鹿児島県内の市長村長では最高齢となる81歳、6期24年町長を務め、先週勇退した鹿児島県大崎町の東靖弘前町長の最後の1日に密着しました。
「おはようございます」
「きょうはよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
まだ夜が明けやらぬ午前4時半、日課のウオーキングにでかけるのは、6期24年大崎町長を務めた東靖弘さん、県内の市町村長では最高齢の81歳です。
6期24年大崎町長を務めた・東靖弘さん
「まず体力がないと仕事を続けられない。そこだけは気をつけながらやってきた。6月に『出馬しない』と発表してから、なんかすぐ(ここまで)来たような」
「バンザーイ!」
東さんが初当選したのは2001年、57歳の時でした。
当時の大崎町は毎年赤字続きの財政難真っただ中。重たい舵取りを任されたものの、東さんは希望にあふれていました。
当時のインタビュー
「これからの町政を託してくれた。町民の皆さんの期待に応える。当選証書に込められていると思うので一生懸命取り組んでいく」
2004年には、「平成の大合併」で大きな決断を迫られました。
現在の鹿児島県志布志市と合併するか、単独の自治体のままでいくか。町を二分する議論は住民投票に繋がり、結果はわずか19票差で単独の自治体を維持する意見が上回ります。
東さんは住民の意見を尊重し、合併せずに大崎町を維持することを決めました。
一方、大崎町の名を全国にとどろかせた取り組みも。
ゴミのリサイクルです。
焼却施設を建設する余裕のない大崎町。埋め立て処分するゴミを少しでも減らすため、町民は徹底的にリサイクルに励みました。
一部の町民から「行政の怠慢だ」と批判されることもありましたが、リサイクル率は全国の町で17回も日本一。
現在は、使用済みの紙おむつまでリサイクルするなど世界から注目されています。
さらに、財政難の打開に大きな成果をもたらしたのがふるさと納税です。
町の職員と町内の事業者が一丸となって取り組んだ結果、2015年に寄付額27億円を突破。
全国の自治体で4位の金額を記録しました。
退任のあいさつで訪れたウナギ加工場の社長はこう話していました。
おおさき町鰻加工組合・横田信久社長
「ふるさと納税はうちにとっても一番のお客様で助かっている。非常に温厚な方でいろいろ協力的にしてもらった。感謝している」
ピンチをチャンスに変え手腕を発揮してきた東さん。
なぜ、引退を選んだのでしょうか。
東靖弘さん
「自分が健康だと思っていたが年齢が81歳なので、4年間町政を任してもらった時に、もし途中で病気でリタイアしたら町民の皆さんに迷惑をかける」
昼食の時間になりました。
「うちの奥さんが24年間作り続けてくれています。僕は卵焼きが好き。絶対入れてもらっている」
町長室でお弁当を食べるのも、これが最後。
午後から、町長室の片付けも行いました。片付けていると24年分の思い出が続々と出てきました。
「(はちまきを手に)一番最初に町長選に出たときにこの東風に乗って頑張ろうと」
「こんにちは。長々とお世話になりました。ありがとうございました。」
最後まで忙しく走り回りました。
そして、あっという間に退任式の時間を迎えました。
東さんは、感謝状と花束を受け取ると静かに、職員の前に立ちました。
6期24年大崎町長を務めた・東靖弘さん
「皆さん方に本当に頑張っていただいて、私を支えてもらって、元気な大崎町を作ってもらったことを心から感謝している」
19歳で大崎町役場職員になり、課長、助役、町長と、81歳になるまで大崎町のために働き続けた東さん。
「ありがとう」と何度も口にしながら62年間通った大崎町役場を後にしました。