「あのニュースの今」2回目は「クマ」。16日も遊佐町・飯豊町で目撃されるなど依然警戒が続く中、自治体の新たな取り組みも始まっている。

12日に京都の清水寺で発表された2025年の世相を表す漢字に選ばれた「熊」。
クマの被害が社会問題となったことで、19万票近くの応募から約2万3000票を集めた。

(消防団)
「グラウンド! 新庄中のグラウンドにいた」

2月、新庄市の中心部でクマが相次いで目撃された。

(リポート)
「1箇所にとどまっていたクマが再び動き出しました」

警察と消防が周囲を閉鎖し、夜通し警戒にあたり翌日を迎えた。
麻酔銃で眠らせたクマは、猟友会により山へ返された。

同じく2月、鶴岡市で男性がクマに襲われ頭などをけが。2025年初めての人的被害だった。

16日に県が発表した2025年のクマの目撃件数は2787件(11月末時点)。
これまで最も多かった2020年の3倍以上で、過去最多を更新している。

5月、クマが出没したのは上山市の住宅の庭だった。

(リポート)
「クマが侵入した隣の家のフェンスです。クマが壊した可能性が高いとのことです」

(住民)
「窓のすぐ外にいた。まさかうちの庭に出ると思わなかった」

市街地に現れるクマ、いわゆる「アーバンベア」。
これまではあまり出没しなかった商業施設近くでも目撃され対応に追われた。

(リポート)
「目撃されたクマはスポーツセンターから道路を横切って、田んぼに走って行ったということです」

山形市北部の住宅街にクマが居座り、警察はドローンを使って上空から捜索した。

(警察)
「ドローンでクマの姿を捉えている。敷地内、民家と民家の間でじっとしている」

秋になると、クマの目撃や被害が連日のように報道された。

(リポート)
「山形市銅町2丁目の交差点。午前7時すぎ、このあたりでクマが目撃されました」

(近くで働く人)
「朝は小学生も通るので危ない」

クマは学校にも…。

(リポート)
「グラウンドにはくっきりと足跡が残っています。私の手と比べても同じかそれ以上に見えます。爪痕もくっきり残っています」

山形市の高校では、屋内練習場のネットをよじ登るクマ。
南陽市の小学校では玄関に衝突しガラスを割って立ち去るなど、被害は増加の一途をたどった。

「被害にあったのはスイカ、5~6個。クマを身近に感じ危険を感じる」

えさとなるブナが大凶作となり、たびたび里に現れたクマ。
メロン・スイカ・トウモロコシと、里に実った旬の農作物を食い荒らした。

高畠町のシャインマスカットの畑には、柵を壊してクマが侵入した。

(ソルルス・土屋隼代表)
「400~500房くらい食べられた。金額にすると100万円以上かもしれない」

今でも柿などを求めるクマがいるとみられ、県・市町村は不要な果樹を伐採するよう呼びかけている。

(渡部要一さん)
「(Q.個人での対策は?)限界あるよ。電気柵をやっていても、頭が良くてものすごいスピードで突き破る」

さらに小国町では、“やまがた地鶏”の食害も。
網を突き破ってクマが侵入し、36羽いたひな鳥のうち34羽が食べられた。

「怖かった。やられると思った」

人的被害も13件と大幅に増加し、目撃された数と同様、過去最多となった。

(襲われた人)
「ここでぬかのフタを取っていた。開けていたら、こっちからクマが来た」

住宅の敷地内で作業をしていた女性は、後ろから現れたクマに襲われ背中や腕にけがをした。

(襲われた人)
「“あっ”と思って頭だけ隠した」

とっさに頭と首を守ってしゃがみこんだ姿勢が命を守った。

クマによる危険から人命を守るため、新たな制度も施行された。
これまで、警察官の命令など特別な場合だけに限られた市街地での銃の発砲を、市町村長の判断で許可できる「緊急銃猟」。

こうした中、11月にクマが米沢市の旅館に侵入。
冬季休業中で宿泊客はおらず、経営者の家族3人が警察により救助された後、県内で初めてとなる緊急銃猟でクマが駆除された。

(リポート)
「銃弾を受けて少し歩き回り、階段の前あたりで倒れていたという」

クマの出没は冬になっても続いている。
12月9日には、鶴岡市の住宅で、飼っていたイヌが腹をかまれて死んでいるのが見つかった。
クマによる被害とみられ、その後近くで発見されたクマが県内15例目となる緊急銃猟で駆除された。

異例かつ深刻な事態となった2025年のクマ被害。
市町村もこれまでにない対応を求められた。
野生動物の対策などを担当する山形市の佐藤由英さんによると…。

(山形市環境課・佐藤由英自然共生係長)
「令和6年(去年)が紫で、緑が令和7年(今年)。今まではこの辺りに出没がまったくなかったが、今年度は街の中心部に出没が相次いだ」

山形市でもクマの活動が活発化する5月以降から目撃が増え続け、特に10月は2024年の35倍となる105件の目撃があった。

市は農作物の被害対策として、野生動物撃退装置「モンスターウルフ」の実証実験を実施した。

さらに、不要な柿・クリなどの果樹を伐採する費用の補助を新たに開始。
対象は自治会や個人で、16日から補助金の受付が始まる。

(山形市環境課・佐藤由英自然共生係長)
「人が住んでいる場所に誘因するようなものをできるだけなくしていこうと。クマが近寄らない環境作りをやっていきたい」

一方、長井市の山の麓では注目の取り組みも。

(長井市デジタル推進室・高橋瑞貴主事)
「動物の動きを検知すると自動で撮影するカメラです」

木の幹に取りつけれていたのは、市が5年前に導入した人工知能・AIを搭載したカメラ。
動くものを感知して自動的に撮影し、市の職員にメールで知らせる。

(長井市デジタル推進室・高橋瑞貴主事)
「(Q.カメラの前にいるが?)動きがあるのでシャッターが切られている」

この時、撮影された写真の下の部分には「ヒト」の文字。AIが自動で判定している。
クマだけでなく、ネコやキツネなどさまざまな動物を判定することもできる。
市はこのカメラを東西に広がる山の麓に17台設置し、24時間体制でクマを監視している。

(長井市総合政策課・塚田知広補佐)
「わなに有害鳥獣がかかったかどうか・その状況もカメラで監視できるので、現地に行かなくても確認できるようになった」

AIカメラの導入でクマの生息状況を把握したり、箱わなを仕掛ける場所の参考にするなど、効率的に対応できるようになったという。

(長井市総合政策課・塚田知広補佐)
「昨今はクマの出没数も増えているので、カメラの数を増やすなどしてより効率的な対策をとっていきたい」

クマへの対応にほんろうされた1年。
専門家は、2026年以降もクマに対する「最大限の警戒」を続けなければならないと警鐘を鳴らす。

(森林総合研究所・大西尚樹さん)
「クマの数が増えて分布域が広がっていて、私たちの生活圏とクマの生息域が地域によっては重なっている。この状況が、今後改善する見込みはあまりない。今年のような状況が2~3年に1度は起きると考えた方がよい」

さくらんぼテレビ
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