるって」

2010年に1平米あたり約32万円だった市場内の土地価格は右肩上がりで増加し、現在では100万円を超えています。

高い土地代や賃料を払って新たに参入するのは、高単価の外国人観光客向けの店ばかりになっていったのです。

■中国のSNSには「黒門市場は価格が高く人が多いからおすすめしない」という投稿も

地元の利用者からは戸惑いの声が聞かれます。

【地元客】「普段の買い物客のうち、地元客は1割ほどだから、こうやって残ってるとこも少ないんで、やっぱりそこら辺は応援したいし、もう本当に市場っていうよりアーケードみたいな感覚ですよね」

【地元客】「外国の方が増えたので買い物をしにくくなりました。なんか仕方がないのかなって今の感じだったらと思いますけど、減らないで欲しい」

一方、外国人観光客を巡って気になる動きも。

ここ数年、中国のSNSには「黒門市場は価格が高く人が多いからおすすめしない」などの投稿が増えてきているのです。

コロナ禍の経験もあり、急に外国人が来なくなることへの不安が常に市場関係者につきまといます。

■「魚のすり身=“FISHCAKE”」と言うと客が去ってしまう…「観光客の方には合わないのか、知らないのか」と店主

そんな中、400年以上の歴史があると言われる京都の錦市場でも異変が起きています。

ここで80年近く店を構えてきた丸常蒲鉾店。2代目店主の初田さんは先月31日をもって、長い歴史に幕を閉じる決断をしました。

【丸常蒲鉾店 初田信行さん】「スケソウダラを回してハモを回してって感覚で」

(Q:それは機械だけではできない?)
【丸常蒲鉾店 初田信行さん】「絶対に手(作業)。硬さを見るのは僕。親父に教えてもらって5年、10年かかったな」

高齢になり毎朝5時半から始まる仕込み作業の負担や後継者がいないことでの苦渋の決断。さらに初田さんに追い打ちをかけたのが、外国人観光客の増加でした。

【丸常蒲鉾店 初田信行さん】「練り物はなかなかね。(外国人)観光客の方には合わないのか知らんけど売上が落ちたし。

(外国人に)これは何ですか?って聞かれたときに、魚のすり身=“FISHCAKE”と言ったら、どっか行かはる。食べたことないもんは食べないのかな。それはお客さんの自由なんやし、仕方ないんやけどほんまにこらえきれない」

■日本人は2割ほどに減ってしまったという錦市場

市場を見渡すとやはり、多く見られるのが食べ歩きを楽しむ外国人観光客。10年ほど前から外国人が増え、今では日本人は2割ほどに減ってしまったといいます。

閉店を決めたのは蒲鉾店だけではなく、創業から160年近く雑穀店も先月31日で閉店しました。

【美濃芳 江川美代子さん】「食べ歩きにはもう全然(向かない)。すぐに食べられるものじゃないので。外国人の方は買って帰られるわけじゃないので」

(Q:市場の変化に対応は?)
【美濃芳 江川美代子さん】「できなかったっていう気持ちはないです。そういうふうにしたいっていうのがなかったですね。時代の流れで仕方がないのかなっていう気持ちと、やっぱり寂しいですね。昔がやっぱりがよかったですね」

長年培われた伝統と文化。環境の変化に対応することは簡単ではありません。

■外国人の存在に、市場が救われたのも事実だが…

年が明けた黒門市場は、通常営業となりましたが、行き交う人はほとんどが外国人です。普段の営業でもおよそ9割を外国人観光客が占める黒門市場。

組合理事長が今後について悩める胸の内を明かしました。

【黒門市場商店街振興組合・迫栄治理事長】「おそらく外国人のお客さんがなかったらここまでの黒門市場の復活ってなかなか…市場・商店街の置かれてる環境からするとありがたいことなんですよね」

外国人の存在に、市場が救われたのも事実です。今後については…

【黒門市場商店街振興組合・迫栄治理事長】「日本のお客さんが来て楽しくて、価格帯的にも納得できて食べてもらえるようなお店が増えると地元のお客さんも喜びはるし、そういうような方向へ持っていきたいとは思います」

地元も観光客もどちらも大切なお客様。市場の模索は続きます。

■「単なるアーケードになっちゃうと来なくなっちゃうんじゃないか」元AERA編集長

ジャーナリストの浜田敬子さんは「かなり前ですけど、大阪で取材が終わったら、黒門市場で美味しいものを食べて帰ろう』みたいなところだったんです。こんな様変わりしてるなんて」と驚きを隠せません。

【浜田敬子さん】「もともとの地元のお客さんと新しいお客さんの共存って本当に難しいんだなと、つくづく思いますよね。この風景自体がみんな好きで来てるのに、風景自体が変わってしまうと、結局外国人のお客さんも、単なるアーケードになっちゃうと来なくなっちゃうんじゃないかなと思いますよね」

(関西テレビ「newsランナー」 2026年1月6日放送)

関西テレビ
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