ことしも残すところあとわずか。年末年始に旅行や帰省の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。
しかし、帰省ラッシュが控える中、交通手段の確保をめぐるトラブルも。
保安上の観点などから第三者への譲渡や転売が禁止されている航空券について、SNS上で譲渡を持ちかける投稿が相次いでいます。
座席をめぐる問題は飛行機だけにとどまらず長距離バスでも、「相席ブロック」という迷惑行為が横行しているといいます。
座席予約をめぐる“迷惑”行為を緊急取材しました。
■SNSで「#航空券譲」の実情
取材班がSNSを調査すると、「#航空券譲」というハッシュタグが付けられた投稿が多く見つかりました。
過去に5回ほど譲渡をしたことがあるという20代女性は、「格安航空券ですと『返金不可』ってなってしまうので」と理由を説明します。
【航空券を譲渡した20代女性】「国内線だとパスポートも出さないですし、そういう確認作業が全くないので取引しちゃってます」
この女性によると、航空券の譲渡はキャンセル不可・返金なしの場合があるために譲渡していて、さらにアイドルの“推し活”と関連していることが多いといいます。
【航空券譲渡した20代女性】「当選落選の日が出る前に、航空券をもう既に押さえて待つというのはよく聞きますね」
【航空券を譲渡した20代女性】「落選した場合は、同じファンの中で『この航空券あるんだけど』と言ったりとか。罪悪感と言われますと、全くないわけではないんですけど、少しでもグッズとか購入したいので、ちょっと譲ってしまったっていう感じですね」
■航空券の譲渡は「損害賠償」の可能性も
こうした動きに日本航空は先週、「本人以外は搭乗できない」と改めて注意喚起しています。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは、「禁止行為での賠償請求の可能性もある」としたうえで、航空会社側の対策について次のように話します。
【航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗さん】「最終的には全員の身分証明書のチェックを保安検査場でする可能性もあります。一方で、それをやってしまうとやはり面倒で手間がかかる。抜き打ちでの確認や、名前・年齢が合わない人に対して確認をすることになっていくと思います」
■バス会社を悩ます「相席ブロック」とは
座席をめぐる問題は飛行機だけにとどまりません。長距離バスでも、最近横行しているのが「相席ブロック」です。
「相席ブロック」とは、1人が隣り合う2席を予約して、出発直前に1席をキャンセルすることで、隣に人が座らないようにする行為です。
本来、乗れるはずの客が乗車できず、バス会社は得られるはずの利益を逃すことにもなり、まさに迷惑行為といえます。
長距離バスの利用者からは、「ちょっとわかるけど、絶対ダメですよね」という声や、「1人分(席が)浮いちゃうわけでしょ。バス会社としては損じゃん。バカじゃないの!」といった声が聞かれました。
■今月すでに50件近く 「本当に乗りたい人が乗れない」
長距離バスの運行会社「ユタカ交通」の奈良幸治執行役員に取材すると、「相席ブロック」が疑われる事案を示してくれました。
【ユタカ交通 奈良幸治執行役員】「お客様が予約されている予約データになります。黄色枠になっている部分なんですけど、同じお客様のお名前で、片方は入金されていますが、片方は未入金です」
今月だけで予約された複数の座席のうち、事前に1席分しか入金されないなど、「相席ブロック」が疑われる事案は、すでに50件近くにもなっています。一部についてはキャンセル料を徴収しますが、それでも影響はかなり大きいといいます。
【ユタカ交通 奈良幸治執行役員】「売上的に痛手になってきます。これからの繁忙期は特に。本当なら丸々のお客様の料金をいただけるんですけど、その分、利益がどんどん減っていきますし、あとは一番痛手としては本当に乗りたいお客様が乗れなくなるのが、一番の痛手になります」
■「ロの字型に席をキャンセル」という悪質な事例も
また、別のバス会社ではもっと悪質な事例もあったといいます。JRバス中国の淺原賢二課長は次のように話します。
【JRバス中国 淺原賢二課長】「ロの字のように周りを全部キャンセルされたことも、過去にはありました」
JRバス中国には、車内の座席スペースに余裕を持たせるため、1列に3席だけを設置している車両があります。
以前、およそ1万円の席を9席予約して、出発直前、ロの字型に8席をキャンセルされたことがあったといいます。
【JRバス中国 淺原賢二課長】「乗車料金はご乗車いただいた1人分になりますね。これまではキャンセル手数料は直前でも100円でしたので…」
こうした状況を受け、JRバス中国ではこれまでどのタイミングでも100円だったキャンセル料の値上げを決定。前日だと運賃の50%、出発2時間を切ると100%とするなどの対策を取りました。(路線によって異なる)
やむを得ない対策ですが、ルールを守る利用者にとっては不利益になる恐れもあります。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは「正当な理由でバスに乗車できなくて、キャンセル変更を余儀なくされる方にとっては、このルールが厳しいことが逆に重荷になる。サービスの低下につながるという懸念もある。ルールのぎりぎりの裏をつくというグレーゾーンになるが、相手の迷惑も考えた上で行動すべき」と話します。
■一人ひとりのモラルが問われる
番組コメンテーターの京都大学大学院の藤井聡教授は「これは制度の穴をついた、難しい問題。正当な事由があるかどうかを確認する手だてとして(書面を)書かせるとかね、そういうことになるのかもしれない」と話しました。
相席ブロックでバス会社から法的責任を追及される可能性もあるということで、こういった悪質な行為はやめましょう。
年末年始の帰省や旅行。気持ちよく新年を迎えるために、一人一人のモラルある行動が求められています。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月19日放送)