1人で守る伝統の味。創業100年を迎えた長野県岡谷市の和菓子店では、2代目が亡くなり今は3代目が1人で切り盛りしている。店頭での販売を縮小し、喫茶スペース「茶寮」一本に絞る予定だが、昔ながらの味を提供し続けている。
人気は「おしるこ」「ぜんざい」
寒くなってくると食べたくなる「おしるこ」。
客:
「あんまり甘くなくて、ちょうどいい味」
2025年、創業100年を迎えた老舗和菓子店「晴山堂茶寮」(岡谷市)。
店の喫茶スペース「茶寮」の人気メニューは、こだわりのあんこを使った「おしるこ」や「ぜんざい」。
店は3代目の永井修一さん(69)が一人で切り盛りしている。
晴山堂茶寮 3代目・永井修一さん:
「(お客さんに)『おいしい』って言ってもらえるよう、そういう思いで作っている。『おいしかった』と言われるのが何よりのほめ言葉だからね」
先代の父が他界「事実上、おしまい」
1925(大正14)年創業の晴山堂。永井さんの祖父と父が、餅菓子やまんじゅうなどの和菓子を販売し、地元で人気の店となっていった。
永井さんは、20歳のころから店を手伝いながら和菓子作りを学んだ。東京でも修業し、1983年に戻ってきた永井さんは、その年に店に併設する「茶寮」をオープンした。
永井さん:
「販売業よりも接客するのが好きなんじゃないかな。うちは、おもち・あんこが中心のお菓子屋なので、そういうものを利用して接客できる『おしるこ』屋さんがどうかと」
その後、父と2人で和菓子の店頭販売、「茶寮」、この2本柱で店を続けてきた。
しかし今、店頭販売はほとんど行っていない。2年前に父・正さんが他界。永井さんが1人で店を切り盛りすることになり、現在、和菓子は事前の予約だけの販売とした。
さらに自身の体力なども考え、店頭販売はすべてやめて「茶寮」一本に絞る予定だ。
永井さん:
「ここから先が受け継ぐ予定がない。事実上、おしまいだな。あの世行ったらおじいさんに土下座して謝ればいいかな」
作り方は100年前とほぼ変わらず
営業スタイルは変わったが、菓子の作り方は100年前からほとんど変わらない。
店自慢の「つぶあん」に使っているのは北海道十勝産大納言小豆。粒が大きいため、形がしっかりと残り、つぶあんに適しているという。
ひと晩水に漬けた小豆を火にかけ、硬さを見ながら蒸らす。程よい硬さになったら、大きな容器に移し替え、水でさらす。
永井さん:
「よし、いいな」
浮かんできた「泡」は「灰汁(あく)」。
永井さん:
「これをやらないと、くどい甘さに」
灰汁が浮いてこなくなるまで水を替えていく。こうすることで、まろやかな甘さのあんこに仕上がるという。
その後、小豆を火にかけ砂糖を加えて練っていく。丁寧な手作業は初代から引き継がれている伝統だ。
永井さん:
「丁寧に作れと、うちのモットーはそこ。丁寧に作ると上品なものになる。味もそうだけど、姿かたちも」
こだわりの「あんこ」が完成。
「茶寮」では「あんこ」を使った菓子を主に提供している。
客は―。
神奈川県から来た客:
「おしるこのつぶあんが、粒もたっぷりで甘みもちょうどいい加減でとてもよかった」
こちらの女性3人は、週に1度は店に通う常連。
常連客:
「いつもの味でとてもおいしい。小豆がいっぱい入ってる。水っぽくなくておいしい」
「店を閉めるまでは、いいものを」
店頭販売で人気だった焼き団子などは、事前に注文を受ければ「テイクアウト」商品として販売することにしている。
みたらし焼きだんご(1本200円)、晴山堂名入最中(1個260円)は今後、テイクアウト商品に。
事業は縮小したが、永井さんは100年続く伝統の味を今後も守り続けている。
晴山堂茶寮 3代目・永井修一さん:
「店を閉めるまでは、いいものを出していく。それに尽きるし、こだわりを持っている。丁寧に、もっと言えば大事にものを作る。その時代その時代のお客さんに受け入れてもらえて、この100年まできたのではないか。今後も私がそのようにやっていきたいと思っている」
