福島市の馬場雄基市長は12月10日、就任後初の市議会に臨み、所信表明演説を行った。
馬場市長は11月の福島市長選挙で初当選を果たし、福島市では記録が残るなかで最年少の33歳で市長に就任。全国の都道府県の県庁所在地の現役首長のなかで最も若く、福島県内の現役首長のなかでも最年少となる。
馬場市長はJR福島駅東口の再開発について、既存施設との整合や経費縮減の検討を掲げているほか、人口減少や財政状況などの現状を見える化する「データ行政の確立」を目指し、100日以内にデータブックを作成するなどとしている。
10日の市議会定例会議には、高齢者のインフルエンザ予防接種費用の補助や「ふくしまデスティネーションキャンペーン」に向けたまちなかのにぎわい創出イベントの実施など総額33億4,763万円の補正予算案などを含む27の議案が提出された。
以下は馬場市長の所信表明演説。
【「平成生まれとして全国初の県都のリーダーを任せていただく」】
本日の市議会定例会議にて、私の就任のあいさつと、市政運営に関する所信を述べる機会を頂戴し、心より感謝を申し上げます。私の所信を申し上げ、市議会の皆様、そして市民の皆様のご理解を賜りたく存じております。
わたくし馬場雄基は、この度の市長選挙にて、多大なるご支援を賜り、第14代福島市長として、市政を担わせていただくこととなりました。118年にわたる福島市政の歩み、特に、コロナ禍や災害対応に尽力なされた前市長である木幡氏に改めて敬意を深く表します。
平成生まれとして全国初の県都のリーダーを任せていただくこと、そして大震災当時高校生として、多くの先輩方に支えられた側の者が、14年の時を経て、市長としてふるさと福島の復興と発展を任せていただくことに、その責任と期待の大きさを深く噛み締め、身の引き締まる思いでございます。
現在日本は、東京一極集中が進み、地方から人と経済が流出する構造が続いております。地方が生き残るには、垣根を越えて力を結集し、地域として国に影響を与えられる存在になることが欠かせません。だからこそ、私が掲げる基本姿勢は“ともに前へ”です。誰か一人に頼るのではなく、市民一人ひとりの力の結集で、福島全体を強く、明るくしていく市政を目指していきたいと思います。
嘆きを決意に、不安は一歩に、混沌は希望に変えていく。未来は、今の行動から作られていきます。私は、一人ひとりの思いに火を灯す火種として、皆さまとともに、福島の再起を果たす覚悟でございます。今の暮らしの安心、そして未来の可能性を広げるため、変化を恐れず挑戦し、福島をまっすぐに前へ進めてまいりたいと思います。
これから福島市は、新しいまちづくりがスタートします。目指す方向性は“次世代文教都市”でございます。すべての子どもたちを笑顔にできるまちは、すべての市民を笑顔にすることができる、文化・教育・人づくりを起点にして、豊かな経済を創造する都市を目指していきます。
【3つの最優先事項 「駅前再開発は経費縮減・財源確保を早急に検討」】
その実現に向けて、3つの最優先事項に取り組みます。まず1つ目です。現状を客観化する、客観化して見えるようにしていくためのデータ行政の確立です。若者の人口の減少の度合い、あるいは財政調整基金の危機的状況など、数字を共有しなくては正しい判断はできません。冷静に数字を見極め、確かな政策へとつなげていきたいと思います。そのために、市長就任100日以内に、福島市の強みも、そして弱みも一望することができる福島市データブックを必ず完成させたいと思います。
次に2つ目、市民の行動がまちを変えるという実感、成功体験をつくります。私の声はどこに届くの、そういう不安をなくすため、市長をトップに未来戦略本部を立ち上げ、支所や学習センターの機能を強化し、公開型の対話集会を開催いたします。世代や立場を問わず、共に考え、共に悩み、共に前に進むことができる場を整えていきたいと思います。客観的なデータによる確実性のある判断と、対話を土台とした活発化した市民活動を掛け合わせ、市民目線の新しいまちづくりに取り組んでまいります。
