不信任⇒議会解散⇒不信任⇒失職
伊東市では、田久保眞紀 前市長の学歴詐称問題によって市議会が全会一致で不信任を議決したものの、田久保前市長は地方自治法に規定された権限を行使し、議会を解散した。
ただ、政策的な対立ではなく、自身の個人的な問題に伴う議会解散は「大義なき解散」と指摘する声もあり、実際に市議選では前職のうち立候補した18人全員が再選し、田久保前市長は二度目となる不信任の議決を受け、10月31日をもって失職している。
解散権の“濫用”に懸念示す
こうした中、伊東市議会は12月5日、首長の議会解散権について見直しを求める意見書を採択した。
意見書では、今回の解散を例に「全会一致で(不信任案を)可決するという非常に強い意思表示がされたにもかかわらず、このような場合においても議会を解散することができる制度」と現行法の課題を突き、「制度の趣旨に鑑みることなく、権限の濫用により議会を解散する事態が生じれば、いたずらに時間と費用を消費する選挙が執行されることとなり、長の一身上の問題であるにもかかわらず、その負担は市民にのしかかるという不条理が発生する」と指摘している。
その上で「地方自治における健全な二元代表制の維持、ひいては市民の信頼に基づく民主的統治の実現のためには、一方的に行使可能な長の議会解散権に対し、制度的な歯止めが必要不可欠」との考えを示し、「地方自治法第178条による長の議会解散権に関する制度について、速やかに見直し、地方公共団体の長による恣意的な議会解散を防止する制度を整備するよう強く要望する」と結んだ。
意見書は地方自治法第99条に基づき、首相や総務相などに対して提出される。
首長の解散権をめぐっては沖縄県南城市の古謝景春 前市長が自身のセクハラ問題により不信任を議決されたものの、議会を解散したことで話題となった。
古謝前市長はその後、再び不信任を議決され、11月17日をもって失職している。
伊東市議会の意見書全文
地方自治法第178条による地方公共団体の長の議会解散権に関する制度の見直しを求める意見書
現行の制度下において、地方公共団体の執行機関たる長と地方公共団体の議決機関たる議会を構成する議員は、それぞれ直接住民から選挙される二元代表制を採用し、対等な関係のもと相互牽制の役割を果たす権限が与えられており、両者の間に政治的対立が生じ調和が保たれなくなった場合には、地方自治法第178条の規定により、議会には長に対する不信任議決、長には不信任議決に対応する議会解散権を与えることで均衡を図っている。
しかしながら、長自身の不祥事を理由として不信任の議決を受けたにもかかわらず、大義なく議会の解散を強行するという事態が相次いでおり、選挙を通して民意へ問い直すための制度は形骸化していると言える。
このような長の判断は、不祥事から目をそらし、自己保身のための戦術として制度を濫用しているものと言わざるを得ず、地方行政の停滞を招くこととなる憂慮すべき事態となっている。
不信任議決の成立には、議員数の3分の2以上の出席とその出席議員の4分の3以上の同意を要するという極めて厳格な要件が課されているが、当市議会においては、全会一致で可決するという非常に強い意思表示がされたにもかかわらず、このような場合においても議会を解散することができる制度となっている。
長が制度の趣旨に鑑みることなく、権限の濫用により議会を解散する事態が生じれば、いたずらに時間と費用を消費する選挙が執行されることとなり、長の一身上の問題であるにもかかわらず、その負担は市民にのしかかるという不条理が発生する。
地方自治における健全な二元代表制の維持、ひいては市民の信頼に基づく民主的統治の実現のためには、一方的に行使可能な長の議会解散権に対し、制度的な歯止めが必要不可欠である。
よって、地方自治法第178条による長の議会解散権に関する制度について、速やかに見直し、地方公共団体の長による恣意的な議会解散を防止する制度を整備するよう強く要望する。
(テレビ静岡)
