年間およそ100万人が訪れる金剛山で今、深刻な問題が起きています。

登山客たちが独自に開拓した「勝手道」で遭難する事案が多発しているのです。
しかし、あえてこの道を選ぶ人は後を絶ちません。

【登山客】「普通の階段の道やったらおもしろない」

登山客を守るために奮闘する「駐在さん」の任務に密着しました。

■ 100通り以上の「勝手道」 登山客たちが独自に開拓

大阪府と奈良県の境にある、標高1125mの金剛山。

年間およそ100万人の登山客が訪れる人気のスポットです。

多くの人を魅了する金剛山で、いま起きている問題があります。

登山客たちが独自に開拓した「勝手道」。

金剛山には、大阪府が推奨するルートが3つありますが、それ以外に100通り以上の勝手道があるのです。

全く整備されていない道も多く、土砂崩れに巻き込まれたり、道に迷ったりする危険性があります。

大阪府警などによると、去年は25件ほど救助隊が出動する事案が発生していて、おととしの2倍以上と、急増しています。

■ “山の駐在さん” 実は大阪府警の巡査部長

この問題に取り組むのが、生駒裕さん(46)です。

【生駒裕さん】「岩がむき出しになっていたり、残置ロープ(手がかりにするロープ)がつけっぱなしになっている。いつ切れてもおかしくないようなロープやったりするので、行政としては危険なので推奨していません」

濡れて滑りやすく、細い勝手道を慣れた様子で進み、的確に危険箇所をあぶりだしていく生駒さん。

実は、大阪府警の巡査部長なのです。

生駒巡査部長が勤務しているのは、金剛山のふもとにある千早赤阪村の駐在所で、管轄エリアの住民は200人ほどです。

日課は、数少ない小学生たちを見送ることです。

これ以外の「千早駐在所」の重要な任務が、金剛山の登山客への対応です。

生駒巡査部長は、もともとも捜査一課の刑事を目指していましたが、機動隊に所属している時の、山でのレンジャー訓練がきっかけで登山に興味を持ちました。

どんどん魅力にはまり、山間部への配属を希望。

去年、念願が叶い「千早駐在所」に配属されました。

■ “登山ブーム”で増える遭難事案「体力を過信して…」

コロナ禍を経て、時は登山ブームに。

軽装備の人や外国人が増加していて、遭難も増えています。

去年5月には、娘と一緒に訪れていた80代の男性が下山中に疲れて動けなくなる事案が発生しました。

男性は「体力を過信して予定よりも長く登山をしてしまった」ということで、生駒巡査部長が背負って下山しました。

中には、金剛山に慣れた人を救助したケースもあります。

【生駒裕 巡査部長】「あまり人が通られないマニアックなルートで、ふいに滑落されて、現在地も分からない状況。ヘリコプターで救助しましたが、救助活動が終わったのは朝9時ぐらいという、ハードな救助現場もあります」

■ 後を絶たない勝手道の利用者 1時間で13人が「勝手道」を通行

登山客が大勢いる中、勝手道の入口を取材すると…

「こちらは通行をご遠慮くださいと書かれている勝手道ですが、誰かが書いたであろうルートの名前が書かれています」

なぜ「勝手道」を選ぶのか聞いてみると…。

【勝手道を通る人】「みんな行ってますよ。危ないところはロープあったりとか、ちゃんとしてあるから分かっていく分には大丈夫やと思う」

Q なぜこの道?
【勝手道を通る人】「楽しいから。(府の推奨ルートの)普通の階段の道だとおもんない」

Q遠慮くださいとあるが?
【勝手道を通る人】「ここはあんまり経験のない人は入らないで下さいということ」

取材していた1時間で、13人が「勝手道」を通行していきました。

■ 金剛山をパトロール コールポイントを設置

生駒巡査部長は、パトロールとして月に2回金剛山の勝手道を見回ります。

設置しているのはコールポイント。

遭難した時に、自分がいる位置を説明できるように番号が書かれていて、電波が通じやすい場所です。

【生駒裕 巡査部長】「金剛山が村の人にすごく根づいてる。金剛山に来られる方に対して商売している方、信仰の対象にされてる方、ライフワークにされてる方とか色々いる。金剛山を守ることが村を守ることに繋がっているのかなと思うので、金剛山を守ることに力を入れています」

登山口では、一人一人に整備された道を行くよう、呼びかけます。

金剛山を安全な場所に…

“山の駐在さん”の奮闘は続きます。

関西テレビ
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