年越しそばを作る際のだしの他、お正月に味わうおせちの定番料理のひとつでもある昆布に、深刻な危機が迫っています。

大忙しの時期を迎えているおせちの生産工場。
うまみたっぷりの昆布巻きは「よろこぶ」の語呂合わせでおなじみの縁起物です。

野村佃煮開発部・斉藤潤さん:
黒で全体を締めるというか、ピシっとすることのできるアイテム。

そして、もうひとつ大晦日の縁起物といえば「年越しそば」。
東京・調布市深大寺にあるそば店「深大寺そば 一休庵」では、そばつゆのだしに北海道・利尻産の昆布を使っています。

しかし、12月に入って昆布の仕入れ値が急騰したといいます。

深大寺そば 一休庵・内野和彦さん:
実際問題5~6割急に上がってきた。

年末のかき入れ時を前に、昆布の仕入れ値が5割以上も値上がり。
年越しそばは値上げをせずに提供する予定ですが、それ以降は価格を維持するのが難しいといいます。

深大寺そば 一休庵・内野和彦さん:
年が明けたら徐々に値段を上げていきたいなと思っています。

豊洲市場での昆布の卸売価格は、2024年11月時点で1kgあたり3723円でしたが、2025年は5187円と4割近く上昇しています。

利尻漁協 松坂漁業部・松坂俊秀さん:
そもそも昆布がないという状況。北海道全体で去年は過去最低の水揚げだったんですよ。業者も在庫がなくなっている。

専門家によると、急激な昆布不足の原因は海水温の上昇による海底の「磯焼け」という現象にあるといいます。

北海道大学・四ツ倉典滋教授:
(磯焼けは)海の砂漠化にも例えられるが、水温が高くなって栄養が少なくなる。ウニの食欲が旺盛になって、(昆布が)食べられてしまう。今世紀末には北海道から昆布がなくなってしまうのではないか。

そうした中で今、技術で昆布を守る取り組みが動き出しているといいます。

北海道大学・四ツ倉典滋教授:
“環境に適応”できる昆布を作っていこうと。

漁業組合や昆布メーカーなどがチームを作り、水温が高くても育つ「養殖昆布」の研究を進めているのだといいます。

北海道大学・四ツ倉典滋教授:
4度~5度高い水温に入れても生き残って成長する昆布を作って、徐々に成果がみられるようになった。昆布がなかったら和食は成り立たないと思うが、期待に応えるべく努力をしていきたい。