福井駅近くに整備が計画されている「福井アリーナ」。今年は大きな動きがありました。関係者の発言を元にこの1年を振り返ります。
福井駅から歩いて10分ほどのところにある福井市東公園が、福井アリーナの整備予定地です。
いまは静かな公園ですが、まもなくアリーナ建設の前に必要となる埋蔵文化財の調査が始まります。
アリーナの具体的な姿が見え始めたのは、暑かった夏の日でした。
「若い人たちを中心に、福井に誇りと夢をもたらし人口減少でも明るい未来が展望できる県都を創造しないといけない」(福井商工会議所・八木誠一郎会頭)
8月、計画を進める福井商工会議所がアリーナの詳細計画を発表しました。
しかし、いまも議論のポイントとなっているのが「コスト」です。
総事業費は当初の2倍にも膨らみ150億円に。このうち県と福井市が15億円ずつ、国が30億円を負担する計画です。
当初は「民設民営」をうたっていましたが…
「共設共営かもしれない。ご批判は甘んじ受けとめます」(整備・所有会社の梅田憲一社長)
そして完成後は毎年、企業からの寄付・協賛で2億円を集めるなどとした資金繰りを不安視する声が、関係者から噴出しました。
「1、2年は集まったとして、本当に2億円集まるのか」(福井市議会・山田議員)
「30年間というその確信、根拠はどこにあるのか」(福井市議会・下畑議員)
説明会に参加した市民からも「お金の面(収支)が心配」という声が聞かれました。
一方、福井市の西行市長は「アリーナはなくてはならない。いま、やらないことが市にとってはマイナスになる」と強調。
9月には、建設費の15億円とは別に、周辺整備に10億から15億円が必要になる事が明らかになり、市議会で市長は「市の実質負担は25億から30億円を見込んでいる」と説明しました。
急な話に市議会は反発。
最大会派の一真会・青木会長が「市民の血税・浄財である30億円以上もの税金が注ぎ込まれることについて、丁寧な説明を行い、市民の理解を得ようという姿勢はいまだ見えない。まさに市民不在の計画」と申し入れました。
西行市長はすぐに「身の丈に合わせて取り組みたい」と歩み寄りの姿勢を見せ、市民への説明が十分ではなかったと反省の言葉を口にしました。
こうした経緯をたどり、福井市議会は9月、アリーナ整備を進めることを認めたのです。
また、県議会も同じ日に計画の前進を容認しました。
計画が進み始めたいま、求められるのは市民の理解を深めることです。
福井市アリーナプロジェクトチームを率いる福井市の荒木一男副市長は「説明責任を果たしていくことが一丁目一番地」としました。
11月には、福井市がショッピングセンターで市民向けの広報イベントを開始。
整備・所有会社の梅田憲一社長は「福井はつまらないし何もないから県外に出る、と言われたら、あの時(アリーナ計画に)反対しなければよかった、と後悔だけはしてはいけない」とし「25億円で手に入るなら、それは“買い”でしょ」と言及。
運営会社の田辺友宏代表取締役も「最大のピースとしてアリーナがはまった時、新幹線開業で盛り上がる福井の中心部は大きく盛り上がる」と期待を込めます。
しかし、市民の理解は十分に深まったとは言えず、市議会は税金を使うことについて
「もっと丁寧に説明すべきだ」と市をけん制しました。
12月市議会で一真会の堀江廣海議員は「アリーナの宣伝ばかり!そんなヒマあるなら、資金調達にあてたらどうか!」と一喝。
新政会の野嶋祐記議員も「単なるPR活動としかとらえられなかった」としました。
さらに、不測の事態が…
アリーナ“旗振り役”の福井県知事の、突然の辞職です。
知事の辞職を受けて西行市長は「杉本知事の力は大きかったので、大きな影響がないよう願う」と述べました。
アリーナの完成予定は3年後の2028年秋。計画には依然として県民・市民の「期待」と「心配」があります。税金を使って計画を進めるのであれば「心配」にもしっかりと向き合うことが不可欠です。
福井アリーナをめぐっては、2026年も正念場が続きます。