子供たちが、自分の好きを見つける職業体験。
学校に出張して行う特別授業の舞台裏に密着しました。

今年、7月に開催された子供たちの職業体験イベント「キッズダムひろしま2025」。
会場には、役所や様々な業種の企業など、34の団体が集まりました。

【鉄筋業】
「足場が半分くらいできている状態で、残り半分を子供たちと組み立てるという体験をします」

【警察官】
「この会場をみんなでパトロールして、困っている人がいないか悪いことをしている人はいないかというのをみんなで探しに行きます」

子供たちの好きを見つける職業体験には、300人以上の小学生が参加しました。

【参加者・子供】
「普段やったことがなかったり知らなかったことが学べてとても勉強になった」

【参加者・親】
「知らない企業や実際に体験してみないと分からないことばかりなので、私も子供も貴重な体験をさせてもらっています」

イベントの始まりは2年前。
ある出来事がきっかけでした。

【キッズダムひろしま 青木俊介さん】
「広島の人口流出数が2年連続ワースト(当時)と聞いて、決して広島に魅力がないとは思っていない。魅力が伝わっていないと思っているので、伝えられる場と子供たちの夢とまではいかなくても、好きを見つけられる場があればいいと思う」

その場を作るために集まった職業も年齢もバラバラのメンバーたち。
プロジェクトは、何度も、壁にぶつかりながらようやく、今年、開催にこぎつけたのです。

そして、今、プロジェクトは、新たな展開を迎えました。
小学校を舞台にした出張型の職業体験、「キャンパスキッズダム」です。

【キッズダムひろしま 青木俊介さんON】
「楽しんでいるだけです。僕たちは本当に楽しいです。1回目できたのが大きな経験値になっているので、どんな事でもできるのではないかと企業さんの協力を得ながらですけど」

協力してくれる企業を探すのも青木さんたちの役目。
こちらは、弁護士さん。
小学生のお仕事体験には、少し難しくないですか?

【弁護士】
「お小遣いをあげる代わりに毎日お手伝いをするという親との約束がありました。お小遣いをもらっているけど、お手伝いをしなかったらどうなりますか?という身近なところから、約束の大切さや、そこで法律は動いているということが伝えられたら」

どんな体験をしてもらうのか?どうすれば思いが伝わるのか?参加企業に寄り添って、青木さんたちも一緒に考えます。
弁護士の仕事に欠かせないのは、裁判。
そこで、こんなプランも出てきました。

【弁護士】
「おとぎ話で模擬裁判をすることも考えています。お題を『3匹の子豚』にして争点としては『オオカミは本当に悪いことをしたのか』」

打ち合わせは、大盛り上がりですが、当日は、どんなお仕事体験になるのでしょうか?

小学校に下見に訪れたのは、キャンパスキッズダムに参加する介護施設のメンバー。
彼女たちが探しているのは…。

【介護業】
「いいですね。この2段の感じが・・・。いいですね」

適度な感じの段差やスロープ。
子供たちに、車いすを「押したり」、「乗ったり」する体験をして欲しいのです。

【介護業】
「全部体験型だけど、じっとしているより動いたほうが残りやすい」

そして、迎えた授業当日。
体育館には、10の企業や行政の団体が集まりました。
ブースには、それぞれの仕事を伝えるための工夫が凝らされています。

【美容師業】
「(髪を)とかして、ここで止めて、カットする」

美容師さんが、練習で使う機材を使った体験。
髪を切ってもらったことはあっても、髪を切ることは、初めての体験です。

【参加した児童】
「授業ではあまり体験できない事だから、今日初めて体験できてよかった」

こちらは、かばん屋さん。
コメ袋を材料にして、ミシンでバッグを作ります。
真剣そのもの。
もの作りの面白さを体験していきます。

【小売り製造業】
「家庭科で(ミシンを)日頃やっているのもあって、みんな楽しんでやってくれてうれしいです」

一方、体育館の外でも体験は行われていました。
下見しておいた段差やスロープを使って車いすを押す作業。
日頃気にならないものが、人によっては、大きな障壁になります。

【介護業】
「僕が手を洗いたいと言ったらどうしよう?」
「これじゃ手が届かない。どうしよう。悩むね」
【参加した児童】
「バックか?」

子供たちは、仕事体験を通して、人の痛みや不自由さも学んでいきます。

会場でひと際、目を引くのは、消防署の職業体験。
体験するのは、火災現場での人命救助と消火作業です。
本物の装備を付けて、救助するペアと消火する担当に分かれて火災現場に突入していきます。
装備の重さ、ホースの重さは、人の命を守る重さです。

【参加した児童】
Q:どうだった?
A:「ものすごく楽しかったです」
Q:装備は重い?
A:「めっちゃ重たいです。こんな経験…、すごいことだと思います」

【広島市立中野東小学校 杉本由美子 校長】
「もうイメージ以上で、広島の身近にいる大人の方々が、こんな思いでこんな仕事をしているということを実際に身をもって教えてもらえる。子供たちはまたとない機会を得て幸せだと思います」

その頃、会場の一角では、裁判が始まっていました。
弁護士の仕事をどう体験してもらうのか?
頼弁護士、小道具も用意して準備万端です。

【弁護士】
「本当オオカミさんはクシャミの持病を持っていました。実は子豚さんの所に遊びに行こうとして、その時ちょうどクシャミが出て家が吹き飛んじゃったんですという話だったら、みんなが弁護士だったらどう弁護しますか?」
【参加した児童】
「持病を持っているということを、病院から提出されたものを出す」

弁護という仕事は、物事を色々な角度から見るという学びにもつながります。

【弁護士】
「(オオカミさんは)やけどをさせられたので、あっち(子豚さんたち)が悪い。あっち(子豚さんたち)が傷害罪になる」

初めての体験をどう感じたのでしょうか?

【参加した児童】
「罪を軽くすることは大変なんだと思った」
「契約をしている限り・・・証拠が無かったらいいと思うけど…」
「守れよ!」

学校を舞台に行われた自分の好きを見つける職業体験。
子供たちの目には、社会で活躍する将来の自分たちの姿が、映っているのでしょうか。

【キッズダムひろしま 青木俊介さん】
「子供たちが最初は緊張していたんですけど、表情が段々緩やかになって。うれしいですね!この空間が大好きです」

テレビ新広島
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