最後に3つ目、駅東口再開発の再整理です。中合閉店から早5年、この間に西口では、イトーヨーカドーの閉店や駅中の変化など、発案当時と環境が大幅に変わっております。市民に生じた疲弊と閉塞感は直視しなくてはなりません。また、市の多額の財政支出を要する事業であることを鑑みたとき、未来への責任を担う立場として、他に改修される可能性のある既存機能との整合性、そして経費縮減や、あるいは財源確保等の可能性について早急に検討を重ねてまいります。加えて、東西を一体的にとらえた駅周辺の再開発である点を意識し、当事者の方々との関係性や連携を深めるように丁寧に進めてまいりたいと思います。
【8つの基本方針 「先輩世代、現役世代、未来世代に向け」】
そして、今後の市政運営に対して、8つの基本方針をお示しします。
1つ目、先輩世代の皆様、安心できる医療と福祉の体制です。安心して免許返納ができるように、移動の自由の確保を念頭に、これまでの施策を再整理し、拡充を検討してまいります。
2つ目、現役世代の皆様、子育て支援と働く環境支援でございます。小中学校の給食費の無償化、実現できるように制度設計と財源確保に努めてまいります。
3つ目、未来世代の皆様、夢を広げる教育と挑戦の環境づくりです。子ども食堂や放課後児童クラブの機能が充実し、さらに持続可能となるよう、行政の支援のあり方を検討してまいります。
4つ目、先達山のメガソーラーにつきましては、環境破壊を伴うメガソーラーの開発の制限など、本市の教訓を整理し、法律改正に向けた国への働きかけを強化してまいります。さらにクマ対策です。市民の命と生活を最優先にし、安心して暮らせる対策について、充実にそして早急に取り組んでまいりたいと思います。
5つ目、農林業です。震災以降、福島の恵みである農産物の価格は戻りつつあるものの、いまだに他と比較した際の価格差は存在しているという認識に立ち、用途に合わせたブランド戦略やトップセールスに力を入れてまいります。
6つ目、防災です。震災の教訓を生かす機会の充実や、各地区の避難所設置の状況を現場の皆様と再確認し、命を守るための環境整備を全力で取り組みます。
7つ目、歴史文化です。古きを訪ねて新しきを生み出すものとして、文化や芸術の振興に取り組んでまいります。
8つ目、ごみの集積所整備推進や夜間動物医療の確保については、市民の皆様や関係機関との意見交換などの機会を設け検討してまいりたいと思います。
【総合計画 現行計画を1年延長し「新計画を磨き上げ」】
本市のまちづくり全体の羅針盤となる総合計画につきましては、第6次計画が今年度末で計画期間の満了を迎えることから、昨年度より市民のアンケートやワークショップなど、市民の皆様から頂いたご意見をもとに第7次計画の策定を進めてまいりました。将来のまちの姿を、市民の一人ひとりに自分事として捉えていただくには、客観的データを基に課題を洗い出し、必要な施策を打ち出していくことが何にも重要だと思っております。
私としては、先に申し上げましたデータブックを基に、現在策定中の素案を検証し、磨き上げに向けた議論を深めていくことが必要であると判断しております。そのため、現行計画の計画期間を1年延長することについて、ご理解をいただきたいと考えております。
市民の皆様の想いを大切にしながら、よりわかりやすく、より共感を頂ける新総合計画の策定に取り組んでまいりますので、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
【「国をも動かす強い福島市を」】
私は、福島市はもとより、地方の活力こそ日本の活力だと信じています。
県都として、そして県北の母都市として、県、国、周辺自治体と密接に連携し、福島市の潜在力を引き出してまいります。つまり、福島市の行動は、日本に、日本全国にうねりを起こす火種となる、そういう矜持をもって、全力で取り組んでまいりたいと思います。新しい福島市のかたちのみならず、新しい県北のかたち、新しい県都のかたち、新しい福島県、そして国のかたちをここから皆様とともにつくりあげていく覚悟です。
国をも動かす、温かく、しなやかで、強い福島市を、皆さまと一緒につくりあげてまいります。
まちの未来をつくることは、市民と共に語り、悩み、決めていく営みです。市民が主人公となる市政を、職員とともに全力で実現します。
どうか皆さま、ともに前へ。福島市の新しい一歩を、市民の皆様、議会の皆様と共に力強く踏み出してまいりたいと思います。ご理解とご協力を何卒よろしくお願いいたします。